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はんげつ日記 2024/9/11-10/11

9月11日
すっかり日が暮れるのが早くなった。仕事帰り、西の空に明るい星が、南の空に半月が出ていた。コウモリたちはくるくると飛び回っていた。

9月12日
ガルシア・マルケス『百年の孤独』が面白くて幸せ。今3分の2くらい。戦争の箇所は長いなあと思ったものの、登場人物たちの死のシーンがとても素晴らしかった。マジックリアリズムについて考える。読み終わったら読み終わった人とお話したい。

9月13日
義妹のためのお守りを頂くため神社に参拝してきた。信心深くないからこういうことをするのは初めて。事前に作法などを調べてから行ったのに手水の場所がわからず右往左往した。結局清められなかったけれど、どうか大目に見てほしい。

9月14日
友だちと多摩川で花火をした。どこか仕事のように淡々と火をつけ、溢れ出る色とりどりの光を見た。これで夏は終わり。だからもう暑くしなくていいよ。

9月15日
最近ずっと風呂の窓(外側)にヤモリがいて、入浴のたびに姿を見るのを楽しみにしていた。しかし今日は洗面所(室内)に小さいヤモリが現れて、手の届かない隙間に隠れてしまったから困った。その後寝室で洗濯物をしまっている時にふと見ると、膝の上に小さなヤモリが乗っていた。洗面所で見たあの子であることを祈りながら、片手で捕まえて外に逃した。

9月16日
国技館で大相撲をみた。推している北勝富士関の国技館入場を偶然見かけて嬉しかった。鮮やかな水色の着物が素敵だった。国技館では必ずちゃんこを頂く。前に来たのは10年以上前だが、その時食べたどこかの相撲部屋のちゃんこの方がおいしかった気がする。今回は国技館オリジナルちゃんこだった。

9月17日
昨日、初めて画像生成AIで遊んだ。AIに対しての畏れが根底にあるからかその夜はディストピアの夢をみた。私は黄色い服を着せられた大勢の人たちと働いていた。そこは明るく清潔だけど、自由も希望もないことがはっきりわかっていた。私は死ぬ方法についてばかり考えていた。

9月21日
ZINEフェス吉祥寺(武蔵野公会堂)に出展してきた。新たな出会いもありまあまあ良かった。靴と靴下の選択を誤り、両足の甲にミミズ腫れ状の水ぶくれができてしまった。透明なイモムシのようで、ちょっと可愛い。触り心地も良い。

9月24日
百年の孤独を読み終わってしまい寂しい。百年の孤独クイズがしたい。マコンドクイズでもいい。通りに植えられていた木はなんでしょうか?大佐が反乱を起こした回数は?

9月25日
小鳥、おしゃべりの練習に余念がない。「ピーチャン」「カワウィーネ」「イイコチャン」などとしゃべっている。今日は私の口元に近づいてじっと聞き耳を立てていたが、最終的に唇に頭をくっつけてきた。愛おしい。

9月26日
日の暮れかけた住宅地を歩いていたら盛りのついた猫の鳴き声がして、そこにピアノの練習の音が重なった。焼き魚の匂いと金木犀の香りが漂って、とてもとても住宅地だった。

9月27日
仕事から帰って玄関のドアを閉めたら2階にいる小鳥が呼び鳴きした。初めてのことで嬉しくなった。玄関ドアの音がすると誰かが帰ってくると学習したらしい。かれは生後6カ月になった。幼鳥から若鳥へ。

9月28日
家族で原宿の太田記念美術館に行ったあと鉱物屋さんへ向かうも、目的の店の前に大勢の女性がいてたじろぐ。皆同じペンライトを持っているし、何かのイベントかと思いきや、店の向かいの壁に貼られた大きなポスターの写真を撮っているばかり。どうやら、私の知らない男性アイドルグループのファンたちらしい。このあと近くでイベントがある可能性はあるが、ただのポスターにこんなに人が集まるということに凄みを感じる。ファンのひとりはポスターの写真を撮りながら嬉しそうに「顔だ」と呟いていた。

9月31日
財布も鍵も忘れて家を出てしまったことに、鍵をかけてから気がついた。うちの鍵は指紋で閉めることができる。でも、指紋で開けることはできない(夫のみできる)。財布に入れているカードキーか、リアル鍵で開けるのだが、そのどちらも家の中だ。つまり、鍵を持っている娘が学校から帰ってくるまで私は家に入れない。バスで移動するつもりだったが、とりあえず自転車で用事を済まし、スマホの電子マネーで飲み物や筆記用具を買って図書館へ。なぜか面陳されていたみうらじゅん『「ない仕事」の作り方』を手に取り、読了したあと無事帰宅。

10月2日
通勤時、バスの運転手さんの声と喋り方が井上陽水に似ていることに気付いてにやける。井上陽水の有名なセリフを思い出そうとして、頭の中の井上陽水に「ご苦労さまです」「お疲れさまです」「ご機嫌よう」など言わせてみるも正解にたどり着けず。夜帰宅してから夫に教えてもらった正解は「お元気ですか」。

10月4日
黒いシャツに黒いワイドパンツ、黒い靴下に真っ白のスニーカーという組み合わせで外出してしまった。近所のしまむらの姿見に映る私はいつもダサい。

10月5日
小鳥のおしゃべりが止まらない。「じょーず」「びっくりした」笑い声などが追加。止まり木をくちばしでリズミカルにつつきながら「チャンチャン・ピーチャン・チャンチャン♪」などとオリジナルソングを歌う。

10月6日
娘の小学校の運動会。霧雨の肌寒い天候のなか開催され、私は眠くてたまらない。未就学児たちも例年よりぐずり率が高い。お気持ちよくわかる。最後の演目であるソーラン節の最中、泣き叫ぶ幼児の声が激しい合いの手のようで笑いそうになった。娘はよくがんばっていたのでたくさん褒めた。

10月10日
網戸に羽虫がたくさんついていると思って殺虫剤をかけたが、よく見るとそれらは全部細長い種のついた綿毛で、目の前の空間が歪むようなショックを受けた。その後、映画館で黒沢清の『Cloud』を観るため駅に向かった。途中の花壇にタマスダレが咲いていた。白い花の下の土に、パールが4粒落ちていた。

10月11日
残業のあとへとへとになってバスを降りたら缶詰のみかんみたいなとてもかわいい半月が出ていた。スーパーに寄り『レディーボーデンミニカップご褒美ごこちキャラメルショコラケーキ』と赤ワインのハーフボトルを買って帰った。

***
後記

どうやら私は半月が好きらしい。先月から書き始めた日記に2度も登場するほどに。満月でも三日月でもなく半月。タイトルを決めて半月から半月までの1ヶ月をまとめた。特に秋の早い時間の月は橙がかっていることが多い気がする。それが缶詰のみかんに似ている。水酸化ナトリウムで薄皮を溶かされシロップ漬けになったみかんの子房は、赤ちゃんみたいに頼りなくってかわいらしい。

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