名前のない関係

2,3カ月に1度会う年上の男性。通称ポケモン先輩。しかし先輩後輩の関係はなく、男女の仲でもなく、友達というのもしっくりこない。
出会いは私がまだ未成年だったころのオープンデスク。行った先の事務所のスタッフだった。わたしが模型を作ったらそれをチェックするのが彼の仕事だった。
オープンデスクが終わった後も、なんとなくずるずると付き合いは続いた。
わたしが専門学校を卒業しても、会社を辞めても、彼が事務所を辞めても、わたしが大学に行っても、卒業しても。
「ご兄妹ですか?」
「いいえ」
「恋人ですか?」
「違います」
「お友達ですか?」
「・・・いえ?」

名前が欲しいと思ったこともあったけど、今は無くて良かったと思う。
名前が出来たらそれらしくしないといけない気がしてしまうので、名前が無い事がとても自由で心地よい。

半同棲してる彼女が風呂場でお湯を出しっぱなしにしたまま居眠りして
水音で目が覚めたら家中の床に置いてあった紙類がぷかぷか浮いていて
真っ暗な部屋とバスルームから漏れた灯りが水面で揺れてとても綺麗だったと大真面目に語り

何の突拍子もなく呼び出され終電でお台場まで行って二人であてもなくポケモンGOをして
飽きたからと歩いて家まで6時間くらいかけて帰って
めちゃくちゃ疲れて、しかも2月で寒くて
「特別にこれを与えよう」とホッカイロをひとつくれ

かき氷を食べながら、どこのとんかつを食べようかと
鞄からとんかつ特集の雑誌を取り出して一緒に悩む

名前の無い
ポケモン先輩

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