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『いつからか失われた音のことを』


いつからか失われた音のことを、思い出した
鍵をかけた
引き出しの奥に、しまっていた
音色、今ふたたび
聴くことは叶わないけれど

ふたりの
視線が交わると
それは美しい、音が鳴った
肩が触れ合うと
それは美しい、音が鳴った

いつからか失われた音のことを、思い出しても
今ふたたび
奏でることは、叶わないけれど

ふたりで
手を取り合うと
それは美しい、音が鳴った



その音は
いつからか失われて、

ふたりで
頬を寄せ合うと
それは美しい、音が鳴った
ふたりで
吐息を重ねると
それは美しい、音が鳴ったのに

その音はいつからか
失われて、
今、ふたたび
聴くことも奏でることも
わたしには、叶わないけれど



『いつからか失われた音のことを』



いつからか失われたその音のことを
聴くことも、奏でることも
今のわたしは、もう
望むことは、しないけれど











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