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採用後の試用期間について~解約権の留保とは? #0037/1000

試用期間とは

うちの上の娘は、この4月で新社会人です。

今のところあまり残業がないようなので聞いてみたら、「14日間は残業させないことになっているんだって」との回答。

採用後の「14日」という数字に、試用期間がピンときました。

試用期間の社員とはいえ、14日間以上勤務すると、「明日からこなくていい」と気軽に解雇はできません。

解雇を30日以上前に告げるか、30日分の解雇予告手当を払うか、といった解雇予告の対象になるからです。

試用期間は、会社が、採用した社員の人柄や仕事ぶりを直接職場で確認して、今後メンバーに加えるかどうかを確認する期間。

どんな仕事ができるか、どんなスキルがあるか、ということよりも、人柄や仕事ぶりに焦点があたるケースが多いように思います。

日本のいわゆる「メンバーシップ型」と、深い関係にあるといえそうです。

「試用期間」という名前が勘違いしやすいのか、世の中、このような誤解が多いようです。

  • 「試し」だから社会保険にいれなくてもいい

  • 「試し」だから、合わなければ自由に解雇ができる

両方ともNOです。

試用期間も、社会保険の扱いは普通の社員とまったく同じです。

社会保険加入の労働条件を満たしていれば入る、満たしていなければ入らない、です。

解雇も、けして自由ではありません。

厚生労働省の「労働条件に関する総合情報サイト」の試用期間ページには、こうあります。

試用期間である以上、解約権の行使は通常の場合よりも広い範囲で認められますが、試用期間の趣旨・目的に照らし、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当とされる場合にのみ許されます。

試用期間中の解雇

試用期間中の解雇を考えるためには、試用期間中の労働契約について確認する必要があります。

試用期間中の雇用契約については、最高裁の判例で、こう記されています。

試用期間付雇用契約の法的性質については、試用期間中の労働者がそうでない労働者と同じ職場で同じ職務に従事し、使用者の取扱いにも変わるところがなく、また、試用期間満了時に本採用に関する契約書作成の手続が採られていないような場合には、他に特段の事情がない限り、当該契約は解約権留保付雇用契約と解される。

神戸弘稜学園事件 (H02.06.05最三小判)

「解約権留保付雇用契約」。

この「解約」は、会社が雇用契約を「解約」することです。

では「留保」とはなんでしょう?

これは法律用語で、こういった意味です。

権利義務の移転等に際し、一定の条件を付して効力の一部を制限し、又はその権利義務の一部を残留、保持すること。例、解約手付けによる解除権の留保。

有斐閣 法律用語辞典 第4版

つまりは、試用期間中、会社は、採用者の仕事ぶりや人柄、適性の有無などによって、正式に採用するかどうか決める自由を、一部残留・保持していることと言えます。

ただし、この「一部」がポイントで、どんな場合でも自由、と言っているわけではありません。

「解約権留保付雇用契約」により、正式に採用したあとよりは会社が自由に決められる範囲は広いけれど、「試用期間の趣旨・目的に照らし、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当とされる場合にのみ許される」とされています。

そして、「客観的に合理的な理由」とあるからには、その理由を立証するために、どういった基準であれば本採用しない、などを就業規則に明記しておくべきと思われます。

つまりは、あとから「この人やっぱりやめた」と後出しジャンケンは、かなり危ない、ということです。

「試用期間」の「試用」に惑わされて気軽に考えたりせず、しっかり見るべき基準をクリアにしておいて、余計なトラブルは避けたいところです。

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