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フェールセーフに入るのは失敗?

H3ロケットの打ち上げが直前で中止になってしまいました。この時のJAXA記者会見で共同通信社の記者の発言が波紋を読んでいます。
記者曰く、中止ではなくて「失敗」だと決めつけたいようだ。(しかも最後捨て台詞的な発言もしておりこの点も人としていかがなものかと思った)
JAXA側の説明のとおり、さまざまな不具合が発生した際に安全サイドにシステムを動かす「フェールセーフ」が当初の設計通りに作動し、安全側にシステムを移行したということで「中止」とみるのが妥当と思う。
なんとなく風邪っぽいから旅行いくのやめるのを中止というのも同じで、風邪が悪化したら困るからという「フェールセーフ」的考え方に基づいて、コントロール下で「中止」したわけで。
自動車などもこの「フェールセーフ」の考え方が用いられています。故障や不具合はゼロにできないし、運転する人間が間違った操作をするかもしれない。それらの時に安全側になるようにというのがこの考え方。(ただしなんでも100%安全側にできるものではない)例えば出先で頭痛がでたらやだから頭痛薬を持っていくというのも同じですね。頭痛薬忘れたり落としちゃったりして頭痛なったら「失敗したー!」でしょう。
また1つのフェールセーフがうまく作動しないことも想定して、さらに別のフェールセーフを設けると言うのも比較的よく行われています。

身近なところのフェールセーフ

自転車

自転車のペダル、左右ともペダルがついているアーム状の部品にネジ込まれて固定されていますが、左側は一般的に広く使われる右に回すと締まるネジではなく、逆に左に回すと締まるネジになっています。これは万一ネジが緩み始めたとしても漕いでいるときにペダルの回転で緩まないようにと言う配慮です。

自動車

自動車のフェールセーフはたくさんありますが、一例ではヒューズです。電線がどこかに挟まってしまったりでショートした際にまずヒューズが切れて電気が流れ続けないようにして火災を防止しています。もしもヒューズがなかったら電気が流れ続けて電線が発熱・発煙して周りの部品を巻き込んで車両火災になるでしょう。
また電線自体の太さとヒューズのサイズも考えられていて、電線が発熱発煙するよりも先にヒューズが切れるようになっています。これももしも逆だと車両火災になってしまうからですね。なのでヒューズは切れた時になんでもいいから入れとけばは実は非常に危険なのです。
他、アクセサリー電源を取るのにバッテリーから直接取るのも安全側に配慮が必要です。ヒューズを入れるのはもちろんですが、バッテリーからヒューズの間をなるべく短くすることと、その間の電線を裸のままにせず外側に固い保護管をつけたりというのもフェールセーフの考え方です。

航空機

航空機はさらにフェールセーフが厳しい世界です。故障して墜落は避けなくてはいけないのでシステムによっては二重化、三重化などして機能が失われないような仕組みもさまざま組み込まれています。油圧系統や電源など重要部位はたいていこう言う仕組みになっています。

家のブレーカーは自動車のと同じ考え方です。他、水道のレバータイプの水栓は今は上に上げると水が出て下に下げると水が止まるようになっています。これはかつて阪神大震災の際にレバーを下げると水が出るタイプが多用されていたため、水がでっぱなしの箇所が多くなり水道の復旧に時間がかかったことを教訓としたフェールセーフです。万一物がレバーに落ちても水が止まる方向にしてあるのです。

じゃあ何が「失敗」なのか

想定外のフェールセーフをくぐり抜けてしまった事象でしょう。結果が安全側かどうかによらず、コントロール下に無い状態となることが失敗と考えるのが妥当だと思います。
例えば街中に獰猛な猪が現れて色々な通りそうなところに檻を置いたり高い柵を回らしたけどそれをピョーンと飛び越えて街中に行方をくらましたというとこりゃ捕獲失敗となるんでしょうね。

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