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ちばあきおという天才が残した 野球マンガの金字塔 キャプテン プレイボール

ちばあきおさん、ご存知でしょうか。
20代、30代の方は、知らない方も多いでしょう。

「あしたのジョー」のちばてつやさんの弟さんです。
代表作は「キャプテン」「プレイボール」という
野球マンガです。

今だと、野球マンガと言えば『ダイヤのA』でしょう。
アニメも見ていましたし、僕も大好きです。

背番号「1」を背負ったエースの重責、
それを支えるキャッチャーの苦悩、
スラッガーという孤独な生き物、

野球の魅力がこれでもかとばかりに詰まっています。

絵もキレイで派手です。

ちばあきおさんの「キャプテン」「プレイボール」は
そうした今のマンガと比べると、
絵も地味です、
キャプテンは中学野球が舞台、プレイボールでは甲子園も出てきません。

突出した才能を持つ選手もいない、
魔球も出てこない、

描かれるのは、ただ努力することの素晴らしさ、そして人間賛歌です。


落ちこぼれでも戦える

キャプテンには4人のキャプテンが登場します。
「谷口」「丸井」「イガラシ」「近藤」です。

谷口編で描かれるのは、たとえ落ちこぼれでも環境を変えて
ちゃんと努力をすれば、人はついてくる…ということです。

元々は野球の名門校・青葉学院にいた谷口タカオ。
しかしそこでは、2軍の補欠・・・
楽しく野球をしたいと、荒川の下町にある墨谷二中に
転校するんですが、元青葉だということがバレてしまい
「谷口はデキるやつだ」と期待されます。

その期待に応えるために積み重ねるドロくさい努力。
その努力が認められ、なんと次のキャプテンに任命されます。
あわてて谷口は言います。
「ぼくにはキャプテンをやる資格なんてありません。
 僕は青葉の野球部では補欠だったんです。それも2軍の…」

前キャプテン
「そんなことぐらいお前が入部した時のプレイを見て
 一目でわかった。今やお前には実力があるじゃないか」

谷口
「ぼくは誤解から青葉のレギュラーとして、期待されました。
 いまはその期待を裏切らなようにすることで精いっぱいなんです」

前キャプテン
「お前はその期待に立派にこたえたじゃないか。
 影の努力でな!
 そして今や青葉のレギュラーにも負けないほどの実力をつけた。
 どうだ。今度はキャプテンとしてみんなの期待にこたえてくれんか」


見ている人は見ている。
環境を変えて、努力をすれば、おちこぼれだって戦える。
そんな勇気が湧いてくる、谷口キャプテン編です。


屈辱をバネにする

これが描かれるのは、2代目のキャプテン・丸井編です。

大きな期待を背負って出場した、春のセンバツ大会で
墨谷二中は、よもやの1回戦負け。

どん底から這い上がるために、もがく丸井。

なんと、試合に負けた直後、球場に観戦にきていた
全国各地の中学に練習試合を申し込みます。

手当たり次第に頼むもんだから、
東京から遠く離れた地方の中学校にも声をかけてしまい
そこの部員から笑われます。

「すみません」と頭をかきながら再び他の中学に声をかける丸井。
その姿を見て、さっき声をかけられた中学のキャプテンが
丸井を笑った部員にいいます。

「笑いごっちゃないぞ。普通は負けたらしばらくガックリくるもんだ。
 それを試合が終わったばかりだというのに、ああして練習試合を
 申し込むなんて、そうそうできることじゃない。
 俺たちも、ああなりたいもんだ」


結局1日3試合のトリプルヘッダー(ふつうはダブルヘッダーまでです)の
練習試合のスケジュールを組みます。
この試合に全勝するためには、並大抵の練習では足りません。

壮絶をきわめる夏合宿。
大勢いた部員が一人減り、2人減り…
地獄を乗り越え、タフになった墨谷ナインは練習試合に全勝します。

そして、全国大会出場をかけた青葉との死闘。
僕はこの試合が大好きです。

おっちょこちょいで猪突猛進、
抜けてることも多い丸井ですが、憎めない。
人間味に溢れた、素晴らしいキャプテンです。


野球の奥深さがここにある

3代目キャプテンは、
この作品の中では珍しい天才タイプの選手、イガラシです。

ただ天才であるが故に、
最初は自分勝手に振舞ってしまい、
チームの和を乱します。

しかし谷口、丸井と2年間共に戦う中で、彼は成長します。

特にそれが見られるのが「選手起用」です。
イガラシの1学年下には「近藤」という、体格と才能にあふれた
右の本格派投手がいます。

しかし、この近藤がとにかく扱いづらい。
気分を乗せてやれば、素晴らしいピッチングをみせるが、
ちょっとでもヘソを曲げると、とたんにピッチングもメロメロになる。

しかし、墨谷二中が勝つためには、絶対に欠かせない戦力なんです。
時にカツを入れ、時に気分よく投げさせるために持ち上げるイガラシ。
ちょっと中間管理職みたい(笑)

近藤をうまくコントロールしながら戦い、
キャプテンという作品で唯一、全国大会がきっちりと描かれています。

この試合が、まあどれも面白い。
野球の駆け引き、面白さ、奥深さ、素晴らしさが
ギッシリ詰まっています。

キャプテンを読んだことがある人も、
意外とイガラシ編はキッチリ読んでいません。
ここを読まずして、キャプテンを読んだとは言えない、
僕も大好きなイガラシキャプテン編です。


人を育てる大切さ

全国大会をキッチリ、描き切り、もうやることないだろう。
なんて僕も思ったんですが、
どうしてどうして、4代目キャプテン、近藤編では、人を育てる大切さが
描かれます。

「キャプテンというものの価値は、後にどんなチームを残したかで決まる」

これを近藤に入れ知恵したのは、元ノンプロ(実業団選手の昔の呼称です)
だった近藤のお父さんでした。

ラスト、なんとも言えず、さわやかな気持ちになります。


いま読んでも色あせない輝き

プレイボールはキャプテンの初代キャプテン・谷口くんの
高校生編です。

しかし、谷口くんが高校3年になり、中学で共に戦った
丸井、イガラシが加入してきたところで、物語は終わってしまいます。

その後、ちばあきおさんは、
自ら命を絶ってしまいます。

作品に魂を込め過ぎたのでしょう。
読んでみればわかりますが、キャプテンもプレイボールも
驚くほどスムーズに読むことができます。

一コマ一コマを、全て切り抜き、床に並べながら
コマ割りを決めたという逸話も残っています。

原稿を仕上げ、見本本が届いた後も、
その見本が、真っ赤になるまで赤ペンで直しを入れたそうです。

命を縮めるほどに、品質にこだわって、こだわって
こだわり抜いたんです。

だから、いま読んでも決して古くありません。
キラキラと輝いているんです。

それは、ちばさんの命の輝きに他なりません。

繰り返しますが、

絵は地味です、

魔球もでてきません、

それでも僕はこのマンガが大好きです。

ちばあきおが描く“世界”が大好きです。








ちばさんの漫画に魅せられた、
コージィ城倉さんが、プレイボールの続編を描いています。
『プレイボール2』です。これも素晴らしい。





















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