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「殺し屋」としてのクラヴィス/『虐殺器官』読解

 クラヴィス・シェパードは何者か。
『虐殺器官』を読んだなら、一見して兵士に不向きとも思えるかも知れない。しかし客観的に見るならば、クラヴィスは非常に優秀な軍人である。

 クラヴィスの自己認識と見られ方とは、作中ひどく異なっている。
 大前提として、内心が第三者に分かる事はおよそ無い。作中の大半を占める内省や知識披露は、ほとんど他者に伝わっていないのだ。
 その上で、明らかに伝わっている事――すなわち、クラヴィスの行動や台詞に注目したなら、一読しての印象とは違った実像が見えてくる。

 まずは『虐殺器官』開幕時、クラヴィスのプロフィールを見てみよう。

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