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富がなんぼのもんじゃい


 昔から、私は「人ができるアレができない」ということに、人一倍敏感な子供だった。受からなかった車校の効果測定。自分一人だけの追試。人の目を見て話すこと。

 できていないことを人から指摘される度に笑ってごまかし、こみ上げる目の水をトイレで飲み込んだ。今は昔ほどひどくない。感情を受け流す術もいくつか覚えた。だけど、ふとしたことで子供の私が身体の外へ逃げ出して、収集がつかなくなる。

一年、一年と年齢は律儀に更新されるのに、未だ体内は、過去の私でひしめきあっている。

 先日、友人達と「月給はいくらもらっているのか」という話になり、私自身の月給が平均を大きく割っていることを知った。世間一般から見たら決して高い金額ではないだろうことは予想していたが。「家賃○○円はないと厳しいよ~」と友人達が笑う金額は、私には支払えない。落ち込んでいたら、2人にひどく気を使わせてしまった。私の食べたプリンセットは、割り勘の中でさり気なく、200円安くなっていた。 

今まで冷戦状態で姉と暮らしてきた2DK。

来年の3月で引き払う可能性が高く、1人で住める部屋を探すことになる。
姉はほとんど休みをもらえなかったブラック企業に辞表を提出した。「そんなところに通って何になる」と嫌悪していたメンタルクリニックに通院しだした。長い道のりだった。説得に4年かかっている。同居しながら未だにコンビニ飯か納豆ばかり食べているが、顔色は如実に良くなっている。振り返ると、周辺の景色も、私自身も随分変わった。

お金をたくさん稼ぐことはいいこと。ものすごく。
それは知ってる。だけど、声を出して言いたい。

目に見えへんもんが大事って、サン・テグジュペリが言うてますけど!!!


いくら月収がもらえていようと、高級車を乗り回そうと、心が豊かでないと何にも始まらない。精神が健康でなければ、人は暗い道に簡単に逸れていく。死に惹かれれば、彼らは二度と戻ってこない。

私達はそういう著名人を沢山見たじゃないか。

私のあほあほあほ。椎名林檎の「ありあまる富」を5万回聞き直しなさい。
サンボマスターの「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」をこくごノートに書き写しなさい。あっ、こら!まめだいふく君。畳で爪を研いではいけません。

私は、高給取りではない。
だから、特売の食材に小躍りし、微々たる節約の末にたまった貯金にニヤける。今晩は餃子の皮を使った、あつあつのラザニア。明日のお弁当は、多めに作ったミートソースでスパゲティ。刈り取った豆苗は必ず栽培。贅沢はたまに、ブランド品はもはや目に入らない。

今の私はそういうのが好きだ。

なーんだ、工夫すれば、環境が変わっても楽しく生活できるんじゃないか。心配して損した。友人の価値観も素晴らしい、たぶん。だけど、あたしはあたしの価値観を愛している。

結婚、出産、子育て。

それがこれから私に訪れるとも、そうでなくとも、いつも戻ってくるのはここだ。よそはよそ、うちはうち。人には人の乳酸菌。私には私の人生設計。

今日は9時から、マツコの知らない世界で純喫茶特集!それまでにお風呂へ入らなくっちゃ。

それでは、おやすみなさい。


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