#004 プロトタイプ設計時に要件を決めるための4つのW

PoCにより狙ったような効果が出せることがわかり、かつ方向性にGoが出た場合に、次に行うべきはプロトタイプの設計になります。PoCの段階ではそれほど注目がされていないこともあると思いますが、この段階になると予算が正式につき、プロジェクトチームが結成されることが一般的でしょう。当然、そういった「正規の仕事」になると、外野からの声が増えたりスタンドプレーに走りたがる人が出たり・・・とプロジェクトマネジメントの難易度が一気にあがります。

まずは提供価値(Value)を決めよう

新しい製品やサービスを作る場合、多くの場合は「社内でこれまでは違った仕事をしている」人たちが集められてくることでしょう。新しい製品/サービスを考える際には、これまでのしがらみや価値観を捨てて考えることが望ましい・・・といっても、実際にそのように割り切りをできる人間はほとんどいません。結果として、プロトタイプの要件リストには膨大な数の要望が並ぶことになります。

プロジェクトマネージャーの仕事はその要件に溺れることなく、「必要とされる要件」を取りまとめることです。とはいえ、溢れる要件が目の前にある要件から「必要とされるもの」を選び出すには、何かしらの基準が設定されている必要があります。その基準こそ、提供価値(Value)です。そしてこのValueを決めるためには、まずは以下の3つの質問に対する回答が明確になっている必要があります。

1. 誰が使うのか(Who)

Valueを検討する時に最初に考えるべきは、ユーザーは誰なのか?ということです。ここでいうユーザーというのは単に属性を記述すればいいというわけではなく、そのユーザー像を明確に描けるまで特徴を詳述する必要があります。マーケティングの世界では、詳細に描かれた対象を「ペルソナ」といいますが、製品開発でも同じように誰が使うのかを詳細に描きだすことが重要になります。
この誰が使うのか・・・ということの検討により、その対象となるユーザーが解決して欲しいこと(Pain Point: ペイン ポイント)をより想像しやすくなります。

2. いつどこで使うのか(When + Where)

対象となるユーザー像がある程度明確になったら、次はその製品をいつどこで使うのか・・・を想像してみることが必要です。ここで「いつ」と「どこで」を一緒にしたのは、サービスや製品を使う際には、ユーザーが置かれている環境や文脈が決定的に重要だからです。

例えばユーザーを「筋力がやや衰えてきたが、依然として働く必要のある高齢者」であると想定しましょう。高齢化社会の進展で、多くの企業が今後も高齢者向けの製品を企画すると思いますが、単に「働く高齢者」というだけでは条件を絞り切ることができません。

なぜなら、働くという単語ひとつでも、その労働内容が変われば必要となる要素も変わりますし、働いている最中に必要なものなのか、それとも通勤中なのか、あるいは家での休憩中なのかによっても必要となる要素は変わってくるでしょう。単に高齢者とくくればいいわけではなく、どういったタイミングや条件で使うのかを考えることで、求められる要件が変わってくるはずです。

3. なぜ使うのか(Why)

そして最も重要なのが、ユーザーがその製品をなぜ使いたいと想定できるのか・・・言い換えれば、そのユーザーが求めているものは何なのかを明確にすることが重要です。これはPain Point(ペイン ポイント)と呼ばれることもあれば、Needs(ニーズ)と言われることもあれば、もう少しカジュアルに困りごとと呼ばれたりもしますが、まとめてしまえば「使ってくれる理由/買ってくれる理由」を明確にするということです。Valueというのは、まさしくこの「買ってくれる理由」に対して答えるのが、製品やサービスがユーザーにもたらすのがValueです。

こう考えるとすごく面倒臭いことをやっているように見えますが、単純化すればこのフェーズで求められてるのは、「どんなものを作りたいか」を細かい部分まで言えるかどうか?ということなのです。
上の質問内容を見ればわかるように、必ずしも問いへの答えの順は上の順番通りに行う必要はありません。現実的に考えれば、新たな製品やサービスの開発をスタートする場合、多くの企業では3についてはある程度データや仮説を持っていることでしょう。
ここで重要なのは、その3への回答(== 使ってくれる理由/買ってくれる理由)が、本当に正しく設定されているのか?を確認することなのです。そしてその確認作業において、1や2の質問が大きく役に立ちます。

さて、ここまでみてきた方法でValueを定義したとしても、ユーザーは単に"困りごとを解決してくれる" "したいことを実現してくれる" だけでは、新しい製品やサービスを利用してくれるわけではないのですが、その話は次回にまわしたいと思います。

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