勇者ノベリットの冒険(抜粋版3)
『ク』というのがそれに最も近かった。
ノベリットが『そこ』を向いていたのは偶然に過ぎない。
世界を覆いつくしたのは『光の触手』であり、
邪悪な意思であり、
蠢きであり、
『死』そのものであることは、
『それ』に触れ、
見ただけで一目に、
圧倒的に、
有無を言わさず理解させきるだけの圧力と迫力があった。
『ク』とはノベリットが聞いた音のことで、
目の前で折れ腹を抱える『マナ』の姿で、
彼女の身体を貫く緑の閃光に前後して『ぷしゅっ』とほとばしる血煙の姿で、
それはきっと透明を極めた憎悪の姿で、圧倒的な絶望の具現で、発せられたノベリットそのひとの呟きでもあった。
前のめりに倒れるマナの横で、カナが絶叫していた。
そのカナの頭部を『ク』が襲った。
僅かなひとときに響いた『ク』という音が側頭部を斜めに貫き、ガクンと頭蓋を揺らしたかと思ったら、カナは膝からくたくたと崩れるように倒れた。
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