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特撮ヴィラン語り ~その196 ン・ダグバ・ゼバ~

いわゆるサイコキャラが一般的にドラマやアニメで出てきたのっていつからなんでしょうねそういや。今ではすっかりテンプレ化しちゃってるくらい。
無邪気に笑いながらゲーム感覚で人を殺す、頭のネジがぶっ飛んだタイプのキャラ。中でも定番なのがまだあどけなさを残した少年少女。見た目で油断させてえげつない手口の犯行を楽しむという。

平成仮面ライダー第1作の「仮面ライダークウガ」ではそもそも敵にあたる怪人集団:グロンギの目的自体が殺人ゲームだったんで、まあ基本的にサイコキャラしかいないんですよ。
でも一応段階に応じたルールみたいなのはあって、各ステージごとに設けられたノルマを達成して勝ち残った者には、圧倒的な戦闘力を持つグロンギの頂点と戦う資格が与えられるんです。

そのために殺される人間側からしたら随分なとばっちりですが

そんなグロンギの蛮行から人々を守るため、冒険家の青年:五代雄介がある遺跡で発掘されたベルトの力により変身したのがクウガ。
五代は人々の笑顔を大切に思う心優しい青年で、それ故に暴力を嫌い、クウガとして戦う自分自身にも常に苦悩を抱いていました。
しかし、ゲーム感覚で人々を襲うグロンギが相手ではそうも言ってられない。敵との相性に応じた姿に次々変身し、現代の技術との連携によりどんどん強くなっていくクウガによって、グロンギたちのゲームはどんどん参加者の数を減らしていきます。
すると、遂にグロンギの頂点に立つ者ーーダグバが動き出しました。封印から目覚めたダグバは、生き残っていたグロンギの同胞たちをたった一人で大虐殺。その勢いのままに街に現れ、一瞬で何百人もの人々を殺してしまいます。
ン・ダグバ・ゼバ。彼の持つ特殊能力はプラズマによる自然発火能力。手をかざすだけで猛烈な炎を呼び起こし、全てを焼き尽くしてもなお止まらない。

現場に駆けつけたクウガが目にしたのは、火の海の中で笑いながら立ち尽くす白い服の少年ーー少年は金の鎧を纏ったダグバ本来の姿に戻ると、果敢に挑んでくるクウガをも炎で包んで手玉に取り、圧倒的な力の差を見せつけます。
そのワンサイドゲームっぷりに、他でもないダグバ自身が辟易する始末。最後には敢えてトドメは刺さず「もっともっと強くなって、僕を笑顔にしてよ」とセリフを残して立ち去ります。

他人を傷つけ殺すことでこそ笑うことが出来る、絶対的な邪悪の存在。五代の求める「笑顔」とは相容れない最大の敵。
そんなダグバを相手に、遂に五代は決して変身してはいけないとされる禁断の究極形態:アルティメットフォームへの変身を決意します。アルティメットフォームの持つ力はダグバと同等。格闘能力だけでなく、プラズマによる自然発火能力も備わっています。

ようやく対等の相手が現れたことにダグバは笑いーー吹雪荒れ狂うある山奥にて、ダグバとクウガの一騎討ちが開始。
互いの自然発火能力の撃ち合いだけではケリがつかず、至近距離での正面からの殴り合いに。お互いにベルトに一撃が入り、変身が解けて人間の姿になってもなお殴り合いは止まらない。
大嫌いだった暴力に頼るしかない悲しみに泣きながら拳を振るう五代と、強敵と戦うのが楽しくて笑いが止まらないダグバ。血反吐で雪原を汚しながらの、

これが最終決戦でいいのかというくらい爽快感のない殴り合い

これが「クウガ」におけるラスボスです。
自然発火能力を身につけているのもそうですが、アルティメットフォームのクウガとダグバは白と黒という正反対のカラーリングながら非常によく似た姿をしていて、正義も悪も根っこは同じ暴力でしかないという「クウガ」の裏テーマを体現するデザインなんですよね。
それだけに、この悲壮感漂う最終決戦は今でも平成仮面ライダー屈指の名シーンとされています。

ちなみに、ダグバを演じたのは今や日本のミュージカルシーンになくてはならないトップ俳優の浦井健治さん。20年以上経っても当時の爽やかな笑顔は健在です。

いやこんなダグバが爽やかキャラとは全く思えませんけどねさすがに

matthew

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