進化や遺伝について面白いと思うことはなんですか?の私の回答
この回答が心配症な方を少しでも勇気づけられれば嬉しいです。
むかしむかし、杞の国に大層心配性な男がおった。その男は天地が崩れるのが心配で心配で、食事も喉が通らず夜も眠れず過ごしておった。その男を心配してある男がきて言った。
「天は空気で満たされているのだから天地は崩れようがないんだよ。」
男は答えていった。
「天が空気で満たされているのなら、月や星が落ちてくるんじゃないか。」
「月や星は積もった空気の中で光っているものだ。落ちてきたって怪我なんかしないから大丈夫だ。」(中略)
心配性な男はそれを聞いて安心し大いに喜び、説得した男も大いに喜んだとさ。めでたしめでたし。 杞憂/『列子』
進化や遺伝については面白いと思うことばかりなのですが笑、今回は心配性は一般的に悪いことだと言われがちだけど、そんなことないですよ!みんな違ってみんないいんだよ!
というお話をさせていただければ幸いです。
最初にお断りさせていただくことがあります。
本内容は、動物行動学、人類遺伝学、遺伝統計学、経営理論、神経科学、物理学、産業医学の内容を含みます。私がある程度精通しているのはこの中で神経科学のみで(笑)論文を正しく解釈できていないという可能性があります。ご了承ください。
かつてない長文になってしまいました。
ジェノタイプ、ゲノム、ハプロタイプ、染色体などの表現は理解の妨げになると考え、正しくないことを承知しながらも、なじみのある"遺伝子"という表現に統一しました。
目次
1. 神経質な性格は一般的に悪いものと考えられがちである。
2. 神経質である人は人類の生存に寄与した?
3. 日本人は、ヨーロッパ系人種に比べると神経質、心配性である。
4. 神経質な人は周囲の期待や要望を自らのもののように感じることができる。
5. 心配性な人はささいなことに気づく力が高く創造性が高い。
6. 心配性な人はささいなことに気づく。時にそれは大発見となる。
-冒頭の杞の国の人を侮るなかれ-
本文
1. 神経質な性格は一般的に悪いものと考えられがちである。
神経質な性格は、心配性であり、うつ病や不安障害、強迫性障害など様々な精神疾患のリスクに関連すると考えられています[1] 。確かに神経質な人は、いろんなことに悩んでしまい、ストレスを抱えることも多いのではないでしょうか。また、神経症性傾向の人は、自分自身を不幸だと思ってしまいやすいと言われています[2]。
また本人の問題のみならず周囲に焦点をあてても、「あの人は神経質だよね」と言った場合、褒め言葉として使うことは少ないのではないでしょうか?ささいなことを気にする人、冒頭の杞憂の話のように気にしなくてもいいことを気にする人、という意味合いが強いのではないかと思います。
私はながらく福島県で仕事をしていたのですが、福島の人は神経質な人のことを方言で、"しんけたがり"と呼びます。あまりいい意味で使われているところを拝見したことはありません笑。
同じく東北の宮城では、"すんけたがり"と呼びこちらもあまりいい意味で使われません。笑
(ひどい言われようや・・・)
ではなぜ、うつ病や精神疾患のリスクが高く、かつ一般的に悪いことだと考えられがちである、神経質な性格は時にまぎれもない武器となり、誇るべきことなのでしょうか?
2. 神経質である人は人類の生存に寄与した?
ある一つの神経症性傾向に関わる遺伝子が人類がアフリカに出る前あるいはその頃から出現し、それが徐々に人類の中で選択圧によって増加したという素晴らしい研究が本邦から2019年になされました[3] 。
文献3から引用。
この遺伝子は、扁桃体と呼ばれる人間や哺乳類における恐怖行動や不安行動に関連していると言われている部分の活動を制御していると動物実験からは考えられています[4] 。またこの遺伝子はなんらかの選択圧によって、人類がアフリカを出る頃からその頻度が増加している可能性が示されています(上図で、アフリカの方々とヨーロッパアジア系の人と頻度が明らかに違いますよね)。つまり、神経質であることが人類の生存に有利な影響をもたらした可能性を否定できないのです。*注1
上図のように、どうしてアフリカを出た人と出ていない人とでほんの少しだけ遺伝子が違うの?
約20万年前にアフリカで誕生したホモ・サピエンスはそれから何回か、「オラさ東京さいくだ!」と言ったかどうかは知りませんが笑、アフリカからの脱出を試みています。8万年前にアフリカを出たたった一つの部族のみが世界中に広がり我々の共通祖先となったわけですが[5] 、それ以前の脱出はすべて絶滅という結果に終わっています。その前に出たホモ・エルガステルから別れたネアンデルタール人も4万年前あたりで絶滅したわけですが、絶滅前に5-6万年前中東のあたりでホモ・サピエンスと交雑、数人のネアンデルタール人の遺伝子がアフリカにとどまった方以外の全人類の遺伝子の2%にその足跡を残すのみとなっています[6] *注2
アフリカ脱出を成し遂げた人数というのが、あまり多くなかったと考えられており凡そ男女で1000人程度と考えれています[7] 。この文章をご覧になっている、あなたも、私も、アラファト議長も、この1000人の子孫であるわけです。
我々は、この一つの部族の遺伝的傾向を受けていると想定されます。これを創始者効果といいます。
実際に創始者効果の影響力を示唆する事例をお示ししましょう。アイスランドという国はもともと無人島でしたが、870年ころから度々大規模な移住が行われたと考えられています。
ヴィンランド・サガ 幸村 誠 著
(上の漫画はアイスランドからフィンランドへの移住を描いた漫画で、私の中で名作と名高いです笑。)
アイスランドという国は、これまで何世代にわたって家系図が詳細に残存しており遺伝疾患の研究も進んでいる国なのですが(米国に買収されてしまいましたが、deCODEという会社が世界的に有名です)、アイスランドやフィンランドにはヨーロッパ周辺諸国でしばしばみられる嚢胞性線維症という遺伝性の病気が極めてまれであるのに対し、極めてまれなテイサックス病という遺伝性の病気が周辺諸国より高い頻度でみられることが知られています[8] 。
これは、移り住んだ少数の祖先の影響が今も子孫に残っているためと考えられます。
さて、このように我々は創始者の影響を多少なりとも受けていると考えられるわけですが、なぜ神経質、心配性であることがアフリカを出た後から自然選択によって増えてきた(つまり生存に有利だった)のでしょうか。なぜ、この集団だけリス・ウルム間期の厳しい環境を生き延びて世界中に広がることができたのでしょうか?
タイムマシンでもない限りわからないのですが、ここは川魚であるグッピーさんに登場してもらいましょう。笑
(グッピーの飼い方を解説 サイトより引用)
勇敢グッピー「オッス、オラ勇敢グッピー。強いやつと戦うとワクワクすっぞ。水の中には天敵がいるかもしれないけど、積極的に餌をとりにいくぞ。好きな有名人はイーロン・マスクだ。」
心配グッピー「わ、わ、私は心配グッピーです。天敵と戦うのは怖いので、ひたすら家にこもっています。チェスや将棋とかじっくり考えるゲームが好きで藤井聡太さんが好きです。」
「」内は私の妄想です。ソロモンの指輪は持っていないので。
さて、ここで質問です。天敵がいる環境下でも積極的に餌を探しに行く勇敢グッピーと、天敵を恐れる心配グッピーは、どちらが餌を多く得ることができたでしょうか?また生き残ることができたと思いますか?
正解は
勇敢グッピーは餌を多く獲得したが、同時にその多くは捕食者の餌にもなってしまいました[9] 。心配グッピーがより多く生き残ったのです。
グッピーという魚においても、捕食者がうろつく環境下では、ソーシャルディスタンスを守り、不要不急の外出を控える戦略は生き残るために極めて有効なようです。なんだか聞いたことのある話ですね。
逆に捕食者がいない環境では、勇敢グッピーは餌を多く得ることができてモテそうです。これもなんだか聞いたことのある話ですね。
人類はながらく狩猟採集民族として生き延びてきました。その際にあまり心配性ではない、楽観的な人は、注意を払わず傷を負い感染症にかかったりして(抗菌薬のない時代、傷は致死的なものでした)命を落としてしまったのではないでしょうか。また血気盛んで勇敢な人は争いによって、子孫を残す前にその命を落としがちだったのではないでしょうか。(神経症性傾向な人は争いを避ける傾向にあります)
実際に、銃・病原菌・鉄の著者であるジャレド・ダイアモンド氏の狩猟採集民族の現地調査によれば、今もなお多くの若者が領土や女性を巡る争いで命を落としているようです。
我々の先祖にも同じことは起こっていても不思議ではないと思います。
心配性な人は、驚異をいちはやく察知するために必要な前頭皮質の内側部がより活性化しやすいことが神経科学の研究によってわかっています [10] 。(だからこそ心配性なのだと思いますが)
心配性な人は炭鉱のカナリアのようにいち早く部族に危機を知らせ、その危機を救ってきたのではないでしょうか。
3. 日本人は、ヨーロッパ系人種に比べると神経質、心配性である。
さて、はるばる数万年の時をかけて日本にたどり着き、少なくとも3万8000年前にはご先祖様は日本に定住していたと考えられています。当初は1000人程度の小規模な人口で数世紀、縄文時代と後に名付けられる時代をお過ごしにあそばせなられ、弥生時代、古墳時代に大きな人口の流入があり、現代の日本人の祖先となったと考えられます。古墳時代以降は、縄文人、弥生人由来の遺伝子の希釈はそれほどみられず、大きく現代の日本人と遺伝子が変わっていないと考えられています[11] 。
文献11より引用。(左から縄文人、弥生人、古墳人、現代日本人の解析結果)
さて、心配性な傾向について、各国でどんな差があるのでしょうか?
米国にいるアジア系アメリカ人とヨーロッパ系アメリカ人の神経症性傾向等を比較した試験もありますが、アメリカに移住する人はそもそもリスクを取れるアジア人が多いでしょうから、選択バイアスが入っていると思われます。そのため、その国在住の人どうしで比較するのが良いと個人的に思うのですが、日英の学生8000人以上と、精神科に通院する患者さんを400人以上を対象に神経症性傾向含め性格を比較した研究があります[12] 。
結果は皆様予想通り、学生及び精神科通院中の患者さんいずれも、英国人より日本人のほうが高い神経質スコアを記録しました。
Brexitを行ったイギリス人よりも??(すごい失礼)と思わずにいらないですが、繰り返し確認されている結果なので受け入れたほうがよさそうです。笑
では、なぜ日本人はヨーロッパ系の人たちよりも神経質なのでしょうか?日本人の神経症性傾向や心配性な性格は比較的緊密な村社会や稲作など、いずれも文化的問題として語られることが多いと思いますが、それって本当なんでしょうか?
実は様々な研究で神経質な性格は遺伝に大きく影響されることがわかっており、多くの研究はだいたい40-80%が遺伝の影響と結論しています。つまり神経質かどうかは生まれた瞬間に相当程度決定しているということですね*注3。したがって、我々が神経質なのは古墳時代のご先祖様に多少なりとも影響していると言える、のかもしれません。
それでは、遺伝によって大きな影響を受ける神経症性傾向は、逆に文化にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
4. 神経質な人は周囲の期待や要望を自らのもののように感じることができる。
米国人と日本人を比較した研究では、日本人は米国人よりも周囲の期待にあわせるのが得意であるということが明らかになっています[13] 。
これは日本人のみならずアジア人にもみられる特徴であり、アジア人は比較的自らの意思を変えてでも集団の考えにあわせることができるということも明らかになっています[14] 。
"Asian often subordinate their own desires to the group's interests, accepting their place in its hierarchy." Susan Cain.
(アジア人は集団の関心よりも自らの欲求を下に置く。そして自らをヒエラルキーの下に置くことを受け入れているのである)
とスーザン・ケインさんがその著書 Quietの中で看破したのは興味深いことだなと思います。ただ彼女はあくまでアジア人の行動は文化的な影響が大きいと考察していますが、神経症性傾向の人は文化的な背景とは無関係に集団の要請を自らの欲求と同化させるのが得意だということが明らかになっています[15] 。つまり和を以て尊しとなす、という考えには多分に遺伝的な影響があるわけです。
したがって"同調圧力"という言葉は科学的に正しくないと思うのですよね。なぜなら、ほとんどの人は抑圧を感じているわけではなく、自ら望んであるいは遺伝子の要請によって同調しているわけです。したがって、"同調気質”という言葉がより適切だと思います。暗黙の了解による"圧力"ではなく、おフランスの哲学者、ミシェル・フーコーが言うような"促すもの"だと思うからです。(これは定義の問題とも言えますが)
そして、これを日本特有の現象ととらえることも正しくはないと私は思います。
閉じて緊密な集団になればなるほど、そこには暗黙の了解(Normといいます)が形成され一種の権力があることは何も日本だけに限ったものではありません。ボンディング型ソーシャル・キャピタルとしてビジネスの分野ではよく研究されており、ユダヤ人のダイヤモンド商人やイタリア人のシェフでの研究がよく知られています[16] 。
この研究によれば、イタリア人のシェフはお互いにレシピを公開し合う、文字通り互助の仕組みで成立しています。そんな中、Quora風に言うならBNBRを破る人が登場すればどうなるでしょうか?人のレシピを盗み、自分のレシピは公開しない、そんな人がいればコミュニティは成立しなくなりますよね。そうして、BNBRを破る人には因果応報的な考えを持っている人から、Sanction(罰)が下ります。罰を下すためには当然、相互監視が必要です。こうして、閉じたコミュニティには、必然的に暗黙の了解→相互監視→罰という仕組みができるわけです。私もQuoraが偽名登録を禁止している際、それとは知らず偽名で登録した際に(すいません・・)、4秒くらいでMomoko様から連絡を頂戴いたしました。どなたかが通報してくださったのだと思うのですが、その速さにAIに監視されてるんか!って思いました笑。Quoraも相互監視、そして罰という仕組みがよく機能しているのだと思います。
暗黙の了解→相互監視→罰という仕組みは映画ゴッドファーザーを見ていただければわかるように笑、日本特有のものではない、万国共通のギブアンドテイクな考えを持っている人によって維持されている仕組みと言えるわけですね[17] 。
その行動心理学的な機構に加え、我々日本人を含むアジア人は、遺伝的にその暗黙の了解をまるで自らの使命のように適応するのが得意と言えます。
そう考えると、日本人が災害時であってもきちんと列をなして並ぶこと、新型コロナウイルス感染症流行下においても自粛要請、感染者の増加という空気をいち早く察知して行動を減らせることは何故かということが、より深い次元で理解することができると思います。"暗黙の了解に対する無意識の同調"、これは日本人の誇るべき美徳であり武器だと私は思います。
さて、心配性であることの利点はこれだけではありません。
5. 心配性な人はささいなことに気づく力が高く創造性が高い。
神経質な傾向と創造性にはかなり関連があることが知られています[18] 。例えば広告会社において創造的に活躍する人は、そうでない人に比べてより神経質であり[19]、またこれは芸術家においても同じ結果が得られています[20] 。
私の個人的な数少ない産業医としての経験から申し上げても、高ストレス者として産業医の面談にいらっしゃる方は、概ね会社の問題点に気づく人が多いという印象を持っています。そういった問題に気づき上司に警鐘をならしても、組織が大きくなればなるほど改善されることは滅多にないのでしょう。それがまたストレスになってしまう。しかし前述したように、ストレスを抱えれば抱えるほど、ますます会社のよくないところに気づく、ある意味"創造的な"能力を発揮してしまう。
組織にとって、なくてはならない存在をこうして会社は失ってしまうのです。もちろん、心配性な人は基本的にリスクを厭うので[21] (このあたりは日本人が破壊的イノベーションを起こすことが苦手ということとつながってくると思います)、会社としてすべてを採用するわけにはいかないと思うのですが、きちんとこういった方を会社として守っていくべきですし、私も少しでもお力に慣れればと思い無償で悩みの相談にのらせていただいていたこともありました。
時に考えすぎてしまう(Thinking too much)と言われる心配性な人ですが、だからこそ人には気づけないことが気づけるわけですね。
6. 心配性な人はささいなことに気づく。時にそれは大発見となる。
-冒頭の杞の国の人を侮るなかれ-
(Issac Newton Wikipediaより)
学問においても神経質であることは重要です。神経質な科学者というと、まず思いつくのはSir Issac Newtonでしょう。あのアインシュタインも、自室にニュートンの写真を飾っていたほどの人でありますが、ニュートンは過去の失敗を何度も自分の頭の中で繰り返し自分を卑下する性格だったようで、1693年の夏、ついにメンタルに不調をきたしてしまいます [22] 。
しかしニュートンこそが、杞の人が月が落ちてくるんじゃないかと心配した約2000年後に、ついに"Moon is falling 月は落ち続けている"ということ、すなわち万有引力を証明するに至るわけです。冒頭の紀の人の前には、微分積分もガリレオ・ガリレイの考えもなかったわけですが、ニュートンと同じことをこの名もなき心配性の杞の人は疑問に思っていたことは驚嘆に値すると私は思うのです。彼は心配性でなければ、「どうして月が落ちてこないのか」とは考えなかったと思うのですよね。
COVID-19のワクチンの自国生産への投資の失敗、日経新聞をみれば毎日のようにイノベーションが起こせないのはなぜか、少子高齢化に伴う日本の転落、失われた20年、もはや先進国?と書かれる心配性な本邦ですが、日本人には日本人にあったイノベーションの起こし方があるのだと思うのですよね。
だいぶ長文になりましたが、まとめたいと思います。
神経質、心配性な人は人類にとって必要な存在であり、自然選択によって増えてきた可能性がある。
心配性な人は驚異をいちはやく察知するのが得意である。
心配性な人は創造力に富む。
冒頭にも記載しましたが、誤り等があればぜひご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。
引用文献以外に参考にした図書
スーザン・ケイン 著
私は邦訳については読んでおりませんが、こちらの本は外向性、内向性の違いに焦点をあてたもので、内向的な人への応援歌のような本です。途中にあるグッピーの話はこちらの図書にも引用されており参考にしました。内気な性格に悩んでいる方は読むと元気が出ると思います。
岡田 随象 著
基本的な遺伝統計学の基礎を学ぶことができます。ゼロから勉強してみたい方はぜひ。
田宮 元 著
ゲノム医学のための遺伝統計学 (クロスセクショナル統計シリーズ 3)
遺伝統計学をさらに学習したい方におすすめです。めちゃくちゃ難しいです。笑
*注1 もちろん神経症性傾向というのは遺伝のみならず、環境要因によっても決定されます。概ね、神経症性傾向における遺伝の寄与率は60%程度と考えられており、遺伝の影響が大きいと考えられています。これまで600程度の神経症性傾向に関わる遺伝子が同定されており(これでも10%程度しか説明できていません)、単一の遺伝子のみで性格への影響を語ることはもちろんできません。
*注2 この残された遺伝子というのはあまり良い影響も悪い影響もないと考えられていましたが、最近新型コロナウイルスの重症化に関わっているという研究が出ました。ネアンデルタール人はコロナウイルスによって絶滅した説を唱えたくなりますね。笑
*注3 遺伝によって影響を受けていると言われると両親から受け継いだものですべて決まっているのだと思ってしまいがちですが、そうではありません。とある精神科疾患のAという病気を例にとれば、一卵性双生児である場合、片方がAという病気だと48%がそのAという病気になると言われています。しかしながら、Aという病気に親がかかっていたとしても子供がAという病気になる確率は13%とずっと低くなります。遺伝の影響というのは一卵性双生児の研究を下に得られた数値ですので、両親からすべて受け継いでいるという意味ではありません。これは生殖細胞(精子や卵子)生成の際に、染色体の組換えが行われると共に、さらに受精の際、両親どちらの染色体を選択するかで7兆以上通りの組み合わせがあります。親子は部品は同じものを使っていても、そもそも設計図から別物です。
脚注
[1] https://scholar.google.com/scholar_lookup?hl=en&volume=31&publication_year=2001&pages=383-400&journal=Pers.+Indiv.+Differ.&author=Claridge+G.&author=Davis+C.&title=What%27s+the+use+of+neuroticism%3F
[2] http://Genetics, personality and wellbeing. A twin study of traits, facets and life satisfaction - Scientific Reports (https://www.nature.com/articles/s41598-018-29881-x
[3] Positive and balancing selection on SLC18A1 gene associated with psychiatric disorders and human‐unique personality traits
[4] http://Humanized substitutions of Vmat1 in mice induce changes in amygdala-dependent behaviors associated with the evolution of anxiety in humans (https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.05.18.444749v1.full)
[5] http://A geographically explicit genetic model of worldwide human-settlement history - PubMed (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16826514/)
[6] http://Initial Upper Palaeolithic humans in Europe had recent Neanderthal ancestry - Nature (https://www.nature.com/articles/s41586-021-03335-3
[7] The society of our “out of Africa” ancestors (I): The migrant warriors that colonized the world
[8] Parental influence on human germline de novo mutations in 1,548 trios from Iceland - PubMed
[9] https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/08927014.2003.9522689 (https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/08927014.2003.9522689
[10] Thinking too much: self-generated thought as the engine of neuroticism
[11] Ancient genomics reveals tripartite origins of Japanese populations
[12] Differences in Personality Between Japanese and English
[13] Cultural Practices Emphasize Influence in the United States and Adjustment in Japan - Beth Morling, Shinobu Kitayama, Yuri Miyamoto, 2002
[14] https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2F0033-2909.119.1.111
[15] Behavioral Adjustment Moderates the Link between Neuroticism and Biological Health Risk: A U.S.-Japan Comparison Study
[16] Sanctioning in the Wild: Rational Calculus and Retributive Instincts in Gourmet Cuisine
[17] Sanctioning in the Wild: Rational Calculus and Retributive Instincts in Gourmet Cuisine
[18] The bright side of being blue: Depression as an adaptation for analyzing complex problems
[19] Creativity in conflict: the personality of the commercial creative - PubMed
[20] Personality Characteristics of Successful Artists - Karl Otto Götz, Karin Götz, 1979
[21] Serotonergic genotypes, neuroticism, and financial choices - PubMed
[22] https://scholar.google.com/scholar_lookup?hl=en&publication_year=1981&author=Westfall+R.S.&title=Never+at+Rest%3A+A+Biography+of+Isaac+Newton
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