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これからの高齢者は「◯◯歳」ではなく、「平均余命が15年」が目安に?日本の「これから」に光

「高齢者」と呼ぶ基準は、いまの「65歳」という絶対的な数字から、「平均余命が15年ある」という相対的なものに変わるかもしれません。

日本老年学会「高齢者に関する定義検討ワーキンググループ 報告書」(2024年)では、75歳という新しい高齢者として定義する年齢とともに、高齢者を考える新しい基準が紹介されています。
この考え方は、これから高齢者を考えるうえで知っておくべきものになるのでは、と思います。


1.高齢者の定義が75歳になる?

まず、現在の高齢者の定義をみてみましょう。

日本における高齢者の定義は、行政上の目的によって異なっています。
日本医師会や健康保険制度は65~74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者とし、改正道路交通法の高齢者は70歳以上、とするなどです。

世界標準をみると、世界保健機関(WHO)では65歳以上を高齢者としています。

2017年には、日本老年学会等が報告書において、高齢者の定義をあらためて75歳以上とすべき、という提言を行ないました。

では、75歳というのは妥当な数字なのでしょうか?

「高齢者に関する定義検討ワーキンググループ 報告書」(2024年)をみると、「糖尿病、肺炎、骨折、認知症では、特に75歳以上の年齢層において受療率の減少が認められなかったが、他すべての疾患で受療率は男女ともに経年で低下していた」こと、「総死亡率、疾患別死亡率、80歳以下の年齢層における要介護率は男女ともに経年で低下していた」こと、「最近の日本人高齢者の身体機能が向上している可能性が示された」ことなどから、「75歳」という数字をあげています。

また、アンケート結果でも、自分が高齢者と感じる年齢について、75歳以上になると過半数の人が高齢者だと思っていること、何歳くらいまで仕事をしたいかについては、75歳くらいまでそれなりの割合いることなどから、妥当なのではとしています。

2.これからの老年人口指数で見ると日本の将来はそれほど暗くない

ですが、このレポートを見ると、「75歳」という年齢だから高齢者、という絶対的な決め方ではない、柔軟な決め方も提示しています。

それが、国際連合の報告書『World Population Ageing 2019』で示している、余命を考慮した新たな高齢者基準の考え方を適用したPOADR(Prospective OADR)、これからの老年人口指数というものです。

そもそも、「老年人口指数」とは、生産年齢人口、15歳~65歳の中学校卒業して働けるようになってから年金をもらうようになるまでの現役で働いている人口、に対する老年人口の割合をいいます。

つまり、生産年齢人口100人に対し、社会的・経済的な面で負担となる老年人口が何人になるかを示す数字です。
この割合が高ければ、生産年齢人口への負担が重くなるというわけです。

以前の「老年人口指数」は、65歳以上を高齢者として考えられていましたが、POADRは、「平均余命が15年と期待される年齢」を老後の始まりとしています。

「75歳」という数字が決まっているわけではありません。

平均余命とは、たとえば、いま75歳まで生きている人が、あと何年生きるか?という数字で、平均寿命とは異なります。

平均寿命は、若くして世を去った人も計算にいれるのに対して、平均余命は、その年齢まで生きた人が基準となるからです。

毎年、厚生労働省が公表しており、原則は平均寿命より長くなります。

たとえば、2022年の結果では、男性は70歳で15.56年平均余命があり、女性は75歳で15.67年平均余命があるということになっています。
これを基準にしてはどうか、ということです。

このように一律に「65歳」ではなく、「平均余命があと15年」という基準を高齢者とすると、高齢化の進み具合の見え方が少し変わります。

以下は高齢化のめやすについての国際比較ですが、日本は、これまでの65歳基準では、2025年には生産年齢人口100人に対し65歳以上が80.7人の割合になっていますが、これを「平均余命があと15年」とすると、31.5人まで下がるのです。

65歳基準だと、韓国が78.7、イタリアが74.4とあるなかで日本はダントツですが、平均余命があと15年基準(POADR)だと、イタリアが34.6人と逆転します。

つまり、日本は65歳以上の人数は多いけれども、まだまだその先を比較的健康に、仕事をしたりして過ごす人が増えれば、状況は大きく変わるということです。

「65歳」「75歳」という絶対的な年齢ではなく、「平均余命まで15年」や、健康寿命で考えるほうが、現実的な対策につながるのではないでしょうか。

高齢者の定義があと10年のうちに、大きく変わるかもしれません。

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