【議事録】2022年度 第1回「テーマ決め」
真山ゼミとは
小説家・真山仁先生をお呼びした自主ゼミ。2022年度は、LabCafe(本郷三丁目)とZoomの併用によるハイブリッドで実施予定。
2022年度の方針
昨年度は今一つ議論を深掘りできなかった。
そこで、今年度は、一つのテーマを半年ほど続けていこう。
前半の2~3回では、議論するための知見を得る。
後半では、どう自分の意見を発展させるかを考えよう。
何をテーマにしたいか
去年のゼミへの感想や、なぜゼミに参加しているのかを交えつつ、今年度扱うテーマについて学生から様々な意見が出された。
扱ってみたいテーマ
政治社会の知識をつけたい。日本政治の構造について知りたい。
歴史ばかりでなく現代についても知りたい。
いろいろな方に取材するときの姿勢について知りたい。
卒業後は科学技術を社会につなげるような仕事をしたい。そのためにどうすればよいかを考えたい。
具体的な議論をしてみたい。
なぜ日本人の給料は上がらないのか。
真山ゼミ@駒場に参加する理由
社会に訴える手段として小説を書くような方が、何を考えてどんなファシリテーションをするのかが気になる。
象牙の塔にこもっていてはいけないと思う。
学部生のとき、自分で悶々と考えることはあったが、色んな人と一緒に考える経験がしたかった。被災経験に関する小説に興味を持った。
自分と異なる意見を色々聞けたのが良かった。
去年一年参加して、「額面通りに受け取らない」力がおぼろげに分かった。この力をこれからも養いたい。
聞く力を知りたい、他の人の力を引き出すような力をつけたい。
社会や政治について皆さんの話を聞きたい。真山先生の考えも聞きたい。
先生からのフィードバック
これらの意見に対する先生のフィードバックから、さらに議論が深まっていった。
なぜ給料が上がらないのか
バブル後の「失われた20年」で、海外の物価は5倍に上がった。政治のせいで、日本では給料は上がらない。
なぜ先生はいろいろなことを知っているのか
世界の専門家に取材したり、自分で現場に行ってみたりする。
具体的なことが分からなければ、より具体的に知りたい、とはならない。
ぼやけた画像からシャープな画像へ、どうピントを合わせるか。抽象的な知識の中で、何が分からないのかを知ることが第一歩。
何が分からないかが分からないから苦しい。本当にこれはひどいことなのか、手も足も出ないことなのか、という問いから始める。
普通に過ごすだけなら問題意識はいらない。真山ゼミに来るような学生は、大きな可能性を持っている。何者かになる方法を知っているか、何をしたいのか、それを考えられるようになる。
政治の話をしたい、というのがみんなの意見なの?
(先生)政治の問題をテーマに取り上げるならば、今年は参議院選挙がある。
(学生)より直接的なテーマを取り上げたい。この数十年の政治がどう具体的な、例えば給料に関わっているのか。
(学生)日本の国会ではねじれが起こりうる。それによって意思決定が停滞することは民意の表れでは。
(先生)今の学生は政治の議論をしない。
企業において、最大の経費は交通費、飲食代ではなく人件費。そこで、給料をいつからか上げなくなった。初任給を下げる企業もある。
今の組合は、自分たちの給料が下がらないなら若者の給料を下げていい、となってしまった。国が経済政策で、馬鹿なことをやめろ、と言えば良かった。
新人を守る組合も政党もない。なかなかデフレ脱却しない。
政治は誰のためのものか。「国民」とは誰か。
新人は仕組みを知らない。例えばTBSに入っても、賃金のカーブが変わったことに気付かず、マスコミに入って良かったと喜んでいる。
子供手当や家賃手当を会社がやめた。「そういうものだ」と若者が納得してしまう。これは政治の問題。長く放置されてきた問題のため、この話をするのは難しくなってきている。
例えば頑張っている社員に対して、十分な待遇が無いことが問題。
(先生)このような話のつなげ方(表面的な政治と他のテーマとの連結)をすると、去年とは違う話ができるようになる。
参議院をテーマに推す理由
(先生)もともと参議院に政党は無く、政党政治を監視するために、成功した人たちが集う場所だった。それがいつの間にか、政党政治になった。
日本の一票の格差は、有権者の人数で平等としていることから問題になる。いずれ総理大臣は大都市からしか生まれないようになるかもしれない。
(学生)選挙制度に興味がある。選ぶ側として自分が関わるチャンスがある。選挙で自分の意見を持って人を選べるようになりたい。
(学生)日本の国民の意見を反映させるにはどうするのが一番いいか。
民意が無いことが問題では。若い人が虐げられているのに気付いていないのが根本的な問題では。
民意を若者が持てなくなった。期待を持てなくなった。
政治に国民が期待していた時があったか?
(先生)政治に国民が期待していた時代が最近あったか?
(学生)99年生まれだから分からないが、1993年辺りは盛り上がったのでは。
(先生)1993年頃は政治家が盛り上がっただけ。中選挙区だと選挙区が広く、金がかかった。五当四落(5億金をかければ選挙に勝ち、4億金をかければ選挙に落ちる)と言われていたほど堂々と金がばらまかれた。
小選挙区制は、二大政党制を目指して導入された。
(先生)「ウクライナを応援する党」が勝つかもしれない。どう民意を反映させるか。選挙に勝つ方法が、民意の反映ではない方法にある。
包括的性教育に関心がある
(学生)包括的性教育の導入に興味がある。その材料になるような話が聞きたい。
声が反映されにくいという点があるのでは。例えば、自民党の中で多様性はあるが、一部の人が権力を持ってしまっているのでは。
民意とは?
(学生)民意とは何か。そもそも関心、期待が持てないという点に問題意識がある。制度やマスコミ、若者の政治参加に焦点を当てたい。自分は諦めていない。
既得権益の存在が問題だと思う。
地方の選挙に関心がある
(学生)宮城3区の30代の女性候補の話を聞いた。そこでは60代の対立候補の地盤があって、若い女性候補へと票が動かない。
怒りが原動力?
(学生)選挙の中でも先生が細かく話題を提示してくださった。制度を知ってはじめて、具体的な怒りを持つのではないか。
(先生)怒りを持つのは真ん中の時点、ピークにしてほしい。その後どうしたらいいか、につなげてほしい。
(先生)衆院選での結果、を話して若者に不満が無いのでは?と思った。
変えることが多すぎて、テーマを絞ってピンポイントでやらないと暴論さえ出てこない。衆院選では無力感しかなく、煮詰まりが足りないのでは。
「選挙」以外のテーマの先に
ジェンダー、ダイバーシティ、マイノリティ
(学生)ジェンダーイシューに興味がある。女性活躍はなぜ口だけになっているのか。
(学生)ジェンダーに関わらずダイバーシティの話。ダイバーシティが行き過ぎてやりにくくなっている部分があるのでは。
(先生)マイノリティの話もある。例えば政治では、自民党は多様化しているのではなく、そのふりをしているだけ。
マジョリティの意見が言いにくくなっている。女性が管理職になっていないのは、日本で長く働き続ける女性社員が少ないため。
女性が働きにくいことが問題、文化の問題もある。そういう問題を除けて、数字だけを見ているのが現状。
努力目標としてはいいが、もっとリアルな話も必要。
女性の社会進出とメディア
(学生)(女性の社会進出が少ないのは)刷り込みの問題では?世代から次の世代へと受け継がれている。メディアの問題ではないか。
(先生)男女の問題の歴史の長さ。遅れている根源に触れないことが問題。
実態と現状と歴史とをやらないといけないため、テーマとして悪くないが大変。
科学技術/アカデミアと政治の関係
(学生)選挙以外だと、科学技術またはアカデミアと政治の関係に興味がある。そもそも(本ゼミは)東大生がほとんど。
(最近だと)理研のリストラや旧態依然(な態度が問題になっている)。海外がSDGsの観点から日本のつぶれたプロジェクトを再発見(している事例も)。
(学生)サイエンスコミュニケーションに興味がある。社会に価値を認めさせるのが大切では。
(先生)テーマとしてどう展開するか?本来使われるべき科研費をどう使うか。半年の議論で、解決策へとつなげたい。
(学生)国内外で比較してはどうか。
(学生)科学技術にも色々ある。それぞれの専門分野、技術について知らない。半年間でやるのはふさわしくないのでは。
(先生)科学技術研究は細分化し、ジャンルは増え続けている。科研費は変わっていないが、細切れに。欧米、中国は分野絞り込みをしている。
アメリカの大学院は民間から金を取る。NASAや軍事、生命科学など、世界を牛耳れる分野しか科研費は取れない。
科研費を平等にまいてるのがしんどいところ。それまで周辺分野にも科研費をかけていたのに、はやぶさ2やiPSだけに金をつっこんでしまう(良くも悪くもある)。
最終的に、その分野が社会の中でどう目立つかがポイントになる。
(学生)制度としての大学についてもっと議論できないか。科学技術の発展にどう制度が寄与したのか。
(先生)大学改革は成功したとは思えない。50年でできた制度は50年かけないと変わらない。よっぽどな取捨選択をしない限りすぐに変わらないが、東大ではとても無理。
(先生)学生ができることは、良い研究をすることと、子供や現場をまき込むこと。
最大の問題は無関心。
自分ごとにするには言葉ではなく行動。
(先生)研究している本人は社会的意義が分からなくても、近くに意義を解説できる人はいた方がいいのでは。
長い間にある文化を突然変えるのは難しい。最も嫌な関心の持ち方は「反発」。
むこう(無関心だった人)が能動的に働いてもらうような仕掛けを作ることがポイント。
アカデミアに関心を持ってもらう方法から始めて、政治に関心を持ってもらう方法につなげていくのはいいかもしれない。
(学生)各選挙区で政治家が科研費を出してくれるように訴えかけてくれるようなストーリーを作れないか。
(先生)選挙で勝てないことは論点にしてくれない。
とにかく下心無しで最初は関心を持ってもらう、するとメディアで取り上げられる、そして無関心層が動く。
政治をわきにおいて、関心を持ってもらうことをゴールにするのは面白いかも。
(学生)高校生相手に研究の話をしたが、ポカーンとされた。難しさを感じた。
(先生)少しでも、100人のうち数人だけ、1人だけでも聞いてくれればいい。そうやってものすごく関心を持った人が出てくる。
次回の方針
理系の3名が自分の研究について10分間話す
なぜそのテーマが好きなのか?なぜそれほどに夢中になれるのか?
他のメンバーが自分と同等の熱量を持ってくれるよう、自分が感じている魅力を最大限に伝えて。
聞く側は、「なぜそこにお金をかけるのか」「なぜそのテーマが重要なのか」など、興味を持とうとしながら聞く。
「有用性」を訴えるのではなく、「関心」を持たせることを目指して。
公共政策の学生は、いずれ国民の奴隷、公僕になる。
文系の学生も「自分が公務員/社会人になったらその研究をどう捉えるか」を問いとして持ちながら聞くことで、自分ごとにして。
次回予告
【日時】5月14日(土)18時~20時
【場所】LabCafe, Zoom
【テーマ】無関心を関心に変えるために
【参加申し込み方法】
はじめて参加する方→Google Form
メンバーの方→LINEグループのノートにリアクション
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