いい子から反社会的少女へ

中学生になり、私はソフトボール部で活躍するようになった。彼氏もできた。学級委員もやった。勉強もそこそこできた。そして、モテた。明るくて友達も多くて、運動も勉強もできた私は、文字通りのいい子だった。
先輩からも後輩からも好かれて、休みは友達と遊んで楽しくやっていた。
タメの彼氏は、ジャックという子で、生まれつき片方の耳の穴が塞がっているという奇形を持ち合わせていた。しかし、ジャックは、どことなく大人っぽくてオシャレだった。細身の制服を着るようなセンスを持っていた。そして、ロックを聞いていた。そんなジャックは、真正面から私に好意を寄せてくれた。私はとっても幸せだった。
その一方で、年上のちょっとだけおませなお姉さん達とも遊ぶようになっていった。きっかけは、同じ部活にいたヘレンの存在だった。ヘレンは養護園から通っていた。親のいない子だったのだ。ヘレンは世間を斜めから見る子だったが、私にはかけがえのない友達だった。なぜなら、私の知らない世界を知っているからだった。その世界は、自由でキラキラしていた。髪を茶色くし、ロンタイを履き、夜、出歩きバイクに乗る。酒を飲んでタバコを吸う、シンナーを吸う、ケンカする…ヘレンから教えてもらった世界はすぐに私の世界へと変わって行った。
この変貌ぶりに、母は、ますます厳しくなっていった。当たり前だが、私を嫌な目で見ていた。だけど、なんとか受け入れようともしてくれていた。私の答えは、お母さんを悲しませたくないから家に帰らない、というものだった。
ジャックとの関係性も、変わり行く私により、終止符が打たれた。もっと魅力的な年上の男が周りに見えたからだった。でも、遊ぶほうが楽しかった。
当時、バンドブームの波が来ていて、ピアノをやっていた私は、すぐさまこのブームに飲み込まれバンドを組みドラムを叩いたのだった。それが案外、あっさり叩けたのだ。
ヤンキーでバンドマンという、ありそうでない取り合わせとなり、私は、晒を胸に巻きつけ、胸を潰してドラムを叩いていた。
その頃、「カッコイイ」と言われることが増えていった。女子から告られる事も少なくなかった。あれ?私って女好きだったっけ?と、ちょっと迷うほどにモテたのだった。その頃、真剣に胸を取りたいと思った。ドラムを叩く時に邪魔だ、という単純な理由に過ぎなかったが、自分の体が女として丸みを帯びて行く事が、気持ち悪い気さえした。父に相談もした。父の答えは「まぁもうちょっと待ってみな」だった。刺青も本気で入れたいと思ったので、また父に相談した。「まぁもうちょっと待ってみな」答えは同じだった。
父は、母とは対照的に、私の変貌ぶりを面白そうに見ていた。警察のお世話になった時だけ、引っ叩かれた。
私の中の女性性と、それを否定する性が、確実に私の中にあった。その頃だけ、不思議と私はオナニーから遠ざかっていた。

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