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#1/「型破りオヤジ」は強烈なGiverである

世の中には、多くのビジネススクールが存在する。今すぐ起業したい人向けだったり、起業しなくてもMBAに類する知識を習得する場だったり。

私の恩師こと「型破りオヤジ」は会社員をしながら、仕事後に若手を対象としたビジネススクールを主催していた。会社員を卒業した今もスクールは続き、今年で20年目を迎える。歴代卒業生は約350人

え、珍しいけど「型破り」は言い過ぎだって?
ちょっと待ってほしい。

このスクールは完全ボランティアで運営されている。
より正確に言えば、会場費など運営にかかる費用は、全て型破りオヤジのポケットマネーから支払われている。

毎年4月~7月までの4カ月。
毎週水曜夜に都内某所の会場を借り(注:2020年以降はコロナのためオンラインで開催)、講師を呼んで講義をしてもらう。ベンチャーの経営者から実際に抱えている課題をもらい、受講生はチームを組んで提案する。講師も経営者もボランティアに賛同くれる方だ。

受講生の多くは学生なので、ビジネスに不慣れである。それ以前にチームを組んで提案をまとめるという経験自体が乏しい。
タスクの担当を割り振っても、平然とやってこないメンバーがいる。
ある瞬間に連絡が途絶え、忽然といなくなるメンバーもいる。
当然、一生懸命とりくんでいるメンバーはプッチーン(; ・`д・´)とくる。

想定外にハードな局面に遭遇したとき、どうすれば自分をコントロールできるか、どのようにチームメンバーに伝えたらいいのか分からない。そのくらい余裕のない時間が待っている。

遅々として進まない受講生の議論をサポートするため、TA(Teaching Assistant)として数名の社会人が各チームについてくれる。当然、彼らもボランティアだ。
TAだって「ベンチャーが実際に困っている課題」の正解はわからない。もしわかるなら、TAを辞めて、そのベンチャーに参画するなり自ら起業したほうがいい。受講生がベンチャー課題に取り組む傍ら、受講生チームが巻き起こす数々の課題(もはや珍事件と呼ぶ方がふさわしい笑)に取り組むTAは、受講生以上に汗をかく。

2014年に「与える人こそ成功する時代」という、副題が本の内容をズバリ表している本が出版された。世界No.1ビジネス・スクール「ペンシルベニア大学ウォートン校」史上最年少終身教授、待望のデビュー作!というキャッチコピーを耳にした方もいるかもしれない。

私たちは(意識か無意識かにかかわらず)ギブ&テイクこそ理想形と考え、これが果たされるとき心地よさを感じる。
本書は「違う」と述べている。Giver(相手のためにギブする人)こそ成功や高い幸福度が得られることを、複数の事例をあげて説明している。

型破りオヤジは、普段はいたって普通のオヤジだ。
「そこはタクシーでしょ」って場面でも電車と徒歩で移動するし、洋服や食事も質素である。
ギラギラした感じも、キラキラした感じも漂っていない。

しかし、あなたの周りにいるだろうか。
「近年上場しそうなベンチャー」でも「未来を変えるベンチャー」でもなんでもいいが、ちょっとキラつくランキングには教え子が名を連ね、
一見ベンチャーと距離のある大企業にも申し子がマフィアのように潜伏し、
大人の運動会やら紅白歌合戦など中二病まっしぐらなイベントを企画すれば謎の盛り上がりをみせ、12月に入ってからクリスマスまで毎日(つまり25日)忘年会をするといえば、ゆるゆるとアルムナイの絆が深まっていく、そんな愛されオヤジが。

『あざとくて何が悪いの?』で紹介されるモテ術以上に、「Giverなオヤジで何が悪いの?」な姿勢を貫くと真に愛されるという事実に、私はびっくりしている。

型破りオヤジが生んだのは、1人のスターではない。350人の流れ星を、宇宙のいたるところにまき散らした。
私をはじめとする卒業生の実力が伴っていないことを自覚した上で、あえて言おう。私にとってこの学び舎は「現代版の松下村塾」だ。知識を実践とともに深めることで視野が広がり、何よりGiverがもたらす底力を知った。

吉田松陰は「至誠留魂(真心をもって事にあたれば、志を継ぐ者が現れ道は開ける)」という信念を持っていたらしい。型破りオヤジの真心は、現代の志士を目覚めさせ、私たちの原動力となっている。

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