耳かきリフレでお姉さんに骨抜きにされた話②~入店編~

新しい朝が来た。
耳かきリフレに行く朝だ。

私は朝から緊張していた。歯磨きを2回行った。いつもより時間をかけて化粧をした。目が少しでも大きくなりますように、と願いながらアイラインを引き、マスクに隠れて見えない唇にもしっかりと紅を差す。

…まぁ、そんなことをしたって付け焼刃なのだが。

その日は午前いっぱい大学で講義を受けていたが、もう頭の中は浴衣と、膝枕と、耳かきでいっぱいだった。正直言ってこの日の講義内容はあまり覚えていない。教授、ごめんなさい。

あぁっ、ずいぶん汗をかいているような気がするが、このまま店に行ってもいいかしら…。


店はとあるビルの地下にあった。
15分前だが、入店してもいいのだろうか。雨だれで裾の濡れた服は嫌がられないだろうか。うーん。全部が初めてで、当たり前のことが分からない。ひたすら検索した動画や体験談を思い描きつつ、できるかぎりスタイリッシュな客を装う。(結局店の外で5分程待ってから入店する)


階下に降りて扉を開けば、そこは店内だった。地底は薄暗く、和風のしつらえで甘いお香の香りが鼻をくすぐる。ここには雨音すら届かない。ただ、お姉さんの膝枕と耳かきの音だけを楽しむためにあるような空間だった。

「いらっしゃいませ」


そういって出迎えてくれたのは電話の主だと思わしき翁。白髪で優し気な風貌だ。私は間違えずにちゃんと電話をかけられていたらしい。よかったよかった。

必要事項を紙に記入し、案内されたのは3畳ほどの狭い個室で、布団の敷かれた空間だ。座ったと同時にお姉さんが入室。


ええい、ここまで来たら腹をくくるしか…。


「こんにちは~」


あぁあ、かわいい!!!声が良い!
この日担当してくださったお姉さんは、色白でおっとりした雰囲気のハヅキさん(仮名)。紫の花が散った紺の着物が似合っていた事だけは覚えている、が、恥ずかしくてお顔が見れない。

「早速ですが、膝枕…」

「アッ、ハハハhhhハイ!エヘヘ…」


スタイリッシュの心がけはどこへやら。ハヅキさんの前では、私は嘘がつけない挙動不審の自分だった。本番じゃあ練習以上の力が出ないって、本当なんだなぁ。 まつを。

すみません、失礼します…

うわあ!



やわらかい!!!!テンピュールもびっくり!グリフィンドールに500000000点!!!




こんな膝枕、親にもされたことないのに…。


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