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20230206 待ちのぞんでいた論文発見


 
 記憶ではおそらくこのNOTEでも,「新興住宅地で祭が生まれるプロセスやコミュニティ形成との関連について知りたい調べたい。」という希望があることを書いていたと思います。そして今日論文探しをしていると,その関心にぴったりそった論文がありました!
 
 
岡田 航 2019郊外社会における民俗行事のあり方の多様化と近隣組織 : 八王子市堀之内における道祖神祭の変容を事例として. 現代民俗学研究, 11, 1 – 15.
https://cir.nii.ac.jp/crid/1050857468890903040
 
 郊外社会として取り上げられたのは八王子市堀之内で,有名な多摩ニュータウンのある場所のようです。そして取り上げられた祭は道祖神祭で,これは正月のどんと焼き系で「子どもたちの行事」とのことなので,祭と社会性発達の関連に興味のある私にとっては最適なケース!

写真は八王子ではなく博多のどんと焼きの様子(2018年)です

 しかもこの論文の面白く有意義な点として,ある1つの地域とある1つの祭の関係をみるだけではなく,同じ道祖神祭を起源に祭を行う5つの地域で,その後祭の受容や発展の様相が異なることを紹介し,その様相の相違の背景を説明していることが挙げられると思います。
 
(1)行事の規模拡大を目指した小字(小字 A・B)
(2)新住民が行事をリードするようになった小字(小字 C)
(3)他小字から集団移転した住民との交流の場となった小字(小字 D)
(4)「昔ながらのやり方」にこだわる小字(小字下 E・中 E)
(5)行事の規模縮小を図った小字(小字上 E)
 
 この5つの自己紹介ならぬ地区紹介をみただけでもそれぞれの地区の「キャラが立って」いて,その違いを知りたくなるしその違いの背景を考えてみたくなりますよね。私がまとめると下手な二次創作になってしまうので興味のある方は原典の論文をお読みください。
 
 そうした違いを生んだ要因の考察としてあげられているところで面白いなと思ったところを引用させていただきます。 

 堀之内では混住化や就業形態の多様化などの社会状況の急速な変化のなかで、コミュニティの醸成が住民たちの間で地域の課題とされてきた。そのため、堀之内自治会でもその名目で盆踊りや運動会などの行事を企画しているほか、子ども会や老人会を組織して種々の活動を行っており「堀之内は地域活動が盛んな場所である」とよくいわれる。ただしそこで意識されるコミュニティの単位はいうまでもなく堀之内という大字である。それとは別に、小さなコミュニティの親睦のための行事も必要性があり、それが道祖神祭だというのである。つまり堀之内では、在地性を持つ地域組織が機能しておりそれが重層的に存在する。そしてそれぞれの集団の凝集性を高めるためのしかけが行われてきた。そのうち小字や地区でそれにあたるのが、道祖神祭だったとみることができる。

 このあたり,博多祇園山笠ではやはり「流」という大きな単位での動きが重視されるけれど,盆などでの千灯明や地蔵盆などは構成町単位で行われていたりもするので,それに似た感じなのかなあと思いました。

 従来の研究では、こうした時間感覚に関する先行研究が議論の対象としてきたのは主に山村だった[内山 1993; 藤村 2003]。逆に縦軸の時間が支配する場所の象徴として位置づけられてきたのが都市である。堀之内で見えてきたことは、郊外とはかつてそこで当たり前に感じられた「横軸の時間」が当たり前に感じられなくなる瀬戸際にある場所だということである。近年の災害研究では、災害復興時に被災者たちが取り戻したいと強く考えるものに毎年ルーティンとして続けてきた祭礼や民俗芸能があり、そこから被災地において内山がいうような回帰する時間を取り戻すことが、災害復興では重要な課題となることを提起している[川島 2011; 植田 2016]。災害と大規模開発とでは事象が異なるものの、地域社会で毎年回帰してきた様々なルーティンの喪失をもたらしたという点では重なっている。小字 A・B の事例からは、地域環境を一変させた大規模開発後の世界を生きていかなくてはいけないなかで、地域の「無事」を実感できる場所を守っていこうとする試行錯誤として、道祖神祭が続けられてきたことが見いだされる。先祖から引き継いだものを子孫に受け渡すことが意識され、「昔ながらのやり方」にこだわる小字下 E・中 Eの事例も、この時間感覚を大事にして、守っていこうという意思だとも解釈できる。 

 コマが垂直に立ち続けるためには回転を続けないといけないように,祭が何年も継続するためにはその祭だけがあるだけではなく,1年を通じて季節ごとに祭や行事が巡るという横方向の時間の広がりや時間の回転がある必要があるのかなあと思っていますが,そのあたりのことを上の説明で理論的に滅名刺てもらえたような気がしました。
 
 今日は時間がないので詳しくは読めていませんがこの論文は丁寧に読んで自分のものにするぞ~と。

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