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30 予測不能なノート術(4)- テーマは「今」 -

さて、バレットジャーナルのセットアップについて綴って来たが、一連の文章は特にバレットジャーナルについて語ることが目的ではない。「書く」事とその効用を語るつもりで、ついバレットジャーナルに関する内容が長くなってしまっている。
 
さて、前回、マンスリーログのセットアップまで一気に進んだので、いよいよバレットジャーナルの根幹となるデイリーログを書く。学習障害を抱えたライダー・キャロル氏が自分の生きやすさのために作り上げたバレットジャーナルだが、最初はきっとこのデイリーログ、つまり今日やる事を箇条書きにしたリストからスタートしたのであろう事は間違いない。その後からフューチャーログやマンスリーログ、インデックスが付随して来たはずだ。
 
見開きページの一番上に「デイリーログ」と書き、その下に今日の日付を書き、マンスリーログやフューチャーログから今日できる事はないかを探し、それに加えて今日やるべきタスクを箇条書きにする。その他、突発的な用事や、思いついた事もすべてここに箇条書きにする。箇条書きの頭にはキーリストに記した記号をつける。タスクであれば「・」メモであれば「-」など。今日決まった予定もここに箇条書きし、スケジュールマーク「<」をつけてマンスリーログやフューチャーログに書き写す。1日のはじめか前日の夜にこの作業をし、1日の終わりには終了したタスクには「×」をつけ、先延ばしにしたタスクには移行マーク「>」をつける。翌日のタスクに、今日出来なかったタスクを移行する。1日分が1行で終わっても良いし、数ページになっても良い。1日の密度はそれぞれ違うものだから、最初から決めつけない。それがバレットジャーナルの、現実への即応性を担保する。
 
タスクや予定をマンスリーログや翌日のデイリーログへ書き写す作業、これがこのノート術の肝でもある。書き写すのはちょっとした労作業である。時間を使う。面倒である。だから楽をしたい。なので、そのタスクは本当にする必要があるのか、書き写す必要があるのかをここで一考する。書き写すと言う作業が、自分が本当に必要とする作業を絞り込むフィルターの役割を果たす。
 
何度も言うが、ここではほんのさわりしか記していない。何しろ1冊の本が出来るほどの内容なのだから。本気でバレットジャーナルを始めようとするなら、ぜひ書籍を読んで欲しい。注意すべきは、ネット上に氾濫しているお洒落に飾り立ててシールやスタンプやお絵かきなどで埋め尽くされた「バレットジャーナル」を名乗る情報は、バレットジャーナルの本筋からまったく外れてしまっている。参考にしない方が良い。バレットジャーナルの命は現実への即応性であり、つまり素早いなぐり書き(ラピッドロギング)とシンプルなわかりやすさである。
 
デイリーログはインデックスに書き込まなくても良い。その代わり常に栞を挟んでおいて、すぐに開けるようにしておく。何かがあればすぐに書き込む。
 
そう、インデックスの書き方だが、「読書録 32」のようにページ番号を後ろに付けた方が、あとあとページが分散した時にカンマ区切りでページ数を連ねる際に都合が良い。
 
一連の流れを概観すると、まずデイリーログにタスクやイベント、メモを箇条書きする。予定が決まればマンスリーログやフューチャーログに書き込む、終了したタスクや先延ばししたタスクには印をつける。さらにマンスリーログやフューチャーログから今日のタスク、今できる事を抜き出して書き写す。すべては「今」を中心に回る。
 
可視化つまり「見える化」には力がある。思っていることを箇条書きの言葉で見える化する。漠然とした思いが具体的な予定へと変化し、予定は実行へと移される。実行には結果がともなう。結果は変化をもたらす。変化とは自分と環境の変化である。バレットジャーナルが回り始めると、自分が一変する。先延ばしが格段に減り、成果が格段に増える。1日の終わりに、今日やり残したタスクを眺めてどうして出来なかったのだろうと考える自分がいる。そのうちに、自分が1日に出来ることの分量が見えて来て、誰かからの無理な注文を安請け合いしなくても良くなる。しばらくバレットジャーナルを続けたあとには、「自分」と「今」に集中している以前とは違った自分を発見するだろう。その頃には、あなたを見つめる周囲の目も変化しているはずだ。役職が上がり給料だってアップするに違いない。

3週間前の稿(2021.11.24 No.1114号)で、仕事をすぐにやめてしまうオジさんや自分の予定がわからない人たちの事を書いた。私が彼らを「書かない人たち」と呼んだ意味がわかって頂けるだろうか。
 
イチローをはじめ松坂大輔、ゴルフの石川遼、サッカーの本田圭佑、水泳の北島康介など一流のアスリートが、小学生の頃にまるで自分の将来を予言するような、具体的な作文を書いていた事は有名である。さらに、大谷翔平が小学生の頃から書いている野球ノート、高校時代の目標達成ノートも話題になった。書くことによって漠然とした思いは具体的な目標へと変化する。
 
近所の悪気のないオジさんに、今さら書く事を押し付けるつもりはないが、社会の中枢で現役で働き、成果を上げて行きたいと思うのならば、書こうよ、と声を大にして言いたい。書く人が増えれば、あなたの会社も、日本の経済もギュンギュンと音をたてて回復するに違いないのだ。そのために、バレットジャーナルは効果的なノート術なのだと言うことを、ここまで長々と記した。
 
【わかりやすくバレットジャーナルの手法を記した本】
 ・『ロイヒトトゥルム1917ではじめる箇条書き手帳術
    もっと自分を好きになる! バレットジャーナル完全ガイド』
    株式会社平和堂(監修) 2018年/実務教育出版

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