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麦本三歩と私
読書が好きだ。好きな本はいくつもあるけれど、私が精神安定剤として、心がしんどくなった時に読む本がある。三冊ある。一冊目は「星の王子さま」。言わずと知れた名作だ。じっくり考えて読むのもいいが、精神的に参っている時は何も考えず文字を辿るだけでいい。どんな時でも読める本、といったところ。二冊目は「西の魔女が死んだ」こちらも有名な一冊。友人が大好きな本でもあり、その友人の勧めで読んでからは、何度も読み返している。本を読むだけで自然に囲まれた魔女の生活に近づくことが出来る。
そして三冊目が、「麦本三歩の好きなもの」である。作者は住野よるさん。一時期話題になったことで手に取った一冊。先日、第二集も出ていると知り、早速購入した。やっぱりこの本が好きだ。
三歩とは自分に似た部分があると思っている。本が好きだったり、歩くのが好きだったり、食べることが原動力になったりする部分だ。この本を読めば、私もこうやって気分転換すればいいのか、と思う。簡単な事だけど、疲れている時は行動に移すことさえ辛い。だるい。うざい。そんな時、この本に背中を押してもらう。そんな存在である。
さて、この麦本三歩はおっちょこちょいでミスさえまるっと愛されるような人間だ。独り言も多い。頭の中では思考をずっと巡らせている。似ているとはいえ、私はこれほど考えて、独りごちて、という生活はしていない。さすがに。三歩よりしっかり者だと心の奥底で思っていた。
しかし、「麦本三歩だ」と思わざるを得ない出来事があった。
その日、私は、コンタクトの処方箋を出してもらうため、慣れない都会の眼科へ行くことにした。ビルに圧倒されながらフラフラとどうにか辿り着く。諸々の手続きを終え、診察をしてもらうとどうやら、コンタクトの度数がもう少し弱くても問題ないとのこと。試しに着けてみて、良さそうだったら、新しい度数の処方箋を出して貰えることになった。
いつも使っている薄いレンズが無いため、違和感のあるレンズを着けることになった。着けた。
ちょっと痛い。泣いた。
度数にはなんら問題ない、むしろ見やすいくらいであった。しかし、慣れないレンズはやっぱり違和感があった。どれどれと、様子を見にきた看護師さんに、レンズが違うから違和感はあるが度数は問題ない、と伝えようとした。
「いつものさあ、レンズじゃないので…」
友達だろうか。さあって。先輩にもきいたことない大口を今日初めて会った看護師さんに叩いてしまった。
もちろん看護師さんはその道のプロですから。そんなことで動揺も怒りもせず、「またしばらくしたら来ますねー。遠いとこ見ててください。」と言って出ていったが、私の脳内は完全に麦本三歩であった。
その後も滞りなく全てを終え、処方箋の入ったカバンを抱きながら、某コンビニのハムサンドイッチを食べた。うまい。食べ終わってnote書いているなう、である。
まさか私が存在しないであろう人間と似たミスをするあたり、やっぱり似ているのだ。私と麦本三歩は。
今日は食パンを買って帰ろう。明日の朝はピザトーストだ。
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