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来春からPayPayや楽天ペイで給与が受け取れるようになる?#0175/1000

今日の日本経済新聞一面で、来春から給与がデジタルマネー(PayPayや楽天ペイなど)で受け取れるようになるよう、政府が調整に入ったことが報道されています。

おそらく、来週9月13日開催の労働政策審議会労働条件分科会で「資金移動業者の口座への賃金支払について」が議題にあがっているので、そこで詳細が明らかになるのではないでしょうか。

1.そもそも給与の支払には厳しいルールがある

給与は、私たちの日々の暮らしを支える大切なもの。

ですので、支払内容や支払時期が会社側の好き勝手にできないよう、労働基準法で「賃金支払の5原則」が決められています。

そのひとつが「通貨で払う」ということ。

つまりは、「今月の給与は商品で」などの勝手ができないようになっているのです。

以前はこのルール通り、「給料袋」に入った現金が手渡しされたりしていました。

ですが、以下の厚労省の資料のとおり、当初から、銀行口座・証券口座への支払いも可能ですよ、というルールもありました。

「資金移動業者の口座への賃金支払について 課題の整理⑥」
2022年5月第174回労働政策審議会労働条件分科会(資料)

1968年、従業員のボーナスとなるはずの現金がまるごと奪われる有名な「三億円事件」の発生があったことなどもあり、だんだん現金移動リスクのない銀行口座への振込が増え、今はそれが主流となっています。

給与の支払い方法の追加は、戦後労働基準法ができたとき以来のこと。

なので、議論が慎重になっているのももっともだと思います。

2.労働者のニーズはあるのか?

では、労働者側にニーズはあるのでしょうか?

潜在的なものを含め、ニーズは高そうです。

厚労省資料には、2021年のアンケート結果がのっています。

「資金移動業者の口座への賃金支払について 課題の整理⑥」
2022年5月第174回労働政策審議会労働条件分科会(資料)

デジタル払いを利用したい人が4分の1、利用したい人も、給与の全額についてではなくて一部のみという結果になっています。

そもそもPayPayなどのQRコード決済を利用している人じたいが限られます。

以下の消費者庁資料(20歳から70歳までの1849人がアンケート対象)によると、QRコードを利用しているのは令和2年で約40%。

対象はしぼらず、一般的に集めたアンケート結果がそうであれば、QRコード決済自体が他のキャッシュレス制度のなかで伸びていることもあり、実際に制度が利用できるようになったら利用する人は多いのではと思えます。

キャッシュレス決済に関する意識調査結果(消費者庁、2021年1月)
キャッシュレス決済に関する意識調査結果(消費者庁、2021年1月)

3.気をつけるべき点は?

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000943189.pdf

上の厚労省で審議されている内容を見ると、デジタル払いの問題点もよくわかります。

(1)労働者に選択肢を示したうえでの同意が必要
・現金かデジタル払いか、ではなく、銀行口座や証券口座の選択肢も説明する。
・選択肢があっても、実質的にデジタル払いを強制している場合には、労基法違反になる!

(2)デジタル払い業者を1社に指定しない、選択できるようにする

(3)業者が破綻したとき、賃金支払口座の残高全額が支払われることを前提とする。銀行とほぼ同程度の労働者保護が可能な業者のみ指定する

などなど。

政府は、デメリットを最小限にする仕組みにしてくれそうですが、私たちにとって、デジタル払い開始は、あくまで「選択肢が増えた」ということ。

私たち自身が、デジタル払いの仕組みをある程度はわかったうえで、生活がより便利になるようであれば利用する、ムダに使ってしまいそうであれば利用しない、など、きちんと判断していくことがますます必要になっていくと思います。

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