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少年野球人口の減少に歯止めをかける為に何をすればよいのか?


野球界の大きな課題のひとつに少年野球人口の減少問題があります。一体どうすれば野球人口の減少に歯止めをかけられるのか、今日はこの点について私見をまとめたいと思います。
(約10年間少年野球の監督をやった経験を踏まえた超私見です。)

<大前提>
この問題を考える大前提として「なぜ少年野球人口が減ると問題なのか?」を整理します。

①競技レベルの低下
日本の野球レベルは年々向上してきました。いまでは投手が150キロ超を投げることが当たり前の時代ですし、メジャーで本塁打王争いをしてMVPを獲得する選手が出る時代です。これは野球界の財産です。しかし競技人口が減ればレベルの低下が懸念されます。もしレベルが低下すればファンが減少し、ファンが減少すれば競技人口が減りといった負のループに陥り野球界は衰退の一途を辿ると思います。それは大変残念なことです。
②野球関連市場の縮小
少年野球経験者は将来の野球ファンです。つまり少年野球人口の減少は野球ファンの減少、すなわち野球市場の縮小に繋がると危惧します。ビジネスとして魅力がない市場は衰退の一途をたどります。やはりそれは大変残念なことです。
③文化・伝統が失われていくことへの寂しさ
戦前の川上、戦後の王・長嶋、平成の野茂・イチロー、令和の大谷など日本の野球界は様々な名選手を輩出し素晴らしい歴史を積み重ねてきました(甲子園、六大学野球、都市対抗などのアマチュアもしかり)。そんな先人たちが残してくれた文化・伝統を守り、さらなる発展を願うのは野球人として当然のこと。逆にそれが衰退するのはとても寂しいことです。

<少年野球人口減少の原因>
では次に少年野球人口がなぜ減っているのかを考えてみます。

①外的要因(時代背景などの問題)
 ・そもそも少子化で分母が縮小している。
 ・運動系の習い事が多様化し子供を奪いあっている。
 (水泳、サッカー、空手、バスケ、卓球、ダンス・・・)
 ・他の習い事に子供を青田刈りされている。
 (幼稚園の放課後サッカー教室など)
 ・公園でのボール遊び禁止など野球で遊べる環境が減っている。
 ・地上波の野球中継が減っている(お父さんが家で野球を見ない)。
 ・そもそもテレビを見なくなっている(インターネットの普及)。
②内的要因(野球界や野球チームなどの問題)
 ・保護者の負担が大きい(お茶当番、審判、グランド整備など)
 ・活動時間が長い(土日祝に終日活動など)
 ・旧態依然とした指導者が多い(罵声、坊主頭、根性論など)
 ・大会が多すぎてオーバーワークである。
 ・プロとアマチュアの間に壁がある。
 ・アマチュアの中にも様々な連盟が乱立し一枚岩になれない。
 ・初心者には難しい(打つ、投げる、捕るなど)
 ・道具代が高い(グラブ、バット、スパイク、その他)

<野球人口減少に向けた対策>
最後に上記の問題点を踏まえ、少年野球人口の減少に歯止めをかけるためには今後どのようにすればよいのか?を考えてみます。もちろん上記であげた外的要因は我々にはコントロールできないことばかりですので少年野球人口の減少は必然だと思いますが、少しでも減少幅を少なくするための努力は行っていく必要があると考えます。

①短期的な取り組み
まず第一にチーム単位ですぐにできることは各チームが各々改善していくべきと考えます。例えば、お茶当番、坊主頭、コーチの指導方法などです。もちろんチームによって事情は様々ですから一概に変えろと言えるものではありませんが、時代に沿った形に変えていく柔軟性は絶対に必要です。

②中長期的な取り組み
①の短期的な取り込みはとても大切なことですが、残念ながらそれをやれば子供が増えるかと言えば、現実はそんなに甘くないと思います。わたしはもっと根本的な部分で少年野球界全体の構造や仕組みが変わらないとダメかなと感じています。

そもそも現状の少年野球チームを見ると、基本的にはお父さんなどのボランティアスタッフがチームを運営し、土日祝の終日活動しているチームが多いと思います。そこに集まる子供は千差万別で、将来プロや甲子園を目指すような才能や意識を持った子もいれば、友達に誘われて遊びの延長で入部した子もいます。多くの子供は「将来の夢はプロ野球選手」とは言いますが、本気でプロを目指す意識で野球をやっている子は実はほんの一握りです。多くの子の本音はそこまでストイックに野球をやりたいわけではなく、おじさん達の草野球のように楽しく野球をやって遊びたいだけです。つまり一部の子や親にとっては土日祝終日の活動や厳しい指導はウェルカムですが、大多数の子にとっては「Too Much」な状態なんです。それにも関わらず子供たちを勝たせてあげたい親心からでしょうか?年々活動内容がレベルアップし、気づいたらどこのチームも本格的な体育会系部活みたいなチームばかりになってしまいました。まるで小さな高校野球です。その結果、入部前の低学年のお子さんや親御さんにはとっては敷居が高く、入部者が増えないのだと思います。言い換えると提供しているサービスがターゲットニーズに必ずしもマッチしてないため(マジョリティのライト層にはマッチしないため)、入部する子供が増えないと考えています。

以上を踏まえあるべき姿とわたしが考えるのは、

「将来甲子園やプロを目指したい層」をターゲットとした本格的なチーム(リーグ)と、「ユニフォームを着て野球を楽しみたい層」をターゲットとしたこども版草野球チーム(リーグ)とにすみわけすることです。

前者はボランティアスタッフではなく相応な料金を支払い有資格者の指導者に教えてもらうスタイルが理想です。練習内容は厳しく、活動時間も長くてよいと思います。科学的な知見をどんどん取り入れレベルも向上させていく。活動範囲も他県、全国、世界大会など広範囲に及んでよい。法人が事務局を立ち上げスポンサーや施設などを工面したり、先日筒香選手がプレス発表したようにプロ野球選手らが運営母体になるのも良いと思います。もちろん伝統ある既存の名門少年野球チームでこちらのリーグに参加するチームもあって良いと思います。というか現実を考えたら既存チームが主流派で、そこに新しい形態のチームが仲間入りさせて貰う形になるのだと思います。いずれにせよ、日本球界のレベルを下げないために(向上させるために)、ジュニアのうちから質の高い指導をできるチームを増やしていくべきと考えます。

一方の後者については今まで同様に保護者を含む地域のボランティアが運営し、勝敗よりは楽しく野球をやることに主眼を置くイメージです。大人版の草野球という表現が一番しっくりきます。活動時間は早朝野球程度、活動範囲も近隣チームとのリーグ戦程度で留める。もちろん試合すれば勝利を目指しますが、すべての選手に出場機会を与え、ミスした子を怒ることもしません。そのあたりのさじ加減はまさに草野球と全く同じ感覚ですね。草野球でミスした人を責めたり怒ったらドン引きですからね。大会が多かったり、上部大会があったりするとそれを目指した勝利至上主義合戦が過熱するので、あえて大会は増やさない方が良いと思います。他チームへの移籍なども自由で良いですね。「プロみたいにユニフォームを着てちゃんとした野球場で野球やって遊びたい」、「でも体育会系の部活みたいなガチな野球はやりたくない」という「多数派」のニーズに答え、たくさんのお子さんに野球を好きになってもらうことがあくまで主目的です(将来の野球界の顧客をひとりでも多く囲い込みましょう)。メジャーみたいにサングラスをかけてプレーしたり自由な感じでやれるといいですね。このようなチームや団体をどう増やすかの方法論は状況次第だと思うので詳しくは触れませんが、理想はNPBや軟連などが一体となったトップダウン改革、それが現実的に無理であればゲリラ的にインディペンデントなリーグを作る、もしくはその合わせ技かなと思います。

かつて連盟役員などもやっていたので理想と現実が違うことは重々承知しているつもりですが、今日は本質的な問題を考えてみたかったのであえて理想をまとめてみました。



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