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【コラム】FAS入社のススメ/どんな人達におすすめなのか?

FASで働いておきながら、来る日も来る日もTwitterでもNoteでも散々FASのネガキャンばかりやっており、FASに対して申し訳ない気持ちがそろそろ1ミリくらいは湧いてきた。

自分が転職活動をしていた当時はFASに対して多少の憧れやそこで働く事のメリットを見出していたのは確かであるし、現に今そこで働いている目から見て悪い所があれば良い所もあるのは確かなのである。

なので、FASの良い所を踏まえつつ、ひとつここは個人的に思うFASで働く事がお勧めできる人・できない人のタイプを具体的にまとめてみたいと思う。

なお、FAをやる部門で働く事を想定して記載していくのでその点は認識頂きたい。

おすすめできる人(向いている人)

監査法人の会計士

FAS(特にBig 4 FAS)は会計士のセカンドキャリアの場である、という指摘がされて久しいがその通りである。

監査法人勤務の会計士についてはFASへの入社がおすすめできるし、彼らは最もFASが向いている人種だろう。
会社のカルチャーも監査法人・会計士カルチャーであり、同じように監査法人を辞めてきた会計士がたくさんいるので馴染みやすい。

会計目的のバリュエーションを担当する部門であれば監査法人のバックで、監査先が専門家から取得した減損テストやPPAといった会計目的バリュエーションレポートを検証する業務もあり、監査法人と協働する事もある。
監査法人の動き方を知っている点や減損テストやPPAについて多少の馴染みがある点もポジティブである。

こういう所では監査法人で勤務した経験は活きるであろう。

FDDの部門であればメンバーは会計士ばかりであり、かつ監査法人経験者も他部門に比べて多いのですんなりと打ち解けられるだろうし、業務内容にも抵抗なく入っていけると思う。

監査に疲れた会計士にとってはFASでの非監査業務は新鮮かつ面白いものなのではなかろうか。

自身の周りでも、FASを気に入っていたり愛着を持っているのは大体監査法人出身の会計士の人間である。

支店での法人営業から脱出したい銀行員

ほんのり財務諸表が見れて(財務諸表が読めるとは言っていない。銀行員が正しく財務諸表を読めると自分は思っていない)、そこそこの社会的理不尽耐性があり、顧客折衝やビジネスマナーが備わった銀行員は一定程度FASと親和性があると思っている。

また、支店勤務の銀行員が持ちがちなニーズNo.1である、仕事を通じてより専門性を持ちたい、というニーズにFASはよく合致した職場であると考えられる。
専門性とは何かは今言及しないが、支店で多種多様なソリューションを広く浅く扱うよりはFAS業務の範囲は狭く深い、という意味合いで上記については捉えてもらえればと思う。

社内異動で希望する部署へ異動できる望みが薄い、異動できるか不確実性があるしいつ異動できるかも不透明、希望部署に異動できてもその部署からもいずれジョブローテで出ていく事になる…等々
銀行員には銀行員として生き続ける覚悟を決めなければキャリアで迷う場面が多く、その際にもしM&Aに興味があればFASは一つの選択肢になり得ると思う。

FASは銀行に比べて個人の関係はフラットで、職場の風通しも常に良いし、銀行の軍隊体育会系的な理不尽さも無いので、銀行出身者は比較的FASを気に入っている事が多い気がする。

真にM&Aがやりたければ投資銀行に行くのが最良というのが自分の意見だが、銀行員が投資銀行(特にM&Aアドバイザリー部狙い撃ちで)に転職するのは中々大変そうだし、メガバンクの社内異動で出向するのも狭き門と認識している。
その意味でFAS転職には十分採用の可能性があり、ある種のお手軽感はあるかと思われる。

事業会社の財務・経理マン

これは手放しでおすすめできるという訳ではないかもしれないが、財務・経理業務に飽きてしまい、何となくM&Aとかに興味があるが投資銀行に転職できるほどでは無い、という事業会社の人にもFASはおすすめかもしれない。

と、言うのもFASを辞めて事業会社の財務・経理ポジションに転職していく人というのが常に一定数おり、彼らが何を求めて事業会社に転職していくのかは分からないが、何かそれだけの魅力があるのならわざわざ事業会社からFASに転職する意味もあんまり無いのでは、と思うからである。

総じて、監査法人の会計士かM&Aに興味があるが投資銀行に入社できるほどのスペックではない人にはおすすめかと思う。

おすすめできない人(向いていない人)

投資銀行のM&Aアドバイザリー部のバンカー

投資銀行でFA業務を覚えた方については、FASのFA業務について何となく違和感を覚える事が多いと思われる。

違和感の正体については以下の記事で自分なりに考察しているので、もし気になった方がいれば見てほしい。

また、投資銀行と比較してFASのフィーが安いという事は彼らのモチベーションを削ぐ大きな要因の1つだろう。

フィーに関してはジュニアな立場しか経験していない人であれば、案件のフィー水準などどうでも良い、自分のクレデンシャルのためにもその案件の規模やクライアント・対象会社のネームが良いことが優先、という人もたまにいる。

しかしながら、ゆくゆく自分たちのサラリーや諸々の待遇に関わるフィーが安くても問題ないという考え方を自分は全くもって理解できない。
クレデンシャルも勿論重要なのだが、それよりも大事なのは金であり、花より団子といったところか。

自分はフィーが安い案件ほどやる気が無くなるし、そのような人は収益責任を負う立場であるVPやマネージャーといったタイトルより下であってもそこそこいると思う。

上述したFA業務の違いから来る違和感と、投資銀行対比でのフィーの安さから来るモチベーションの低下により、投資銀行出身者はFASに馴染みづらさを感じてしまうだろう、というのが私見である。

これらの理由から投資銀行の特にM&Aアドバイザリー部出身の方には個人的にあまり入社をおすすめできない。
カルチャー的にも中々監査法人・会計士カルチャーに馴染むのは苦労するだろう。

自分の場合は投資銀行経験がありFASに入社しているが、ジュニアバンカーとしての業務しか経験していなかった事とM&A経験に乏しかった事から、入社当初に違和感は感じたものの月日と共に順応はして行けた。

しかし、FASに対してあんまり良い職場だと思っていないあたり、やはり自分も馴染めないアウトサイダーの1人なのかもしれない。

新卒の学生

これまでも新卒FAS入社は悪手である事を度々指摘している通り、新卒は特にFAS入社をおすすめしない。以下の記事に私見を記載している。

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