2024/07/017 半導体製造装置の株価が急落しました。 まずは以下の記事を見てみましょう。
米、対中半導体規制で最も厳格な措置検討と同盟国に警告 -関係者バイデン米政権は、半導体製造装置大手の東京エレクトロンやオランダのASMLホールディングなどの企業が先端半導体技術へのアクセスを中国に提供し続ける場合、利用可能な最も厳しい貿易制限措置の利用を検討していると同盟国に伝えた 。 最近の議論に詳しい複数の関係者によれば、米国は外国直接産品ルール(FDPR)という措置の活用を検討 している。このルールは、米国製技術を少しでも使用した外国製品に制限措置を導入することを可能 にする。 これは同盟国から極めて厳しい措置と見られているが、実際に講じられれば、半導体産業に不可欠な製造装置を生産する東京エレクトロンやASMLの中国事業を締め付ける ことになる。非公開の協議だとして匿名を条件に話した関係者によると、米国は日本とオランダの当局者に対し、両国が中国に対する措置を強化しない場合に可能性が高まる結果として、この案を示している 。17日の東京株式市場で東京エレクトロンの株価は7.5%下落し、日経平均の下げを主導。レーザーテックやSCREENホールディングスなど関連銘柄にも売りが広がった。 アムステルダム市場では、ASMLが予想を上回る4-6月(第2四半期)決算を発表したにもかかわらず、現地時間午後4時過ぎに11%安となり、売買が停止された。 バイデン政権は微妙な立場にある。米企業は対中輸出規制で不当に苦しめられていると感じており、変更を求めている。一方、同盟国からすれば、米大統領選を数カ月後に控えるタイミングで政策を見直す理由は乏しい。 その目的は、すでに主要装置の一部出荷を制限している同盟国を説得し、中国にある対象装置の点検や修理を行う企業の能力を限定すること だ。米国は特定の中国半導体企業に対する追加制裁も検討していると、ブルームバーグは先に報じていた。 米国、ファーウェイ関連の中国半導体企業への制裁を検討-関係者 ASMLの担当者は国家安全保障会議(NSC)と米商務省産業安全保障局が絡む協議についてコメントを控えた。東京エレクトロンの広報担当者は「地政学的問題」に関して同社はコメントする立場にない と述べた。 安全保障問題で米大統領に助言するNSCの報道官は一連の会合に関する描写について、「われわれがパートナーや同盟国と行っている協議を反映したものではない」と回答。商務省産業安全保障局の担当者はすぐにはコメントしなかった。 中国外務省の林剣報道官は北京で開いた17日の定例記者会見で、米国は「貿易と国家安全保障の概念を政治化した」と非難。「関連諸国はそれぞれの長期的な利益を保護するべく無理な要求に断固抵抗し、公正で開かれた国際貿易秩序を共同して守る」べきだと述べた。 貿易ルールが一段と厳しくなるとすれば、中国の半導体開発に対する統一戦線の試みが十分ではないことを示唆 している。米国は2022年10月、中国の軍事力強化につながり得る最先端技術の獲得を阻止する取り組みの一環として、中国への先端半導体と製造装置の販売に広範な制限を課し、その1年後には措置を強化した。 この規制は広範囲に影響を及ぼしている。華為技術(ファーウェイ)や中芯国際集成電路製造(SMIC)など中国企業にとっては、重要な供給品や装置の入手が難しくなった。 だが、こうした政策で米企業も多額の売り上げを失っている。米半導体業界は不当に大きな負担がかかっており、中国が既存の規制を回避する方法を見つけるのを防ぐには、同盟国の協力強化が必要だと主張 している。 事情に詳しい複数の関係者によると、アプライド・マテリアルズとラムリサーチ、KLAの米半導体製造装置大手3社は、米当局者との一連の会合で、こうした主張を展開。現在の貿易政策は裏目に出ており、米半導体企業に損害を与える一方、米政府が期待したほど中国の進展を食い止められていないと訴えている 。 しかし、こうした企業はバイデン政権がFDPRを活用することを望んでいない 。日本やオランダから反発を招き、協力しなくなることを恐れている。また、世界中の企業が新たな制限措置を避けるために、サプライチェーンから米製品を排除するインセンティブも働きかねない。 関係者の一部によれば、日本の政府当局者はすでにそのような取り組みを強行する考えはない と話している。経済産業省の担当者はコメントを控えた。アプライド・マテリアルズとラム、KLAの担当者もコメントしなかった。
ブルームバーグより 記事の概要ですが、中国に対する半導体規制が思うような効果を上げていなく、米半導体企業からも反対の声が出ている。 このため、東京エレクトロンとASMLの両企業に、対中国向け設備の保守点検を制限し、中国を押さえつけようという流れのようです。 まあ、自国有利に動くことはアメリカにとっては当然でしょうけど、オランダと日本に貧乏くじを引かせる動きはフェアではないですね。。
では、中国における保守点検事業が出来なくなるという前提(先端半導体向け製造装置は既に規制され、中国へは輸出していないため)で、営業利益への影響を検討してみましょう。
FY24 の実績
決算説明会資料より 売上高;18305 億円
フィールドソリューション 全地域売上高;4285 億円
中国売り上げ比率 ;44.4%
フィールドソリューション 中国地域売上高推計 4285*0.444=1903 億円
売上高減少比率 (18305-1903)/18305=0.896 ⇒約10%売り上げ低下の見込み⇒営業利益も10%減
よって約、10%の株価下落は考えられますね。 今後、10%以上株価下落するようなら、絶好の押し目だと思います。
以下引用先
フィールドソリューションについて
当社では、出荷した装置が市場で長期にわたり安定稼動することを目指 し、フィールドサービスにおけるナレッジマネジメントの推進や、フィールドエンジニアの継続的なスキルアップ、トータルサポートセンター (TSC)*によるグローバルサポート体制の強化など、フィールドソリューション事業のさらなる強化に努めています。 TEL HPより
2024/07/20 追加情報です。 本件に言及する動画を見付けましたので、紹介します。
まとめ ・バイデン政権は、2022/10先端半導体の規制で中国を封じ込めたと考えていたが、ファーウェイで7nmの半導体が製造されていることが判明 ・バイデン大統領の法律に抜け穴があることが(意図的?)原因 ・米議会より追加制裁要請(今回のニュース報道) ・トランプ氏再選の可能性が大きくなった ・トランプ氏再選の場合対中国制裁は厳しいものになる ⇒今後、中国、台湾⇒日本を含む西側諸国への工場移転が加速
いかがでしたでしょうか。 正直、中国にこのまま半導体製造装置を売り続けていいのかと疑問に思っていましたので、米議会の判断には賛成です。 株価は、悲惨なことになってしまいましたが、AIの本格的なブームの前に調整したので不幸中の幸いと考えましょう。今後に期待ですね。。
2024/07/28 追加情報です。
半導体製造装置販売」6カ月連続プラス、鮮明な回復基調に寄与した需要 日本半導体製造装置協会(SEAJ)がまとめた日本製半導体製造装置の6月の販売高 (速報値、4―6月の3カ月移動平均ベース、輸出含む)は、前年同月比31・8%増 の3439億9000万円で、6カ月連続のプラス だった。5月に続き、中国や日本国内向けの装置需要が好調だったことに加え、後工程装置の需要も寄与 した。半導体投資は2023年の低迷を抜け、回復基調が鮮明になっている。中国向けは成熟世代を中心に引き合いが強い状態が続く 。後工程では、メモリー向けの検査装置 などの需要が高かった。メモリー では、生成人工知能(AI)関連で用いられるDRAMを積層した広帯域メモリー(HBM)が好調 だ。また、半導体後工程請負業(OSAT)など半導体の組み立て向けにも装置販売が伸びた 。
日刊工業新聞より 株価は大きく調整していますが、業績は着実に伸びていますね。
以下引用先
2024/07/31 追加情報です。
米、中国半導体メーカーへの製造装置輸出阻止へ新規則=関係筋 [ニューヨーク 31日 ロイター] - 米政府は来月、一部外国諸国から中国半導体メーカーへの製造装置の輸出を阻止する権限を拡大する新規則を公表する計画だ。2人の関係筋が明らかにした。日本、オランダ、韓国など同盟国からの出荷は除外され、ASML( ASML.AS ), opens new tabや東京エレクトロン(8035.T), opens new tabは引き続き出荷が可能なため、新規則の影響は限定的 なものにとどまるとみられる。報道を受け、両社の株価は急上昇した。 関係者の1人によると、新規則は「外国直接製品(FDP)ルール」を拡大したもので、中国の先進半導体製造を目指す取り組みで中心的な役割を果たしている半ダースほどの中国工場は、多くの国から輸入ができなくなるという。 イスラエル、台湾、シンガポール、マレーシアなどは新規則の対象となる。 ロイターは、中国のどの半導体工場が影響を受けるのか特定できなかった。 輸出規制を管轄する米商務省の報道官はコメントを控えた。 米国は、スーパーコンピューティングや人工知能(AI)技術が中国軍に利益をもたらす可能性があると警戒。2022年と23年に、中国向けの半導体と半導体製造装置の輸出規制を導入した。新規則は、米国が中国の急成長する半導体産業に対して、同盟国を敵に回すことなく圧力をかけ続けようとしていることを示している。 FDPルールは、ある製品が米国の技術を使って作られている場合、米政府は外国で作られた製品も含めて、その製品の輸出を差し止める権限を持つと定める。 関係筋によれば、新規制では、輸出規制の対象になる要件を厳しくし、FDPルールの抜け穴をふさぐ。米国の技術を含む半導体が組み込まれているというだけで、輸出規制の対象となる可能性があるという。 関係筋は、新規則はまだ草案の段階であり、修正の可能性もあるが、来月何らかの形で公表することを目指しているとしている。
ロイターより どこかから圧力があったのかもしれませんね。 今後の情報に注意することとします。
以下引用先
2024/08/01 追加情報です。 一安心というわけではなさそうです。 今後、東京エレクトロンには自主的な規制を行う様、アメリカから圧力が掛けられる可能性があるとの指摘です。。
米国は中国を標的とした新たな輸出制限から、日本とオランダの半導体製造装置メーカーを除外する用意を進めている。事情に詳しい関係者が明らかにした。計画は流動的で変わる可能性もある という。 バイデン米政権は中国による先端半導体技術へのアクセスを阻止する目的で、「外国直接産品ルール(FDPR)」と呼ばれる新たな包括的貿易制限の実施を準備している。だが、東京エレクトロンやASMLホールディングなど日本とオランダの半導体関連メーカーはこの新ルール適用を免れる見込みだと、非公表の協議内容だとして匿名を要請した関係者は述べた 。 中国向け販売の継続が認められる可能性が好感され、東京エレクトロンとASMLの株価はそれぞれ急騰。31日の取引で東京エレクは7.4%高で引け、ASMLは一時11%余り上昇した。ASMインターナショナルやディスコなど欧州とアジアの他の半導体製造装置メーカーも買われている。 ただ、バイデン政権は中国の技術発展を抑制すべく追加措置を講じるよう圧力にさらされており、半導体製造装置各社は中国向けの販売に依然として制約を受ける恐れがあると、関係者は語った。各社は中国と取引する上で米国の政策目標に留意し、慎重にならなければならないだろうと付け加えた。 アシンメトリック・アドバイザーズのアミール・アンバーザデ氏は「日本とオランダ、韓国の半導体製造装置メーカーを米国が免除するとすれば、考え得る唯一の理由はこれらの国が輸出政策の厳格化に自主的に応じる可能性が高く、米国がFDPRに訴える必要がないということだろう 」と指摘。「米国が中国に対して制限したいと考えている半導体製造装置をこれらの国の企業は自由に輸出できるとの見方から株価は上昇しているが、市場は見誤っているかもしれない」との見解も示した。
ブルームバーグ・ニュースが今月報じたところによると、バイデン政権は日本とオランダに、両国の企業が既に中国内にある制限対象の機器にサービスや修正を行う能力を制限するため、FDPRを発動することも検討していると伝えていた。だが、半導体製造装置で米国を除き世界で最も重要な2カ国である日本とオランダは、自国企業への損害や中国との関係悪化に対する懸念から、米国の要求に抵抗した。 ASMLはコメントを控えた。オランダ外国貿易担当部局は直接のコメントを避けつつ、輸出管理についてさまざまなパートナーと緊密かつ内々に連絡を取り合っており、同国の政策は結局のところ安全保障に基づいていると説明 した。 東京エレクからは今のところコメントの要請に返答はなかった 。米国の政策当局者は、人工知能や量子コンピューティングなどの分野における中国の技術力を抑え込む手段として、半導体製造装置の輸出に注目している。アプライド・マテリアルズ、ラム・リサーチ、KLAなどの米国企業は、規制強化の影響を長年にわたり受けており、日本など他国の競合企業にも同様の制限を課すよう米政府に働き掛けていた。 米政府は国内企業には制限を直接課すことができる。一方、製品に一定比率の米国製技術を利用している外国企業に対しても、FDPRを発動すれば影響力を行使できる。ロイターの報道によると、日本とオランダ、韓国はFDPRの適用から免除されるが、台湾とイスラエル、シンガポール、マレーシアなどからの輸出は影響を受けるという。 輸出管理を管轄する米商務省の報道官はコメントを控えたと、ロイターは伝えた。
ブルームバーグより もうすぐ東京エレクトロンの1Q決算(08/08)が出ますので、その中でどのような表現で本件が言及されているか注目です。
以下引用先