廃番になったシャープペンシル『Rolly』の話

 皆さんは思い入れのある文房具を持っている、もしくは持っていただろうか?私は願掛けをするタイプなので、高校受験の願書は中学の恩師がくれたボールペンで記入したし、就職してからは大学研究室の先生がくれたボールペンで戦った。思い入れまくりで、先生方もドン引きであろう。
 そんな私にとって一番の相棒ともいうべきシャープペンシル(以下シャーペン)、ぺんてるのRolly廃番になっていたことに最近気づいた。5~10本入りなら今でもわずかに出回っているようだ。

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 私とRollyとの出会いは高校生くらいのとき(歳がばれるのでぼかしてます)、よくある予備校のチラシのおまけとしてくっついてきた。元々鉛筆の持ち方が正しくないために、使い勝手のいいシャーペンを見つけるのに苦慮していた私にとって、これは奇跡のような存在だった
 ここでRollyの特徴を整理したいと思う。

Rollyの特徴

① 絶妙なくびれグリップ
 グリップのくびれがハマるひとにはハマる!少なくとも私の持ち方にはクリティカルヒットでした。ちなみにグリップはドクターグリップ(パイロット)より硬めなので、アルファゲル(三菱)などの柔らかめが好みの人には向かない。ボールペンにちょいと巻いてあるものと同じような素材だと思われる。

② 残芯3.5mmという経済性
 芯が終わりに近づくと、芯がクルクル回転してうまく書けなかったり、残った芯を引き出してその長さに悲しくなったりすることがある。しかしRollyは残芯3.5mmまで書ききることができる。これによって、教室の床に残芯を捨てる罪悪感が減ったり(よい子はゴミ箱に捨てましょう!)、替え芯を買う頻度が減ったりした。なぜ残芯を短くできたのか、以下のURLをご覧いただきたい。

③ シンプルで軽い
 ドクターグリップブームにより、低重心シャーペンが注目されるようになって、私も使っていた時期があった。だが、それは正しい持ち方かつ重心付近を軸として動かすような人にとって使いやすいのであって、持ち方の異なる自分に当てはまるわけではない。私はRollyに出会ってから低重心を使わなくなった。Rollyは軽いので筆記スタイルを選ばない。寝転がって書いたって、それを阻害する要素は……重力くらい?


 Rollyと出会って長年のシャーペン選び戦争に終止符を打った私は、すぐさまスペアを購入し、それで高校~大学の約10年間を乗り切った。文化祭の企画も、漫画研究部の執筆も、眠気と戦ったテスト勉強も、すべてRollyが支えてくれた。しかし、別れはすぐそこまで迫っていた。

Rollyの寿命、そして別れ

 社会人として活動し始めると、シャープペンの使用頻度は減る。書き直せる筆記用具は厳禁の書類があるためだ。調剤薬局の薬剤師も例に漏れず、シャーペンの出番は一部を除きほとんどない(処方箋は有印私文書のため、どうしてもメモする必要がある場合は必ずシャーペンや鉛筆になり、最後に消す必要がある)。Rollyと触れ合うのは、帰宅後にお絵描きをするくらいだった。

 私が鬱病を患い絵を描かなくなってからは、Rollyの存在は脳内から消えていた。思い出したように絵を描きたくなったとき、その手にあるシャーペンは何でもよかった。気を紛らわすという条件さえ満たせれば、描き心地は考えていなかったのだ。

 気づいたときには、Rollyのグリップはベタベタになっていた。寿命である。長年開けることのなかった筆箱の中で、ひっそりと亡くなっていた。

 私は10年以上連れ添ったRollyと別れた。まだ売っているかもしれないと思い文房具屋を巡ったが、取り扱いはなくなっていた。

 あれからRollyに匹敵する筆記用具には出会えていない。いっそのことRolly5本入りでも買えばいいのかもしれないが、そうしないのは在庫がありすぎても困る気持ちだけでなく、新しい出会いを常に求めているからなのかもしれない。簡単に言えば、文房具が好きなのである

 最近は英語の勉強に.e-sharp(ぺんてる)を使用している。これも同時期に出たシャーペンで、Rolly同様に残芯3.5mmのエコな奴である。使い心地はRollyに及ばないけれど。
 緊急事態宣言解除により人の増え始めた街の文房具屋で、久々に新たな仲間を迎えることにした。現在のシャーペン業界は『クルトガ』と『折れない』が席巻しているが、この波がどんなものなのか乗ってみたくなったのである。

Rollyよ、長い間ありがとう!
そして新たな出会いよ!待ってます!!(切実




 ん?Rollyはボールペンもあるんだからずっと触ってなかったことはないだろうって?
 残念だけどボールペンはジェットストリーム(三菱)派なんだ…筆記抵抗って大事だよね

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