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けがや病気をしたとき~労災保険・健康保険

むかし、社会保険の知識ゼロで育児休業を知らず、小さな会社で社長も知らず、育児休業をとりそこねた経験があります。
それから、そんな人をなくしたい!と思い、社会保険労務士の資格と、ファイナンシャル・プランナーの資格、AFPをとりました。

その夢をかなえるための小さな一歩。

前回の「傷病手当金」は少し突っ込んだ話だったので、今回は基本のキで、社会保険のうち、けがや病気にかんするお話を、なるべくわかりやすくお伝えします。

1,まずはいつもの前置き。基本~社会保険とは?

日本国憲法第 25条で保障されている、国の義務で、わたしたちの権利です。
「健康で文化的な最低限度の生活」を営むことができるよう、国の責任で、保険の仕組みを利用し実現しようとする社会保障制度の一環を「社会保険」といいます。

皆で困っていないときからお金を出してプールしておき、困った時にそこからお金を出す「保険」という仕組みを、国の規模で運営しているため、強制加入が原則となっています。

けがや病気をしたときは、治療、休業などが発生しますが、今日は治療についてお話します。

まずは、病院に行くまえに、仕事上(または通勤上)のけが・病気か?確認しましょう

YES→労災保険(あらゆる労働者が対象!治療費負担なし)
NO→健康保険(原則3割負担)

となります。

2,仕事上(または通勤上)のけが・病気:労災保険の場合

仕事上のけが・病気があきらかな場合は、労災保険の対象になります。

理由は、労働者の仕事によるけが・病気は、労働基準法という法律で、会社の責任と決められているからです。
とはいえ、小さい会社までがその責任をきちんと果たせるか、というと、問題のある場合もあります。
ですので、労働者のために、その会社の責任をきちんと果たさせる仕組みとして、国がもうけているのが「労災保険」です。

この保険料は、全額、会社が出しています。
私たちのお給料からは引かれていません。

ですので、この労災保険の対象となる場合、健康保険は使わない(病院で保険証を出さず、「仕事でのけが・病気です」と伝える)のが懸命です。

▽労災保険とは
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040325-12.html

労災事故なのに健康保険を利用すると、あとでお金の返金ややり取りが発生して、めんどうくさいです!

なお、通勤途上のけがも労災保険の対象になりますが、通勤ルートのチェックや途中の立ち寄りがなかったかなど細かな条件がありますので、ご注意ください。
▽通勤労災
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/tuukin.html

あきらかに仕事上のけが・病気ではなく、なんとなくグレー?という場合は、労災の対象になるかどうか、会社を通してかご自分でか、一度お近くの社労士さんか、労働基準監督署に相談してみましょう。

3,仕事上のけが・病気ではない:健康保険の場合

健康保険証をもって、病院へ行くことになります。

実際にかかった医療費の3割を自分で病院に払い、のこりの7割は、健康保険があとから病院に支払うかたちになります。

①健康保険とは

健康保険は、日本では、日本に住所がある人は全員加入、強制加入となっています。おぎゃあと生まれた赤ちゃんも、出生届を出したら対象です。

健康保険には大きく3つあります。
協会けんぽ:企業が加入。もっともポピュラー
組合健保:主に大企業が独自に運営
国民健康保険:市町村・都道府県等自治体が運営

協会けんぽ、組合健保の加入者、または加入者の家族で扶養に入っている人「以外が」国民健康保険に加入することになります。

日本に住所がある人(日本企業で働いていて海外に赴任している人もふくむ)は、どれかには必ず加入します。

②3つの健康保険の違い

協会けんぽ・組合健保と、国民健康保険との大きな違いは、協会けんぽ・組合健保は「家族を扶養にいれる」ことができることと、保険料の計算方法です。

協会けんぽ・組合健保の保険料は、加入者の給与の金額がベースで決まります。正確に言うと「標準報酬月額」で決まります。

この場合、家族に収入があっても、その収入が決められた範囲内であれば、保険料には影響しません。

何人家族がいても、父母・配偶者・子どもと10人扶養にいれても、健康保険料は値上がりしません。(介護保険が上がるばあいあり)

国民健康保険は、前年の収入で決まります。
また、「家族を扶養にいれる」ことはできず、この「前年の収入」は「世帯の収入」となります。
ですので、家族のパート収入も、アルバイト収入も、保険料計算の対象である「前年の収入」の対象になります。

また、国民健康保険の保険料は自治体ごとに決まるので、自治体でかなりのひらきがあります。
ご自身の自治体を確認してみてください。

▽こんな比較サイトもあります
http://jigyou-tax.hajime888.com/j01.html

▽より専門的な資料
https://www.mhlw.go.jp/content/000590979.pdf

また、違いとしては、組合健保は会社独自の制度がある場合があります。たとえばインフルエンザ予防接種を受けると補助金がでる、という制度などです。

③注意する点:健康保険の切り替えが生じる時

人は一生の間に、協会けんぽ・組合健保・国民健康保険の切り替えが発生します。

例えば、こんなふうに切り替わります。

子ども時代:親の健康保険の扶養か、国民健康保険
会社に就職:会社の加入している協会けんぽか組合健保
退職してしばらく就職活動:親の健康保険の扶養か、国民健康保険
再就職:会社の加入している協会けんぽか組合健保
退職して年金生活:最終的には国民健康保険か、家族の健康保険の扶養

このとき、たとえば、就職活動の間は国民健康保険に入っていて、その後就職して組合健保になったりした場合は、国民健康保険から抜ける手続き等が必要です。

このあたりをきちんとしないと、二重に保険料を払ったり(あとでわかった場合、一定の期間内であれば返金されます)、国民健康保険に加入しそこねて無保険期間が生じたりします。

無保険期間に病院にかかった場合は、医療費100%全額自己負担ですのでご注意を。

退職した後に、退職した会社の保険証を使ってしまった場合も、健康保険7割分は後日請求がきます。

また、就職したけれど、すぐには健康保険証が届かず、その間に病院にかかった場合は、一度100%自己負担になる場合があります。

ですが、健康保険加入期間にかかった病院であれば、あとから請求により7割部分は払い戻ししてもらえますのできっちりと「療養費」の申請をしてください。

▽療養費とは
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31705/1957-256/

4,その他あれこれ

①自治体の乳幼児医療費助成は自己負担分を払ってくれる

医療費が1万円かかった場合、子どもであれば2割負担なので2,000円を窓口で払うことになりますが、その2,000円を自治体が払ってくれるのが「乳幼児医療費制度」です。

「乳幼児医療証」が送られてきている人が対象です。

この制度だと、入院して手術しても、食事代くらいの自己負担ですみます。
(うちの娘も滲出性中耳炎で何回か入院して手術しましたが、1泊2日で支払った金額は1,000円しませんでした)

安心して早めに病院にかかれ、根治するまで病院が利用できる大変ありがたい制度ですが、対象となる年齢の上限は、自治体によって違います。
東京23区だとだいたい中学生までが対象で、そんな自治体が増えてきていますが(千代田区など、高校生まで拡大するところも!)、これからお子様がうまれるかたは、ご自身の自治体を確認していただくとよいと思います。

②高額療養費・限度額適用申請等で高額医療もフォロー

入院・手術なので、かなり医療費が高額になってしまった月は、この「高額療養費制度」の対象になり、健康保険からの補助が増える場合があります。

▽詳しくはこちら
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3030/r150/

③海外でけが・病気をした場合もフォロー

海外でけが・病気をした場合は、海外療養費という制度があります。
いったんは医療費全額自分で支払いますが、日本の保険診療をベースに治療内容を確認し、日本であれば健康保険の対象となる分については、後から請求ができます。

かかった病院の証明等が必要になるので、海外に行かれるかたはあらかじめアンテナをたてて頂いておくと良いかと思います。

▽海外療養費
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3120/r138/

④健康保険の対象にならないものもあります(全額自己負担)
・日常生活に何ら支障がないのに受ける診療(美容整形など)
・妊娠も病気とはみなされない。正常な状態での妊娠・出産は対象外
※医学的に必要な帝王切開は保険対象。うちは逆子につき帝王切開で、出産は保険対象で3割負担でした。
・健康保険の目的からはずれるような病気やケガ
例)犯罪行為や故意に事故を起こしたときのけが、ケンカ・酒酔いなどによるけが、正当な理由もないのに医師(病院)の指示に従わなかったことによる病状悪化…など

5,さいごに

健康保険については、以下のことが大事です。
今のうちに、ぜひご確認いただけるとよいかと思います(^^)

(1)自分が今なんの健康保険に入っているのか確認する
(2)その健康保険ではどんな給付がうけられるのか、サイト等で確認する
(3)会社をやめる、転職する、独立起業する、年金生活に入る・・・などの節目では、次にどの健康保険に入るか、見直しが必要な場合がある、と知っておく

6,いただいた質問等

Q)翻訳業や講師業の個人事業主が入れる健康保険があるか?
A)個人事業主であれば、原則は国民健康保険か、同じ国民健康保険ですが、母体が市町村ではなく、同業種の集まりになる「国民健康保険組合」になります。
翻訳業の方がはいれる国民健康保険組合もあるようですが、だいぶ限られるようです。
▽参考資料
https://wonderful-translife.com/?p=851

ですが、法人になれば、法人の代表者は、協会けんぽにも、厚生年金にも入れます。
それも計算に入れ、法人になる方もいるようです。

Q)海外で風邪をひいたときも海外療養費は使える?
A)日本で保険診療の対象になるものであれば使えます。

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