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「障害」の話。

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2018年3月の記事一覧

より拾い、より拾われる関係へ-見えない日本手話-

聴覚障害に加えて、脳性まひなどいわゆる運動障害のために手を自分の思い通りに動かせない子どもと係わることがあります。その中には手話で話す子どももいます。 手話はこういうものだと型にはめ、それにこだわる立場の者は、そうした子どもの手話をわかりにくいとか間違っているとかそういうふうにみなすかもしれませんが、私はそう思いません。どのような表現が「フツー」なのか「ヘン」なのかとも思いません。むしろ誰も教えていないのに、子どもが自分なりの「秩序」を作って発信している姿に出会って、「こと

ある子どもの「自己調整」の物語。

ろう学校で幼児たちが先生の話を聞くために集まっている時。 そこに、聴覚障害に加えてADHDの傾向があるのでは?と言われている一人の幼児がいました。 彼は、最初、先生の話に集中して聞きますが、やがて集中が切れたのか、部屋にある全く動かないものに目を移します。壁に貼ってある掲示物を見たり、天井を見たり。これらを一つひとつ数秒ほど見ます。そして突然椅子から立ち上がって廊下へ一心不乱に走り出して行きます。 そういうことを度々繰り返しているとのことです。 さて、学校コンサルテー

「意思表明」とは何か、という話。

障害者差別解消法では、社会的障壁を除去し、合理的配慮を提供するために、「障害者の意思表明」が必要であると規定しています。 私も当事者としてこれまで様々な場面で意思表明していますし、障害のある子どもや青年が意思表明できるようになるための支援の研究や実践にも取り組んでいます。 ところで、冒頭の規定内容が広く認知されてきているなかで、障害当事者の中には、職場や社会等に対してうまく意思を表明できないから権利を行使する能力が足りないのかなと思い込んで嘆いたりする方々が続出しているよ

「ニーズ」を捉える「ものさし」の話。

「ニーズ」は、要求や需要と同じような意味で使われることが多いようです。本来は、人が生きる上で何かをしたいことがあり、しかしそれができず充足できない状態になった時に現れてくるもの、と考えていいと思います。 「ニーズ」が出てきた時に、それがその人が単独でできないことならば、手助けをする人が必要になってきます。ここで問題になるのは、その手助けをする人の「ものさし」のありかたです。 「ニーズ」は、何かをしたいがそれができないでいる人が求めている「イメージ」と、その人を手助けする立