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小説

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読み切り小説、月イチ程度で更新します
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記事一覧

小説「沖田くるみと11人のスター」

沖田宗四郎は十二人居た— 昭和の名優・沖田宗四郎(享年八十二)の孫で女優の沖田くるみが、…

真夜中野マヤ
3週間前
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小説「夢見るくせっ毛ちゃん」

太郎の髪は細く飴色で、しかしその繊細な見た目からは想像も出来ないほど強いコシを持つ。くる…

真夜中野マヤ
1か月前
107

小説「女神の結婚」

「ねぇ、その髪さ、和式でウンコする時どうしてんの」 サチの髪は長い。いや長いどころの話で…

真夜中野マヤ
2か月前
29

小説「耳を喰む」

「耳を食べてほしい」と、すみれさんは言った。 退屈な飲み会をこっそり抜け出した夜。地下街…

真夜中野マヤ
3か月前
67

小説「それ」

我が家には僕が物心ついた時から「それ」が在った。 母の「それ」は、トランプのジョーカーの…

真夜中野マヤ
3か月前
14

ショートショート「空の布のハスカップ」

社長が「食べ飽きた」と言うので、有り難くいただいた金曜日のご褒美デザート、空の布のハスカ…

真夜中野マヤ
5か月前
2

小説「神の子の親友」

セカイがうちに来たのは僕が八歳、母さんが亡くなってすぐの頃だった。塞ぎ込む僕を見兼ねて父が貰ってきたと聞いた。 セカイは雄のラブラドールで、母さんの作るホワイトシチューみたいな、優しい色をしていた。 自宅裏の宮殿のような建物で、父はキョウソとして働いていた。そこにはシンジャさんと呼ばれるたくさんの大人が居て、僕は神の子と呼ばれていた。身の回りのことは全てシンジャさんがやってくれ、みな僕に優しかった。 僕は学校という存在を知らずに育ち、勉強は家庭教師に教わった。授業を受け

小説「汗をかくアイスコーヒー」

「結婚するんだ」 わたしの隣で婚約者がそう言うと、目の前のコーイチは「おめでとう」と嬉し…

真夜中野マヤ
7か月前
10

有料小説「古稀来い、恋来い」

角 冴子、まもなく古稀である。そこそこ裕福な家に生まれた。同世代の友人には怒られるが、オ…

200
真夜中野マヤ
9か月前
2

有料小説「鍵穴チョコレイト」

ヨシくんとは別々のクラスだったけれど、家が近かったのでよく遊んだ。ヨシくんは背が低く色黒…

200
真夜中野マヤ
9か月前
3

小説「噂舞う夕餉」

H社の内定が決まったと言うと両親は泣いて喜んだ。僕の内定の噂はたちまち大学と近所に飛散し…

5

小説「走馬灯チャンネル」

「山本君って鈍臭いよね」 三年先輩の島崎あかりさんが、社内で僕にだけ何かとつっかかってく…

8

小説「イエス know 枕」

石田夫妻に子供は居ない。出来なかったのだ。 とはいえ子供が出来ないことに、いつまでも悩む…

4

小説「鈴木さんの働き方改革」

鈴木さんはこの道数十年の大ベテランだ。 落ち窪んだ眼球、痩けた頬、蒼白の顔面、佇まいからは悲愴感が漂う。鈴木さんが何の気無しに辻に佇めば、そこは忽ちに心霊スポットとなる。見まごうことなき立派なオバケである。 大正から昭和の時代を生きた鈴木さんは、その根っからの実直な性格と器量の良さから、オバケになってからも良く働いた。あらゆることに気が付き、先回りしては何でもこなし、いつの間にやら閻魔大王様の右腕として地獄の門番の開閉を預かる身となった。すでに地獄には居なくてはならない存在