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雇用のフレキシキュリティと自己都合と会社都合の失業給付 330/1000

岸田首相がめざす「新しい資本主義」のために、そのビジョンを掲げて具体化していく集まりが、「新しい資本主義実現会議」です。

その14回目が2023/2/15にひらかれ、
リ・スキリング
労働移動
構造的な賃上げの方向性
など、まさにいまの日本の労働の課題といえる内容について、いろいろな資料と現状の問題点が掲げられています。

今日はそのうち「フレキシキュリティ」というこれからの方向性のひとつのヒントをとりあげてみます。

フレキシキュリティは造語です。

柔軟性(フレキシブル)と安全性(セキュリティ)、雇用の流動性と労働者の生活の安定という、労働においては相反しそうな考え方をくみあわせたもの。

デンマークやオランダて失業率の改善と経済成長に効果があり、雇用政策のブレイクスルーとして2010年から注目されているものです。

雇用の流動性は会社の挑戦や成長に便利なもの、生活の安定は、労働者にとって必須なもの。

労使ともにメリットのあるこの政策。

しかも「安定」がひとつの柱であることは、一説ではセロトニントランスポーター遺伝子の影響により不安を感じやすい民族とされる日本人にとって、受け入れやすさにつながるのでは?と思えます。


では、そのフレキシキュリティ(雇用の流動性と安定性)を実現するには、どうすればよいか。

以下の3つが必要とされています。

①解雇規制の緩和
②失業手当の充実
③有効な職業訓練

日本は、諸外国とくらべても、解雇規制が厳しい国です。

そのことがいろいろ不都合を生み出しているということが最近ますます指摘されるようになっていますが、労働組合の力もあり、さきほどの「不安を感じやすい」という日本人にとって、なかなか解雇規制をゆるめることが難しいのも現状です。

今回の「新しい資本主義実現会議」資料では、①ではない雇用の流動性の可能性が示されています。

それが、「自己都合」退職の失業給付を手厚くするという視点。

労働移動に挑戦できる環境作りの視点に立つと、自己都合で離職する場合と会社都合で離職する場合の保護の差をどのようにするか、検討が必要ではないか。

新しい資本主義実現会議「論点」より

「基礎資料」では以下の資料がありました。

これはなかなかまとまっていてわかりやすく、「失業給付って、自己都合でやめたときと会社都合では条件がちがうんだよ」と説明するときにも使えそうです。

ここでは、「慎重に検討」という赤字で、「労働者が、自らの希望に応じて会社内・会社間双方において労働移動していくシステム」への促しが示されています。

たしかに考えてみれば、「自己都合」でやめたときに「給付制限」(やめてすぐは失業給付がもらえず、自分で食いつながなければいけない期間がある)ということは、「だから、同じ会社でなるべく長く働いてね」というメッセージともとれます。

給付制限をなくすと、勤めはじめた会社を失業給付がもらえる期間働いたらすぐやめて、失業給付をもらおう、というひとがいるのでは・・・という声もでそうです。

ですが、失業給付をもらうためには一定以上は働かなければいけないわけですし、失業給付もずっともらえるわけではないので、どこかで再就職は必要です。

自己都合で失業給付をもらうハードルがもっと低くなれば、いったん今の会社をやめて失業給付をもらいながら資格をとったり学び直しをし、そのスキルで別の職につく――雇用の流動性と学び直しが促される面がある、ということは言えそうです。

それにしても、リスキリングという言葉がだいぶ広がってきたと思いきや、ここでは「リ・スキリング」と表記されています。

これから世の中の呼び方は、カロチンがカロテンにかわったようにリ・スキリングに変わるでしょうか・・・?

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