シェア
ブラホックが外れた。 ブラインドの隙間から差し込む朝日を背に浴びながら、オフィスの真ん中でうぐぅとか細く声を上げる。ちょうど開放された部分に太陽の熱が触れる。不快だ。外れた瞬間には気づかなかったくせに、いざ外れているとわかった途端不快度数が急激に上がる。 男のそれになぞらえるならば、パイポジとでも言おうか。とにかくそれに匹敵するほど、ホックが外れているかいないかで気分の差は歴然としている。時刻はまだ朝の10時。せっかくの冬の晴れ間だというのに、今日一日がホックひとつ
今日も相変わらずの天気だった。 窓に力なく跡をつけてゆくそれは、どこかむなしく、切なげに目に映る。 空が泣いている。もっと言うならば、誰にも気づかれないように、教室の隅っこで壁と向かい合いながらすすり泣く少女のようであった。 空は、泣いていた。 「おはよう」 今日も彼女は、サラサラの黒髪をなびかせて隣の席に着く。そのさわやかな笑顔も束の間、彼女の視線は自身の机の上に向けられる。 「……なんなんだろ、おとといからずっと」 いくらどけてもまた乗ってる、と彼女は