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【コラム】FASのフィーは何故安い?

FASのFAフィー水準は投資銀行対比ですこぶる安い。
案件にもよるが、自分が把握しているケースでは投資銀行対比で1/5~1/10くらいのフィーとなっている。
ここまでフィーが安いと連日深夜まで働いていてやる気が無くなってくるものである。

相手方が外資系投資銀行をFAとして起用している場合など、比較してしまうとその気持ちたるや暗澹たるものになる。

「○○(某外資系投資銀行)はフィー▲億円以上じゃないと案件受けないからな・・・」
「だとするとこの案件、ウチは○○の1/10のフィーしかもらってないのかよ・・・パートナーふざけんなよ」

等という会話がたまに起きる。

勿論単にダンピングをしているわけではなく、FASのフィーが投資銀行対比で安い事にはいくつか理由がある。備忘も兼ねて私見を書いていこうと思う。


コスト

大きく2種類のコストが考えられるが、いずれも投資銀行よりFASの方が低く、コストを賄うための売上をその分下げても問題ない、という発想に繋がるかと思う。

①ミドル・バックオフィスのコスト全般

当然ながら投資銀行は金融業であるため、M&Aアドバイザリー以外の機能も数多く抱えている。

それらには当局対応からマーケットに接続されているシステム・インフラの維持など、多額のコストが定常的にかかる。無論ミドルバック機能の維持運用に従事する従業員も相応の人数となる。
(同様にプロフィットセンターもM&Aアドバイザリー機能以外に色々とある事も忘れてはならないが)

一方でFASはというとこれらのミドルバック機能は投資銀行と比較して圧倒的に軽く、部署の人数も少ない。
このコストが軽い分フィーを安くしてもファームとして成立する側面があると個人的には思う。

②フロントの人件費

当然ながら投資銀行のバンカーに比べてFASの方が給料は低い。当然フィーが低くても給料が払えるという理屈になる。

来たRFPを捌いているだけなので価格提案力・交渉力が無い

FASは基本的に自ら営業を行う事があまり無い。

投資銀行のように役割としてオリジネーションを担うカバレッジがいるわけでは無く、日々エグゼキューションで忙しいメンバー営業活動も行っており、大規模なリソースが割けない。

結果的にクライアントに対して積極的なオリジネーション活動は行われず、クライアントから受け取ったRFPを捌いているだけなのが日常風景である。

業者側から案件を仕掛けて提案している訳ではないので、基本クライアント側の提示に寄ったフィー水準になるし、当然だがそんな状態なので業者側のViewを含む独自の提案による付加価値は存在しないし、Scope of workもFAがコントロールする余地があまり無い。

フィーの取り方

FASで働き始めてから、FA案件ながら割安なリテーナーフィー"のみ"の報酬体系の案件に度々遭遇している。

これはクライアント側で案件の確度がそれなりにある状態のRFPを受け取るからこそ発生しているのだと思う。
案件の実現が見えているのでわざわざ高い成功報酬にする必要は無いでしょ、というのがクライアント側から見た景色である。

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