新著『反緊縮社会主義論』のお知らせとその誤記訂正

※ 新著にまたミスが見つかった(47ページ)ので、下記にリンクした個人ホームページの誤植訂正リストに追加しました。①という文字を受け付けてくれないので、「まるで囲った1」と表現しています。(8月9日追記)

最近の体調

このノートですでにお知らせのとおり、21年春の左精巣の切除により男性ホルモンの欠乏になっていて、去年秋から男性ホルモンの補充注射を定期的にしています。たまに、前立腺マーカーの値が高くなったとか、多血気味になったとかというたびに中断するのですが、すぐに元に戻って再開することを繰り返しています。
ところがこのホルモン補充の副作用で、血圧が高くなってしまいました。
以前は普通に100なかったりすることもあったぐらいで、血圧は低いほうだったのですが、ホルモン注射を続けるうちに150台が普通になってしまい、降圧剤を飲めということになりました。

それで降圧剤を飲み続けているうちに、やがて110台とか120台とかになった。
たしかに血圧は下がったはいいのですが、110台とか120台とかが続くと、朝ダルすぎて起きられないし、日中もしんどくて眠くてしかたなくなります。ホルモン注射を始める前のダルさよりももっとダルく感じて、何のためにホルモン補充しているのかわからない状態でした。
昔は100ぐらいでも大丈夫だったのに。

日本経済も同じで、今110円台とか120円台とかになると、とても耐えられないでしょうね。
あんまりキツいので、医者に泣き付いたら、降圧剤は中断しようということになって、しばらく飲まないでいたら、130台とか140台とかになって、やっと正常に戻って今に至っています。
円もそんな感じのところで止まってくれれば御の字ですけどね。今からアメリカが景気後退期に入って利下げしていくときに向かって日銀が利上げしていくわけだから、どうなることか…。

新著が出ました

さて、このほど新著『反緊縮社会主義論——脱成長論と帝国主義の超克』があけび書房さんから出ました。

出版に至った経緯は、やや長くなった「あとがき」に詳しく書いてありますので、手にとられたかたはまずお読みください。

ツイッターでも多くの人から紹介いただき、感謝に耐えませんが、特に笑ったのが、東北大学の小田中先生による次の一文。

いやいや。ハハハ。まあなんというか、ともかくありがとうございます。

誤記が多いので訂正お願いします

ところが、早速たくさんの誤記が見つかってしまったのです。
いちばんひどいのが、148-149ページで、中央銀行の政策で「利上げ」と「利下げ」が入れ替わっているところ。まあ、当該文脈の中では議論の粗筋に関係ない記述だとはいえ、今まさに、利上げの是非をめぐって議論しているところなのに、こんなミスをしてしまったとは恥ずかしい。
そのほか至る所で、景気の過熱を「熱」と誤記してしまっている。このてのワープロ変換ミスはほかにも多いです。

誤記の訂正一覧は、下記リンク先の私の個人ホームページに載せていますので、お手数をかけてもうしわけありませんが、ご入手いただいたかたはご確認ください。
http://matsuo-tadasu.ptu.jp/goshoku_chosho.html#hankinsyukusyakaisyugi

これらの誤記の大半は、地平社さんの旧知の編集者である木村さんが見つけてくださいました。下記のあけび書房社長のツイートにもありますように、木村さんは『地平』9月号で、この本の書評もしてくださっています。重ね重ねありがとうございます。

帝国主義体制に向かう経済的要因を分析

私の個人ホームページに自分で書いた、この本の内容紹介は、次のようなものです。

前半では、著者の反緊縮論に対する左派側からの藁人形攻撃に反論しつつ、反緊縮経済政策を、人口減少時代に必然化された、貨幣創出の公共化を手段とする、総雇用水準と資本蓄積の公的コントロールと位置づけ、下からの事業としてのアソシエーション的変革と相互補完的な体制変革の道だとする。

後半では、世界的な資本主義の段階転換から、現代を地域帝国主義分立・対抗の時代と位置づけ、人口減少下で国内の資本蓄積が停滞する日本資本主義も、東南アジアなどへの資本輸出で資本蓄積の持続を図る地域帝国主義に向かっていると分析する。そして、中小企業や農業などの国内産業の淘汰や、財政緊縮・円高志向をこの一環に位置付けて説明する。その中から、脱成長リベラルがこの帝国主義構築に加担する結末になる危険を指摘し、反緊縮的体制変革こそがオルタナティブになることを浮き彫りにする。

そういえば、このあいだ、敵の分析をしたらそれだけで批判したつもりになる私のクセをからかって、長谷川羽衣子さんが、「松尾匡が日本のODAを批判したらどうなるか」を説明してみせました。

・松尾「日本のODAは日本の大企業によって事業受注されて、結局日本の大企業を潤わせるものだ。」
 ↓
・一部のれいわ支持者「外国に金を使うなんてけしからんと思ってたけど、そうか日本のためになるのか。さすが松尾先生。ODAって必要なんですね。」
 ↓
・緊縮左派(元記事を見ずにれいわ支持者のツイートを引用し)「松尾は日本の大企業をもうけさせるためにODAが必要だと言っている。やっぱりひどいやつだった。」
ここまでの一連の流れがワンセット。きれいに見通せる。

私も含めてその場に居合わせた一同大ウケしていましたが、よく考えたら笑いごとでないかもしれない。

たしかに昔からそんな経験ばっかりでした。
20年ぐらい前、小泉改革が爆進して就職氷河期とか言っていた頃に、労働の非正規化がこんなに進んで、格差がこんなに進んで、貧困化がこんなに進んでといったことを授業でこれでもかと話したら、感想のコメントが、「勝ち組になるようがんばります」と決意表明したり、「おまえこそ負け組だ」と反発したりというのばかりで、こっちが批判して言っていることを汲み取ったコメントがひとつもなかった。
その後も、アベノミクスの礼賛者にされたり、政府の中小企業淘汰路線の説明を講演でしたらそれを提唱して言っていると誤解されたりと、いろいろ同様のことを繰り返してきて、気をつけているつもりですけど、やっぱり同じことをしてしまう。

出したあとで振り返ると、今度の本も、支配層の戦略やら、日本資本主義が生き残るための方向性やら、リベラル派の唱えることが帝国主義体制によって実現されてしまうことやら、もろもろ分析しただけで十分批判したつもりになっている気がするけど、大丈夫かいな。
松尾は帝国主義を提唱しているとか言われんやろうな。
藁人形攻撃に反論して誤解を解くための本が、ますます藁人形攻撃を強める結果になったりして。
どうかみなさんには、そこのところ誤解のないようにお願いします。

ブルブル震えて円高を警告

さて、前著『コロナショック・ドクトリン』は、円安爆進するさなかに、「将来円高になる」とガンガン書いて世に出したせいなのか、期待したほど反響はなかったですね。
今度も、1ドル160円台に入って「円暴落」とか言って騒ぐ人がいるさなかに、しょうこりもなく「これから円高に向かう」と書いて世に出しました。

そしたら今回は、出たとたん円高に向かいはじめました。
誤解のないように言っておくと、もちろんこの本は、「円高になったらとんでもない」という立場から、ブルブル震えて、警告して言っているのです。決して喜んだりしてはいけません。

このノートの以前の記事でも、前著でも書いている、「最悪のシナリオ」を、この本でも警告しておきました。
もしアメリカの景気後退が深刻になったならば、財政悪化を懸念する議会が大規模な景気対策には抵抗するので、アメリカ政府は輸出拡大で打開するしか道がない。そこで、「ドル高是正」を言い出す。そうすると1985年の「プラザ合意」の40年ぶりの再現です。日本はいっそうの金融引き締めを強いられて、円は高騰。1ドル100円を割りかねない。日本経済はデフレ不況に舞い戻ります。
この秋にも解散総選挙という声が聞こえますが、こんなシナリオどおりになったときに、立民さんが今の体制のままで政権とっていたらどうなるでしょうね。