昨今の半導体不足とサプライチェーンの重要性

昨今の、世界的な半導体不足による多岐にわたる製品供給の混乱を語りながら、供給不足の原因となっているサプライチェーンの問題について述べたいと思います。

【半導体不足による製品供給の混乱】
 私は、勤務先では、多岐にわたる製品を扱っており、そのうちの一つが半導体製造装置です。私は、その半導体製造装置の市場リサーチ、マーケティング、商品企画を担当しており、現状の半導体不足のまさに当事者であり、恩恵や影響を多分に受けております。
2021の世界の半導体市場は5520億米ドル(WSTS調べ)に達しており、巨大産業と言われた自動車と同規模になりました。半導体業界が凄いのは、その投資規模であり、今年熊本に工場を誘致した世界最大のファウンドリーである台湾TSMC社は、2021年は3兆円、2022年は5兆円の投資を予定しています。日本の自動車メーカー合わせて2.4兆にすぎません。その結果、半導体製造装置市場も1030億米ドル(SEMI調べ)と過去最高となり、関連企業の業績も軒並み絶好調です。
一方で、半導体不足、実際は半導体以外の様々な部品の不足は深刻で、膨大な受注はあっても、部品が足りず、製造できないというのは、今、どの企業においても陥っている状況とも言えます。半導体が不足するのは、極端に専業・寡占化され水平分業化した半導体産業に対して、5GやAI、IoTといったニーズの急激な高まりと、コロナウィルスや米中デカップリングにみられるサプライチェーンの分断が同時に襲ってきたためです。

【サプライチェーンの問題】
最初に、半導体不足の影響を受けたとされるのが、自動車産業です。自動車業界は、中小企業診断士の試験でもよく出てくる在庫を極力持たないJIT(ジャストインタイム)の弊害を受けたと言えます。コロナで減産するため、車載半導体の注文をキャンセル、持ち直したところで再度、注文しようとしたところ、既に車載半導体の生産枠は他の製品に回されてしまった。半導体の受注リードタイムは4か月程度な上、一旦キャンセルされた生産枠も早々戻せるものでもありません。東日本大震災などでの経験からそれでも在庫を持っていたトヨタなどは、多少は被害を抑えたとは言われていますが、やはりJITの弊害を受けています。財務の観点では、最適とされるJITも、リスク管理の観点では必ずしも最適とは言えないことがわかります。特に、半導体などリードタイムが長い、代替の効かない部品は、別の施策を講じる必要があるということです。
 大企業であれば、より高い価格で、大量に発注することで在庫を確保するといった、力技が可能ですが、中小企業ではそうはいきません。BCPを検討し調達困難性を評価して在庫を確保する、調達先を複数確保しておく、生産する製品の部品や材料の汎用性や流用性を高めておく、中小企業にとっては簡単なことではありません。しかし、東日本大震災、新型コロナウィルス、非常に短期間で大きな災害が起きていることから、事業を継続していくことを考えると、施策として講じる必要がありますし、中小企業診断士もこのようなリスク管理の観点の助言もしていく必要があると感じています。

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