【小説】熱のたからばこ(1/5)
みんなそうだ、みんなそう。「こんなに自分のことを受け入れてくれる人はいなかった」って、みんな言う。孵ったばかりの雛が最初に目にした相手じゃないんだから、と思う。その証拠に、彼らはそのうち私が特別な存在でもなんでもないことに気づき、親鳥のようになんでも許してくれる私に甘え、つけ上がり、そして跡を濁さず消えていく。彼女も、その中の一人だった。
彼女が亡くなったと知らされた夜、私は一人ベッドの上で自身を慰めていた。電話の向こうの声は彼女の夫だと言った。知らない、人だった。
「