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バーの片隅で

聞こえる?

私、ここに居るの
そうよ、いつもの所

忙しい?
来れそうかな?

そう
じゃ、また今度


いつも来てくれたのに
大きな会社だから忙しいだろうなって
そう思ってた

次に誘うと来てくれた
気さくな笑い話が得意で
酔うと話が弾んだ


すごく忙しいんだろうなって
会えない間隔が広がってきて
淋しいけれどお互いかなって
そう思ってた

もう1年会えないのは
昇進して忙しくなったからって
そう思ってた


今夜君の事誘うから空を見てた


そんな歌が似合う夜
雨が降るなんて思いもしなかった
細い路地で雨宿りしてた

目の前

君と綺麗なひとが腕を組んで一つの傘
はしゃぎながら歩いて行った


気がつけば裏路地
ビルとビルの狭い隙間

私はいつからここに居るんだろう

服は破れて
ヒール靴が片方脱げて何処かへいってる
体の節々が擦れた様なぶつけた様な
そんなに痛い


暑くてジリジリする日
穏やかな日
風が吹雪いてずぶ濡れの日
暖かい日


もう記憶も…あったわ

君の笑い声
近くで聞こえる
優しそうなひとの声と絡み合って

手が届きそうなのに



手がない私は叫んでも無駄の様だ


もう恨みごとしか浮かばないわ
これからずっと
君を恨むわ

このビルから落ちた私
心だけはここにあるみたいだから
君を恨むわ
これからずっと

ずっと




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