見出し画像

女神様が笑う

一日中キッチンにいた。美味しい物を食べたい一心で。これでもかと貪欲に。ひたすらに。朝も昼も夜も永遠に、作り続けた。お馴染みの大好きなさめない街の喫茶店のレシピを作りたいという気持ちが、買った当初から半端なく、ありあまる時間の全てを費やして今日、やってやった。午後のために午前は買い出しへ。今日は何故か、ぱっと起きられた。7時半すぎくらいだったかな。あんなに起きることを拒んでいたのに。私の中のハクロさんが、きっとたくさん遊んでくれたのだろう。空想のおもちゃ箱をひっくり返したみたいな あの拒めない世界で。ページは真ん中よりちょっと手前、スタッフドアップルの回から最後まで読み進める。コーヒーを入れて、合間にくぴっと飲みながら、おいしそうなお菓子を作り、好きな音楽しかかからない。

ここはまるで夢の世界だ。
好きなものを詰め込むだけなら、誰にだってできる。

眠りに対してなんだかここ数年であまりに臆病になってしまったような気がする。
作業をしていたら、よく子どもの頃母とドーナツやらケーキやら一緒に作っていたことを思い出した。焼き上がる頃には夕方で、夕ごはんの時間もそれなりに近くて、でも私はこんがり茶色く焼けたちょっと歪なドーナツをお構いなしにぱくぱくと食べていたっけ。お菓子を作った後にご飯を作るの大変だったろうな、とか色々考え始めたら涙が出てきて困ってしまった。寂しいのは仕方ない。会いたいのも仕方ない。家族だもの。スプーンへの抵抗は気づけばなくなっていて、練り上げられたクリームチーズは心みたく白くて柔らかい。
いつまでも、ルテティアのようなところにいられたらよかっただろうか。わからないけれど、今はちゃんと話したい。母に連絡を入れて、大丈夫、きっとうまくいくよとお風呂の中で何十回も唱えた。

スタッフドアップルチーズケーキは、まるごとりんごを器にしたチーズケーキなんだけど、材料もシンプルなわりにめちゃくちゃに美味しい。今度また気が向いたら別のレシピも作ってみよう。アニメ化してもいいのにな、なんて思いながら可愛らしい絵の最終話を読み終えて、またちょっぴり泣いてしまう。漫画が大好きなことを大いに再認識できた一年だな、今年は。嬉しい。気になるスツールの行方を頭の片隅に置いて、BEASTERS全巻をポチる。

働いてるときは働くなんてもうばかみたいだと思っていたのに、働かないと働かないなんてどういうことだと思う。自分自身が資本なら、本当は何も怖らがらなくていいはずだ。流れに身をまかせて。悩んでる時も実はうまく見えてないだけで進む過程なんだって、教えてくれる人もいるのだから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?