フランスのクリーム
ドイツに住んでいた頃の話。その日は仲の良い友達数人がうちに遊びに来ていた。
みんなが揃ったところでその中の一人が、数日前に旅行したフランスのお土産を配ってくれた。そして、土産話や他愛無いおしゃべりに花が咲いた。
フランス語はドイツ語より美しい言葉だとか、フランスの物は何でも見た目が素敵だとか、お洒落だとか。それに比べてドイツって…みたいなお決まりのトーク。言いたい放題。
私はコーヒーを淹れ直したりお菓子を用意したりと途中席を外したので話を全部聞いていたわけではなかったけど終始リラックスし、楽しいひとときを過ごした。
で、みんなが帰った後、思い出したようにいただいたお土産を手に取った。
チューブに入ったクリーム。フランスの物ってデザインが洗練されてるよなぁと改めて感心しながらそれをバスルームの鏡の前に運んだ。
そして夜、シャワー後。早速クリームを塗ろうと、楽しみにチューブの蓋を開けて香りを嗅いだ。でも、あれっ?想像していたようなフランス製の素敵な香りがしない。
香料とか使っていない、ものすごくオーガニックな成分なのかな?…マロンの香り?…ってどんな香りだっけ?
とか思いながら腕にクリームを伸ばしてみる。色もなんだか茶色くて汚い色。そして何よりベタベタして恐ろしく伸びが悪い。一生懸命伸ばそうと増量して腕につけてみるが、さらにベッタベッタベッタだ!
…いただいた物だし、文句言いたくないけど…これは…ないわ。
戸惑いながらも夫にも試してもらおうと、
「何でマロンの香りを選んだんだろ?色も悪いし、とにかくベッタベタ…」
とか不満を口にしながら手渡した。するとクリームを手に取った夫から
「ねぇ…これ、マロンクリームって…食品だよね?」
と冷静に突っ込まれた。
!!!……我ながらバカ過ぎる。マロンクリームってパンに塗ったりお菓子に使うクリームだったのだ。本当に恥ずかしかった。必死に腕に塗りたくっていた自分が。
当時愛用していたロクシタンのハンドクリームと同じような形状とサイズだったから、何の疑いも持たず体に塗るクリームだと信じきっていた。食品だったとは!
後日、友達にお土産を腕に塗ったことを話して大笑いされたけど、これは今思い出してもなかなかの失態。
ちなみにマロンクリームはその後しっかりおいしく味わった。今ではカルディで売られているらしい。パッケージのデザインも当時と同じまま。間違えて腕に塗る人はいないよね…。
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