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カフカ式断片的日記練習帳(最終回)
最終回
数学のことを舐めていた。自分がどうして文系なのか、文学、国語が好きなのかの理由の大部分は、「答えがひとつじゃないから」だった。たしかに答えはひとつじゃない。文学作品一つとっても、読む人によって解釈や印象や感想は様々で、文字通り「十人十色」、同じ作品なのに、読み手によってまったく違った印象の作品に変化する。
国語のテストで問われているものは、今のところその解釈がいちばん有力です、という解
カフカ式断片的日記練習帳(27)
27.
朝5時に起きる。昨日飲んだビールが、まだ胃の中に残っている感じがする、気分が悪い。飲んで、時間を空けずにそのまま寝てしまったから、寝ているときも、ビールが逆流しているような不快感があって、でも無視して寝てしまったのがよくなかったのかもしれない。二度寝しようかと思ったけど、それでまた遅い時間に目が覚めるようでは鬱がはじまるし、9時に郵便局に行って、受験申込書を発送しないといけないので、起き
カフカ式断片的日記練習帳(26)
26.
朝起きた途端、どっと疲れてる、体がだるい、面倒くさい、わりあいいろんなことがいつも面倒くさくて、「面倒くさいなぁ」と思いながらやっていることばかりなんだけど、いつもより面倒くさい。体が重い? 何もしたくない、でも何もしないと退屈で気が狂いそうになる、
「そういうことをグルグル考えるから具合が悪くなるんだよ」
布団をめくったら、布団の下から、ぶ厚い文庫本が出てきた。ちょうど首のあたりに挟
カフカ式断片的日記練習帳(25)
25.
昨日、後輩に、
「先輩って、ビールと本にしか興味がないんですよね?」
と言われた、インスタグラムにはこの2つの写真ばかり挙げている、たしかにビールと本さえあげば十分、と書いてみたが、そんなことはない、興味は他にもあるし、ビールと本を渡されて、
「はい。あと60年、これだけで生き延びてください」
と言われたら、呆気にとられて、笑うしかない。
今日は本を読みたい、でも本を読んでいる状況
カフカ式断片的日記練習帳(24)
24.
朝から小蠅を殺した。今日も蝉が鳴いている、昨日の朝も鳴いていた、そのことは覚えているのだけど、昼間や夜も同じように、けたたましく鳴いていたか? まったく思い出せないなあ。鳴いていたはずだとは思うけれど、記憶があやふやだ。あやふやじゃない、記憶がない。
スーパーで、おはぎ、焼きそば、トマトサラダ、あと何かもう1品とぶどうジュースを買った帰り路、自転車を走らせていると、きれいな夕空が目に入
カフカ式断片的日記練習帳(23)
23.
8月1日、目覚めると、夏になっていた。
蝉が朝からけたたましく鳴いている。
「ボクハココニイルヨ」
と居場所を知らせるために、あんなに大きな声で鳴いている、それはメスにむけた求愛行動、子孫を残すためのことであって、人間が自分の存在を表明するのとは少し違うのかもしれないけれど、オレだって、
「ボクハココニイルヨ」
と、あれぐらい大きな声で、毎日叫んでいる、気持ちが両方ある。全然だれに
カフカ式断片的日記練習帳(21)
21.
連休中は、ずっと手書きで原稿を書いていた。この原稿も手書きなんだけど、みなさんの目にはそのままでは届かないので、投稿するために、パソコンに打ち込まないといけない、この作業が好きになれない、面倒くさい、たぶん探せば音声で活字化できるアプリとかもあるんだろうけど、探すのが面倒くさくて探してない。面倒くささの質量を天秤にかけたとき、どっちの方が面倒くさいかなんて明らかで、明らかにキーボードで打
カフカ式断片的日記練習帳(20)
20.
「男がひとり、4人の女の子を引き連れて、マンションの一室に入っていくのを見て、羨ましいとか、もう思いたくないんだよね」
さっきまで、緑色のメロンソーダをストローでちゅうちゅう吸っていた友人が突然しゃべり始めた。こいつとは家族同然に、会話をしなくても座が保つほど仲が良いわけではなくて、そうは言ってもこうして一緒に昼メシを食いに来ているのだから、仲が悪いわけではないんだけど、なんとなく沈黙が
カフカ式断片的日記練習帳(19)
19.
「起きなきゃいけない朝」よりも「起きちゃった朝」の方がパチッと目が開く。おとといは6時に「起きなきゃいけない日」で、それでも。5時45分に一度目が自然に醒めたんだけど、目が全然開かなくて、前日の疲れもすこし残っていたからなのか二度寝してしまった、6時にアラームが鳴ったのは覚えている、自分で消してもう一度寝た、6時10分に鳴ったアラームもなんとなく覚えてる、でも6時20分に鳴ったアラームは
カフカ式断片的日記練習帳(18)
18.
面倒くさいと思った。起きた途端、面倒くさいと思った。このまま寝てた方が楽かも、とも思った、でも気がつくと起き上がってトイレに行っている、早く原稿を書きたいような気持ちになっていて、ここに吐き出したかったのか、別にいつも自分の中にあるグチャグチャした感情とか、気持ち悪さとか、違和感みたいなものを、ここに吐き出している感覚はないし、そのために書いているつもりもないんだけど、昨日書いた原稿はす
カフカ式断片的日記練習帳(16)
16.
今日も原稿を書く、書いた。朝から散髪の予約をいれていたので、早めに書き終える、「早く書こう」と思っても、そんな思い通りにいくものではない、「早く終わってくれ、早く終わって別のことをしたいのに、まだ3枚も残ってる」とか、そんなこととばかり毎日闘っている。どうやって今日の原稿を書きあげたのか分からない。原稿用紙を取り出して読み返してみると、なるほど、何も考えていない。とにかく手を動かすことだ
カフカ式断片的日記練習帳(15)
15.
父が、
「今日我慢すれば、(明日には)梅雨が明ける」
と言っていたけれど、絶賛今朝も、雨が降っている。
我が家からは山が見えて、もしかしたら、と思い窓を開けて見てみたら、モコモコの、よく雨を降らしそうな、輪郭のはっきりした雲がかかっていた。「やっぱり」と思った。今日の投稿の扉絵にした写真がその様子である。入道雲みたいなモコモコではないシャギシャギした感じ。これをどう言葉で表現したらい
カフカ式断片的日記練習帳(14)
14.
「彼女の前に座れば、彼女を理解することができる。反対意見を唱えるのは遠くにいるときだけである。彼女の前に座れば、彼女がここでちゃうちゃうとやっているものはちゃうちゃう鳴きではない、と分かるのだ。」(浅井健二郎訳)
という一節がきて、安心する。
「城の監視はまさかこんなところにまでは及んでいないと思われるところにこそ及んでいるのです。」
というこれはカフカに繰り返し表れる論法だ、
「小説
カフカ式断片的日記練習帳(12)
12.
世間は今日から4連休みたいだけれど、オレは普段と変わらない。毎日、5時か6時くらいに自然に目が覚める。布団をたたんで、カーテンと窓を開けて、外の空気と光を部屋に取り込む。この瞬間、ふわぁっと冷たい風が、足元を伝って流れこんでくるのがわかる。この瞬間が、一日の中で一番好きかもしれない。雨がビチビチ窓を打ち付けている朝はさすがに中が濡れてしまうので開けられないけど、本当は開けたい気分。小雨て