快楽なしの初恋

男を本気で好きになったのは、小学校五年生の時。同じクラスのマイクだった。野球少年で細身で端整な顔立ち。野球やってるのに色白で、今思うと、彫刻みたいな雰囲気だった。
だけどマイクは、なかなかの女たらしだった。私以外にもあと2人にラブレターを送り、好きだよ、と、愛の言葉を囁いていた。
当時、『ホットロード』というヤンキーの恋愛マンガが流行っており、物語の中で、主人公が腕に彼の名前を彫るというシーンがあった。私も手首にマイクの名前を彫った。人を好きになるっていう事が、痛みを伴い、永遠に続くものなんだって、どこかで淡く儚く感じていた。結局のところ、私は本命ちゃんではなく、2番手だった。それでも好き、なぁんて、当時は健気に思っていた。
だけど、不思議とマイクはオナニーのオカズにはならなかった。話してはいたが、肌に触れることはなかったので、きっと、私の中のオナニーのオカズになるという事は、体温や息使い、匂いや感触が重要なのだと後になってから気づいた。その体験から、恋愛する事と、性欲を満たす事とは、真逆にあるように当時の私は感じていたのだろうと推測できる。
では、当時の私のオカズとは何だったか?
父が隠し持っていたAVだった。題名は『pussy talk』なんとも不思議なことに、私が今感じているように、ヴァギナが語るというわけのわからん内容だった。
ある女性が、思いのまま様々なシチュエーションで、男とヤル内容だった。そして、ヴァギナが自身が「気持ちいい〜〜!!」と感嘆の喘ぎ声を出すという、今考えても笑ってしまう内容だった。
しかし、私は、その映画の中の女性がとても羨ましかった。なぜなら、自分には今、そうなれる要素が全くないからだった。多少、胸が膨らみ、陰毛が生え始め、初潮を迎えた程度の熟し方しかしていない私に、映画の中のような快感は得られないと自負していたからだった。
そして、それをオカズにオナニーする日々が続いていった。

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