友人同士で起業することの注意点
こんにちは。司法書士の植田麻友(うえだまゆ)です。
本日は『起業』についてのお話です。
コロナ禍であっても新たな事業を行う方は少なくはありません。また、業界によっては売上を伸ばしていることもありますので、それに伴い法人化するお話も聞きます。
起業をする場合には、個人でスタートして法人化するケースが多いですが、令和5年からはインボイス制度もはじめるので今後流れも変わっていくかもしれませんね。(※インボイス制度については税理士に問い合わせをお願いいたします)
個人ではなく、株式会社として事業を行う場合には、『株主』や『役員(取締役)』を定める必要があります。それぞれ人数の下限はなく、1名以上であれば問題ありません。
では、友人同士で起業をして一緒に事業を行う場合に
● 株主として50%ずつ株式を保有する
● 2人ともが代表取締役として就任する
と考えたときにどんなことが起こり得るでしょうか。
2人が仲良く、同じビジョンをもって共同で経営を進めることができているうちは特に問題は発生しないでしょう。しかし、新たな株主(出資者)や取締役等が増えることなく、2人で経営を進めていく際に、もし2人の意見が対立すればどうすれば良いのでしょうか…
株主総会の決議には定足数がある
法律では株主総会の決議によって決めるべきことが定められています。法律に記載のある事項は、必ず株主総会の決議によらなければ効力がありません。例えば、定款変更。この定款変更には、商号の変更や目的(事業目的の変更)を含みます。
決議を行うときに、賛成の割合も非常に重要ですが、定足数も必要な要素です。定足数とは、決議を行うために必要な最低限の出席数です。つまり、この定足数を『過半数(半分より上)』と定めていた場合には、2人が対立し片方が出席しなければ総会自体を開催することができないのです。
特別決議 (とくべつけつぎ):定款変更や合併等
発行済株式総数の過半数を保有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上の賛成が必要となる決議のこと。 定款の変更、営業の譲渡、減資、会社の解散・合併契約の承認などが相当します。 これに対し、過半数が出席し、過半数の賛成で成立する決議を普通決議といいます。
この定足数は、決議の要件により異なりますし、定款によっても変更可能です。自社の定款を確認することから始めてみてもよいかもしれません。
単に決議できないだけではなく、そもそも開催できない恐れがあります。
取締役が2人の弊害
今回のように取締役が2名の場合ですが、前述のとおり株主総会で決議すべき事項は法律で定められています。それ以外でも、「取締役(会)の決議」によるものもありますが、もし取締役2名が対立していればその決議ももちろんできません。これは2名の場合はもちろん顕著ですが、取締役の人数が偶数の場合でも起こりうることです。
ちなみに、現在の会社法では取締役の任期は1年~10年の間で定めることが可能です。この任期は定款で自由に定めることが可能ですが、取締役の人数が多ければ多いほど、長すぎる任期はリスクとなります。会社法には「解任」という取締役を株主の意思で辞めさせることができる制度はありますが、仮に当該役員に役員報酬を支給していた場合に残任期間の役員報酬を請求される可能性があるためあまりおすすめできません。
新たな事業をはじめるときは、夢や理想にあふれ、目の前が輝いていることでしょう。もちろん、その気持ちはとても大切ですし前に進んでいくための原動力になります。そういった人たちにとって「揉めるかもしれないから株主や役員を見直した方が良い」は面倒くさい言葉だと思います。
司法書士は、果たして経営者なのかといわれると私のような個人事務所の人間は経営者というよりもただのプレイヤーだと思います。しかし、多くの企業の内情を見てきたという面では起業をされる方よりも多くのケースを知っています。専門家は決してあなたの夢を邪魔したいわけではないのです。その夢が実現する中で、ほころびとならぬよう事前に助言をしているだけなのです。
今後、友人との起業を考えている方がいれば是非専門家、司法書士に相談してみてください。
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