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#014: ESG/SDGsは企業業績に貢献するのか?

先日、日系のある金融機関とESGやSDGsに関する取り組みについてお話をする機会がありました。ESGはEnvironment, Social, Governance(環境、社会、ガバナンス)の略であり、SDGsはSustainable Development Goals(持続的な開発目標)の略です。いずれも、グローバルにビジネスを展開する企業が積極的に貢献を期待される分野で、日本でも少しずつ関心が高まっていると言われています。

今回のお話では、ESG/SDGsと企業の業績には関連性があるだろうか?という疑問について、SRI(加えて私個人)の意見をお伝えしてきました。
結論を端的に言えば、単純な関連性はないだろうが、イノベーションへの取り組みという観点からは関連性が今後生まれていくだろうというのが、我々の考え方です。

ESG/SDGsと企業価値

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SRIに属する研究室の中には政策やイノベーション戦略を研究する部門がありますが、ESG/SDGsと企業業績に関する直接的な研究成果は公開をしていません。

ただ、これまでに発表されてきた研究結果を見ると、ESG/SDGsに積極的に取り組んでいる企業の株価は向上する傾向にあるようです。

もちろん、より多くの負担を企業に強いる(と言われている)ESG/SDGsに積極的に取り組むことが出来る企業というのは、そもそも高負担を受け入れることのできるような企業であるという意見もあります(鶏と卵の関係です)。

ただ、一方で特にヨーロッパにおいてはESG/SDGsに対して積極的に取り組む企業を中心に投資を行うファンドの存在や、様々な優遇措置を設けていることにより、企業価値(企業の株価)を向上させるという側面もあると言われています。

ESG/SDGsと企業業績

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一方で企業の業績、ここでは単純化のために売上と利益とESG/SDGsの関係となると、これまでのところ明確な相関関係は見えていないようです。

ESG/SDGsと企業の業績に相関関係が現れるためには、以下の関係が成り立たなければなりません。

(1) ESG/SDGsに積極的に取り組んでいる企業の製品やサービスは、取り組んでいない企業のものよりも競争力が高い(値段が高くても買ってくれるとか、同じ値段だったらより選ばれやすくなる、など....)
(2) ESG/SDGsに取り組むことで、企業はコストを低減させることで、利益率を改善することが出来る。

(1)に関しては、日本でもグリーン購入のガイドラインが存在するなど、一定の効果は期待できそうですが、企業業績を大きく向上させるほどのものであるかというまだ疑問符がつきそうです。

それでは、(2)についてはどうでしょうか?
残念ながら何も働き方や設備、技術を変えずにESG/SDGsに取り組もうとすると、コストは減るのではなく、むしろ増えてしまうということが多いでしょう。そもそも会社の状況を正確に把握しようとする調査(監査)だけでも、大きなコストがかかってしまいます。

新たな技術こそが業績改善とSDGsを両立させる

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単純に取り組もうとすると、ESG/SDGsは企業業績に貢献するのではなく、単なるコスト増という結果になり、一時的なブームになってしまう可能性さえあります。今では一般化したとはいえ、2000年台前半に一部ブームになりかけたCSRへの取り組みがリーマンショックで吹き飛んでしまったように。

ESG/SDGsをそういった一過性のブームにしないために、必要なことこそ技術開発やイノベーションです。既存の技術やビジネスモデルでは超えることのできない壁を超えるために知恵を絞ることで、両立を測ることが出来ると私は考えています。

一例としてあげられるのが、日本語では垂直農法と訳されるVertical Firmingです。これは高層ビルの壁などを用いて農作物を作る技術です。

依然として解決すべき課題は多いとはいえ、この技術は「土と平面の土地がなければ、農作物を作ることができない」という常識に対して、イノベーションを起こすことで、新たな方法論を提示しました。

あるいは日本でも今では当たり前になった、屋上緑化も一つの例としてあげて良いと思います。こちらも、そういった概念が普及するにつれて、より技術が洗練していきました。

イノベーションに取り組む企業は社会の課題を解決する

このようにイノベーションに積極的に取り組む企業は、普通の企業では想像もつかない方法で、社会課題の解決と企業業績の両立を実現することが可能となるでしょう。

ESG/SDGsへの取り組みを、単に社会課題解決の責任が企業によって押し付けられたと考えるのではなく、イノベーションを実現するべき新たな課題を見つけたと捉え直すことで、企業は成長のチャンスを見つけることが可能となるはずです。

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