新卒の私が帝国軍の魔の手から逃げ出した話
帝国軍への入隊
新卒で入った会社は教育業界だった。その営業職として入社した。
その会社は、これまでの人生経験で会ったことのない人種が山のようにいる会社だった。
さしずめ、スターウォーズ‘の登場人物にいるような人たちだった。
ダークサイドに堕ちた方の。
関西勢同期13人は、それぞれ各営業所に配属された。
私は、同期2人とともに、大阪駅の近くの営業所に配属された。
配属後、すぐさまダークサイドたちの洗礼を受け、同期2人は、それぞれ1ヶ月、2ヶ月で辞めていった。身体中に発疹ができたり、精神的に参ってしまったのが直接の理由だ。
私は、辞めたくなかった。適当に入社したのならともかく、できる限りの準備をし、納得ずくで入ったのだ。この業界に。この職に。
ただ、職場にいる人種までは見抜けなかった。それだけが誤算だったが、いくら上司がダースベーダーだからといって、そんな簡単に辞めるわけにはいかなかった。
帝国軍の世界
さすが悪の帝国を築いただけはあって、そのダークな世界たるや凄まじかった。
営業職なので、ノルマがある。1ヶ月でお前はいくら。お前はいくら。とノルマが課せられ、そのノルマが達成できなければ、懲罰のようなものが課せられた。さらに叱責だ。
当時のボスは100キロは優に越す巨体の持ち主だった。それもスポーツしてた方の巨体なので威圧感がすごい。その威圧感が巨大バズーカをぶっ放すがごとく吠えるのである。心臓がぎゅっと縮み上がる。
新人なのでそんな簡単にノルマが達成するはずもなく、毎日叱責され、懲罰を受けるために朝9時に出社し、夜23時半に退社する生活が続いた。
ダースベーダーの憂鬱
スターウォーズの帝国軍の様子は映画でしか観てなかったのでよくわかっていなかったのだが、本物にはそれなりの苦労があるのだ。彼らは勝つか負けるかの世界観で生きているので、下剋上が凄じい。私がその世界に放り込まれた2年間で、ボスが5人くらい変わった。巨体のボスは、新しいボスに精神的に追い込まれ、鬱病になって辞めていった。
帝国軍って大変なのだ。
ちなみに、ダースベーターの忠実なる下僕、ストームトルーパーはその戦乱に巻き込まれ、その6倍くらい辞めていった。
小公女セーラの逆襲
上司がスターウォーズの世界観ならば、私は小公女セーラの世界観にいた。
我慢すれば、きっと誰かが見てくれていて、私をこの辛くて汚い世界から救い出してくれる。そう信じて生きていた。
私がその大阪駅の営業所で我慢に我慢を重ねた結果、どうなったか。
自分で逃げ出した。
そう、セーラはまだ子どもだったから救いの手が差し伸べられたが、大人の私を助けるのは、自分なのだ。
とはいっても、周りの人がみんな帝国軍に心酔していたかというとそうではない。
つるんとしたストームトルーパーのヘルメットの下には、心やさしき人間が入っていた。折を見て声をかけてくださったり、逃げ出すための助言をしてくださったりした。
その言葉に、その存在に、どれだけ救われたか分からない。
逃げ出した先に見たもの
逃げ出した先は、京都の営業所だった。
京都の営業所もダースベーダーの支配下に置かれてはいたが、帝国主義に疑問を持つ尊敬するボスがいた。そして、そこには同期もいた。
同期は、私が2年間耐えに耐えて生きてきた間、心ある上司にのびのびと育てられ、今やトップセールスマンになっていた。かたや私は、根性はついたものの、実質仕事人としての教育を受けてこなかったため、大きな差をつけられていた。
私は2年間も何をしていたんだろうかと愕然とした。
根性なんてつけてどないすんねんと。
私と同じ営業所に配属直後に辞めていった同期2人も、新しい職場で楽しく働いていた。
私がこの2年間で学んだことは、人のありがたみと、自分の人生の舵を切るのは他の誰でもなく、自分なのだということ。この2つに尽きる。
営業ノウハウなど身に付かず、その後努力しても、京都にいる同期とは結局圧倒的な力の差が開いてしまったが、今となってはそれは瑣末なことなのかもしれない。しかしながら、新卒2年間の代償は大きかったように思えてならない。
待つなんて時間の無駄
今はもうその会社は辞めて、違う会社で働いているが、今でも学生のアルバイトさんやインターン生が来るとこの話をするようにしている。
石の上にも3年というが、そんな常識に囚われるのではなく、自分の未来を作るのは自分しかいないのだから、この会社ミスったと思ったらすぐに行動を起こすべしと。待ってても誰も救いには来ない。自分の大切な時間をどう過ごすかは自分でコントローラーすべし。と、こんな話をさせてもらう。
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