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自己嫌悪モンスターのたおしかた

"私も、本当にショックで、、、
悔しいです。申し訳ございませんでした。"

行きたかった企業から不合格の通知をもらったその日、
転職エージェントのアドバイザーさんから頂いたメールの文面を、今でもずっと、覚えている。

他の企業から頂いていた内定は、すでに辞退してしまっていた。
加えて、それまで働いていた会社は、3月末で退職していた。

4月1日。私は、無職になった。
覚悟はしていたけど、いざ落ちてしまうと、どうしようもなく不安になった。

春風が心地よく吹き、
街角に新入社員が溢れ、
ネットのニュースは新しい年度の始まりを伝えていた。


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実は、ちょうどその一週間前に、大事件が起こっていた。
大好きだった彼氏に振られたのである。
ショックは大きかった。
スーパーで買い物をしている時も、道端を歩いている時も、知らないうちに涙が落ちる。


...うそでしょ。
私の人生、こんなにハードモードなの?
こんな、恋愛も仕事もうまくいかないヒロインみたいな設定、おもしろいのはドラマの中だけでしょうよ。
これは現実ではなく、なにかのドラマの中にいるのだと、思いたかった。

<ちょっと自己紹介>
新卒で音響効果の会社に就職し、5年間勤務しました。
テレビ番組のBGMを選曲や、楽曲の制作のサポートしたりしていました。
転職活動の後、2021年7月より、IT企業で人事として修行しております。
転職活動の道のりの一部を、このnoteで書けたら良いなと思います。

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♪想い出はモノクローム 色をつけてくれ
もう一度そばに来て はなやいで
美しの Color Girl~


テレビで、大滝詠一の "君は天然色" の特集をやっていた。
今までは、明るくて陽気な音楽だと思っていたけど、歌詞や作曲の経緯のエピソードを知ると、胸が苦しくなった。
その明るさが一層悲しさを引き立てて、その悲しさで胸がつまって、また泣いた。
人との繋がりが消えると、世界はモノクロームになるんだなあ。


失業保険をもらうためにハローワークに行く道すがら、
”自分は、なんて、価値のない人間なんだろう。”
と、無意識に自分を責めていた。
トゲトゲのボールがお腹の中にあって、それが暴れ回っているかのように、自分の心を自分で傷つけていた。(のちに私は、それに"自己嫌悪モンスター"と名付けた)

"このままじゃ、やばい..."

ヤバさに気付いたその日から、自分の気持ちを守るために、何かしなければならないと思った。
こんなメンタルじゃ、転職活動なんて続けられなくなってしまう。
自分の人生とキャリアをかけて、自己嫌悪モンスターと戦うための大作戦がはじまった。

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【自己嫌悪モンスターとの戦い】


一、本を読む。
転職活動を再開したとはいえ、働きながら面接を受けていた頃に比べると、時間は無限にある。
今回の転職活動と失恋を通して、今まで見えていなかった自分の弱点を嫌と言うほど見せつけられたので、それを何とか克服したい思い、心理学の本をたくさん読んだ。
気付いたのは、自分の悩みは意外にも、これまで生きてきた多くの人が悩んできたことであること。
手を伸ばせばいくらでも、先人の知恵を借りることができること。
くわえて、知識を蓄えると、いろんな角度から物事を捉えられ、メンタルを保てる。
この世には、良いことも悪いことも面白いこともつまらないことも、とにかくたくさんの物事や考え方があり、今見えている世界だけが全てじゃないと分かると、何だかほっとする。

一、日記を書く。
自分のポジティブな気持ちも、ネガティブな気持ちも、一旦きちんと受け止める。
とりわけ、ネガティブな気持ちを、"何でこんなふうに考えちゃうんだろう"なんて責めないことが大事。
自己嫌悪モンスターが出現したら、無理に追い出さずに、その存在を認め、優しくしてあげる。(なんだか私が下手に言葉にするとキモいですが、心理学的にはラベリングと言ってとても効果のある方法なのだそう。)

一、今の自分を俯瞰する。
チャップリンの、"近くで見れば悲劇でも、遠くから見れば喜劇"という言葉が、好きだ。
今は辛いけど、これは、十年後の自分からみたら、きっと、今の自分に感謝するはずで、それを戦略的に想像することで、今の辛さは自分の人生へのギフトになっていく。
たとえば、"今回の転職活動でのアクシデント&失恋は、それ自体は辛く悲しい出来事以外の何ものでもないけど、転職先を妥協せずに選んで、自分の嫌な部分の改善のために全力でもがいている今の自分に、10年後の自分は間違いなく感謝するだろう"
みたいなことをノートに書いていたら、何だか本当に感謝の気持ちがあふれたので不思議。

一、愚痴る
これは何だか語弊があるかもしれないが、盛大に愚痴ったら、せいせいするということに、27歳にして初めて気付いた。
”ネガティブなことを口にしてはいけない”は、確かに間違ってはいないんだけど、
そのせいで、言う必要がある本音にまでロックがかかってしまうのは、良くない。
ある時、友達とディズニーに行って、目の前に並んでいたカップルのあまりにも目に余る行動を目にした後、なんと、、愚痴ることができた("愚痴ることができた" なんて、日本語としてどうかと思うけど)。
あんなに晴々とした心持ちは、生まれて初めてだったかもしれない。
これからは、”本音を大事にする"ことの一つとして、"愚痴る"と言う手段を積極的に使っていきたい。

一、外見にお金をかけてみる。
転職活動中、全く服を買っていなかったので、これを機に、欲しかったコートや化粧品など、ありとあらゆる物を買ってみた。
...鏡を見ながら思った。
自己肯定感を上げたいなら、外見をよくすることが一番手っ取り早い方法だなあ。
買ったコートを着て、劇団四季を観に行き、戸越銀座で食べ歩きした。最高か。

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一、友達と会う。
ライオンキングで、いつも泣いてしまうシーンがある。
プンバアとティモンが、故郷を追われて悲しむシンバに、「ハクナマタタ(心配ないさ)」と歌うシーン。
張り詰めていた心がふっと緩ませてしまうのは、友達という存在の凄さをよく表していると思う。
友達には感謝しかなかった。
時々誘ってくれる友達がいなければ、もう二度と立ち上がれなくなっていたかもしれない。

一、強制的に、笑う。
夜寝る前に、お酒を飲みながら、Youtubeでお笑いを見ながらゲラゲラ笑っていた。
とにかく笑えれば、"まあ、なんとかなるかぁ〜"とか思いながら、眠ることができるから。


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そんなことをしながら、一ヶ月くらい経った。


ある日の夕方、

"自分の人生は、きっと大丈夫"

という感覚になった。
自己嫌悪モンスターのトゲトゲは、かなり丸みを帯びてきていた。

それにともなって面接の通過率も驚くほど良くなり、
最終的には、人材業界や人事職でいくつか内定をいただいた。

数日かけて考えに考えて、最終的には、IT企業で人事をさせて頂くことになった。


どこに行くべきか迷っている私に、電話口でキャリアアドバイザーさんがかけて下さった言葉が印象的だった。

"この転職で、何が実現したかったのか、
今後どういう人になりたいのか、
そこに一番近い仕事を選んでくださいね。"

別に特別な言葉ではないのだが、この言葉を聞いた瞬間、この激動の数ヶ月のことが頭を巡った。何か言ったら、泣いてしまいそうだった。


転職先の決断をした日、
友達、家族、スーパーの店員さんやジムの仲間、、お世話になった方々に報告すると、
たくさんの方が喜んでくれた。
ただ、喜んでくれると同時に、みんな口を揃えて
"心配してたよ〜"と言う。
"すみません..."と苦笑いしながら言うしかなかった。


心配させて、ごめんなさい。
応援してくれて、ありがとうございました。


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転職先では、まだ一ヶ月しか働いていないけど、
自分の仕事のスキルの低さや同期との力の差に唖然としながらも、
喉から手が出るほどやりたかった職種に出会えたことに感謝している。
話を聞けば聞くほど、ずっとやりたかったことにぴったりで、胸が熱くなる瞬間がたくさんある。

今はただ、
名刺に印刷されている、「人事部」という文字が、ただただ眩しいだけのひよっこだが、
早く、会社に価値を生み出せる人になりたい。

多くの才能を持った人が、お互いの才能を発揮しながら、
良いものを作れる仕組みづくりをしたい。
お互いにポジティブな影響を与え合っているシーンを、見たい。

...そのためなら、私は、すごく頑張れる自信がある。


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自己嫌悪モンスターは、今でも、ひょっこり顔を出す。
そんな時は、彼の言い分を聞いてあげて、"お茶でも飲んでゆっくりすれば"と声をかける。
だいたい、気付いたらいなくなっている。


慣れたものだ。