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映画『ライド・ライク・ア・ガール』見てきました

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Stop the Nation(国を止めるレース)

英国ダービーやケンタッキーダービー、日本ダービーや有馬記念がどれだけ盛り上がろうとも、決して国全体の行事になったりはしない。

11月の頭、オーストラリアが夏を迎えようとする時期。

文字通りの老若男女が見るレース。子供ですら学校で疑似的に馬券を買い、敬虔なシスターでさえ神への祈りをほんの数分間停止するレースがある。

世界で唯一、本当に「国民的行事」となるレース。

それがメルボルンカップ。

日本でもメルボルンカップの馬券を買えるようになり、さらにはデルタブルースが岩田康誠騎手と共に制したこともあるように、決して日本と無縁のレースではないものの、それでもこんな映画が作られるほどとは想像もできないだろう。

なぜ2015年のメルボルンカップが映画になったのか。

それは伝統ある大レースを初めて女性騎手、ミシェル・ペインが制したからである。この映画は彼女の半生と栄光への道のりを描いたものである。

という訳で、さっそく見てきました『ライド・ライク・ア・ガール』。

ここでネタバレはしませんが(とはいえ結末は分かり切っているが)、レースシーンの迫力、そして女性騎手が味わう冷遇や苦難、そしてその克服が余すところなく描かれてます。

特に見どころは、数々の名馬の名前が出てくること。主人公ミシェルは子供の頃からメルボルンカップに憧れていたこともあり、何年にどの馬が勝ったかを全て暗記してるほど。

1930年代の名馬Phar Lapや、ジャパンカップにも遠征したキーウィの名を挙げたかと思うと、子供同士でやる競馬ごっこでは1992年ジャパンカップでトウカイテイオーと戦ったレッツイロープの名前も出てきます。

さらにはラストのメルボルンカップ、実は1番人気が日本から遠征していたフェイムゲーム。よって名前が呼ばれますし、見飽きた……いや見慣れたサンデーレーシングの勝負服もスクリーンに映ります。

で、私が書くからにはミシェル騎手が勝利したときのパートナー、Prince of Penzanzeの血統について触れないわけにはいきません。

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父は日本に輸入されていたペンタイア。そのペンタイアと母内Caerleonの相性の良さを生かして早期完結型、緊密なクロスを持つ優秀な配合に仕上がっているのですが……

惜しむらくはクロスがやや雑多なことと、母内においてはCaerleonが今一つ機能していないことから、基本的にはハンデ戦向きの馬と考えるべき。事実、メルボルンカップは単勝100倍を超える大穴での勝利でした。

とはいえ日本ではもう見られない程の多頭数と、ハンデ戦ということで誰が勝つかさえ分からないお祭り要素の高さも、またメルボルンカップの魅力なのでしょう。

競馬ファンなら確実に楽しめるこの映画、お好きな方はぜひ。


「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。