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どうでもいいんですよね、人生。

人生、どうでもいいです。本当にどうだっていい。
幸せになりたいとか、人として成長したいだとか、大きな成功を収めたいとか、これっぽっちもないんです。
変わらぬ日常が大事とか、君といれば毎日が薔薇色とか、虫眼鏡を覗いて些細な幸せを見つけることに興味も持てない。

人生なんて、美しいものに触れられれば、それでよかった。
天気雨がアスファルトを濡らす匂いとか、花火がうち上がった瞬間の見物客の驚嘆だとか、冬の朝の空気だとか、腹を揺さぶるエンジン音だとか、湧きたつ入道雲だとか、そんな美しいものが好きで、それに触れていられればよかったんです。

好きなんてありきたりな言葉じゃ理解してもらえない。
恋い焦がれて、依存している。中毒になって、融合していまる。それが自身の根底にあって、どうしようもない自己と複雑に絡み合って、歪な花を咲かせています。

どうしてこんなに美しいものが好きなのか、どうしても分からない。
ただ、どうしようもなく醜い自分の人生だけが浮き彫りになって、途方もなく遠い。
ああ、自分の人生なんて、笑えもしない。人生を歩んでいる感覚なんて、これっぽっちもないのに。

いつか救われるだろうと思っています。
誰かが、いつか、何事もなかったみたいに、うやむやにしてくれるって、根拠のない期待をしています。
それは神様かもしれないし、恋人かもしれない。あるいは、天災や不慮の事故かもしれない。
平坦で美しくもない人生を、極彩色の雷がパッと照らして色づけて、あるいは電磁力で方向を変え、肉では耐えることのない電圧で最悪全てを終わらせてくれるのだろうと、夢見ています。

「自分を異常者だと思い込んでいる普通の人間」だと自覚しています。それでも自分は変なんだと思います。
こんなに悩んでいる愚か者は中々いないでしょう。でもそれは一般常識や社会通念から見たときの話で、僕より外れた人間はたくさんいます。
この感覚が僕だけの特別なものでもないことも、よく分かっています。
「世界には君より苦しい人がたくさんいるよ」って声をかけてくる人を、全員殴り倒したい。その事実が今ここにいる僕を救うことは何一つない。

本当に、どうでもいいんです。人生。
こんな美しくもない人生を生きなければならないなら、別に今すぐ電源をオフにしたっていい。
なのに、生きている。
本当に馬鹿馬鹿しい。
妥協で人生を生きている。損得勘定で人生を生きている。慣性で人生を生きている。
もうあの夏には戻れないし、あの田舎に生まれつくこともできない。
目の前には社会という無機質で延々と続く責任だけが積み上げられ、美しいものに触れる時間は奪われていく。
美しいものは社会に出た二ヶ月前から、その光と温もりを奪われ、僕の眼前から姿を消した。
これからもずっと、美しいものは僕の人生に現れない。
本当、全くもって。どうでもいい。
どうでもいいんですよね、人生。

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