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お盆のある月

父が亡くなって10年目の元日、父の夢を見た。
はっとして調べたら10年目だった。父が亡くなってから田舎にはずっと行ってなかったが、その年はお盆に供養をしに行こうと思った。  

父の故郷新潟に、写真が好きだった父のアルバムを何冊か持っていって叔母やいとこたちに見せた。できることはそれくらいしか思いつかなかった。親戚たちも父がよく写真を撮ってたねぇと目尻を下げながらアルバムのページをめくってくれた。

当時住んでいた隣町の盆踊り、父が行ったであろう知らぬ土地の花や実、新潟は瓢湖の白鳥、日本海の荒波、叔父叔母いとこたちの若い頃のスナップ…。
 
父は生前何を考えて写真を撮っていたんだろう。
遺されたアルバムを見て初めて父のでかけた行き先を知り、口数が少なく、あまり家にいなかった父の足跡を思った。


2020弘おじさんはがき

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父は生前親戚に迷惑をかけてきたので、なかなか顔を見せに行くのは勇気のいることで、その後はお盆に帰る代わりに暑中見舞いを書き送っている。
叔父から返信の絵葉書が届く。
「今年もお墓参りしてきました。ゆみちゃんたちの分もね。」
葉書いっぱいに書かれた叔父の温かい心に触れ、守られたような気持ちになる。

またいつかお会いしたい。
親戚たちの顔を思い浮かべながら今年も8月が終わる。

#8月31日の夜に

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