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今こそチェック!マクロ経済スライド〜未来の年金に大きな影響力

このたび、厚生労働省より、来年度、令和6年度にもらえる年金がいくらか、また、再来年、令和7年度にはらう国民年金保険料がいくらになるかが公表されました。

いま年金をもらっている人が来年度いくらもらえるか、いま会社で厚生年金に入っていない人がはらっている国民年金保険料が再来年度からいくらになるか、は、物価やお給料の上がり具合をみて、毎年このようにあらためられる仕組みになっています。

ちなみに、なぜ国民年金保険料のほうは再来年度なのかというと、国民年金保険料は2年分前払いができるので、再来年ぶんまで決めておく必要があるからです。

もらえる年金も保険料も、世の中の物価やお給料のレベルに合わせて毎年調整されることにより、死ぬまで生活費としてあてにできる制度になっているわけですが、では、今回はどんな調整がされたのでしょうか?
見てみましょう。

物価よりもお給料の上がり幅を重視

いま、世の中は物価もお給料も上がっています。

年金をもらう人からしたら、物の値上がりがすごいので、年金もそれにあわせてあげて欲しいと思うところです。

ですが、物価が上がったからといって、現役世代のお給料が上がっていなければ、その年金の値上がりぶんを支える力が足りません。

いま年金をもらっている人の年金代は、現役世代が払う保険料によってまかなっている仕組みだからです。

したがって、物価とお給料が両方あがったけれど、物価のほうがよりあがった時には、年金は物価ではなく、お給料の上がり幅のほうに合わせて上げることになっています。

つまり、もらえる年金額は、物の値上がりほどには増えないということです。

さらにマクロ経済スライド「発動」

さらに、もらえる年着額を物価の値上がりほどには増やさないために、仕掛けられている制度があります。

それが「マクロ経済スライド」。
ニュースでよく耳にするという方もいると思います。

このマクロ経済スライドは、保険料を支える現役世代が減れば(公的年金全体の被保険者数の減少)年金額を減らし、長生きする人が増えてより長く年金を払う必要が増えれば(平均余命の伸び)年金額を減らす、という、現役世代への負担が重くなりすぎないようにする仕組みです。

このマクロ経済スライドによって、来年の年金は、さらに値上がりが押えられます。

まとめると、こういうことです。

物価の値上がり3.2%
お給料の値上がり3.1%
▶︎上のルールにより、3.1%が選ばれる

そこに、マクロ経済スライドの、
保険料を払う現役世代の減少率0.1%
長生きした人が増えた分全体を押さえる率0.3%
の0.4%がマイナスされます。

3.1-0.4=2.7。

物価は3.2%値上がりしているけれど、年金は2.7%しか増えないという計算になります。

結果、もらえる年金はこの金額となっています。

夫婦2人の世帯で、値上がり額は月額約6000円。

物価高と比べて、多いと思いますか、少ないと思いますか?

ちなみに、年金額を示すときはこうして夫婦2人世帯で表現されることが多いです。

なぜなら、いま年金をもらえる60歳以上の女性は、年金額がとても少ないから。

男性は働き、女性は家を守る、そんなスタイルが当たり前だった時代の名残りで、働いていた男性は年金が多く、女性は年金が少ないという現実があるから、フラットに年金ひとりあたりこれぐらい、と示せないわけです。

この夫婦2人世帯基準がなくなるのは、女性の年金額もそれなりになったころでしょう。

それまでは、こうして、見えない問題とされ続けるのでしょう。

「発動」が続く時代は年金がピンチ

なぜかマクロ経済スライドが使われるときは「発動」と言われます。

なんだかものすごいことが起こったように思いますが、その中身はそういうことです。

「発動」の意味は、「動き出すこと」。

つまり、このマクロ経済スライドは、毎年必ず使われるわけではなくて、ねむっているときもあり、動き出すときもある、ということなのです。

マクロ経済スライドが発動するのは、物価が値上がりしているとき。

それ以上は上げられないぞ、と発動します。

では、物価が上がらない時はどうなるのでしょう?

実は、これまでのデフレ時代は、マクロ経済スライドはずっと発動せず、眠ったままでした。

物価が下がる時代は、もらえる年金の額も下がるので、値上がりを押さえる必要がないからです。

ですからこれまで、マクロ経済スライドの影響力はあまり知られてきていません。

ですが、いよいよ物価が上がる時代になると、眠れるマクロ経済スライドは毎年発動することになります。

いま、将来いくらもらえるか、ねんきん定期便を確認したり、ねんきんネットで試算している人もいると思いますが、そこのマクロ経済スライドはその計算にはふくまれません。

なぜなら、時代の動きにあわせて毎年決められるものだからです。

物価が値上がりしても、そのぶんは年金額が上がらない。

しかも、物価が上がり続ける限り、マクロ経済スライドも発動し続ける。

いまはもう、マクロ経済スライドの影響力をもっと考えたほうがよい時代になってきています。

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