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[2024/02/23] ウォノソボライフ(72):ウォノソボ出身の著名人たち(1)~レトノ・ピナスティ(モデレーター)~(神道有子)

~『よりどりインドネシア』第160号(2024年2月23日発行)所収~

2月14日、インドネシアにとって今後少なくとも5年間を決める大事な行事がありました。大統領および国会議員、地方議員を決める総選挙です。各地区の投票所にて全国一斉に行われました。この日は学校なども休みとなり、断食明け大祭レバランの日くらいしか閉まらない市場も軒並み空っぽの状況。仕事より投票が優先されるというと驚くでしょうか。国のトップを決める直接投票であり、未来がかかっているのだという重みを国民は肌で感じているようです。

私の住む村(世帯数約200)には、2つの投票所が設けられました。誰がどこの投票所へ行くかは事前に決められており、通知が来ています。朝7時から午後1時までの間に指定の場所へ行くと、地域住民から選ばれたKPPS (Kelompok Penyelenggara pemungutan suara: 集票実行委員会)が有権者を待っています。

あらかじめ登録されていた有権者のデータとの照合が済むと、一人一人名前を呼ばれ、投票用紙を渡されます。今回は、大統領選挙、国会議員、地方議会、州議員、そして県議員を選ぶ5種の用紙がありました。囲いがされたブースに入ってそれぞれ候補者を選びます。

インドネシア語で投票のことをチョブロス(coblos)、動詞形だとニョブロス(nyoblos)と言いますが、これは「突き刺す」という意味です。インドネシアの投票では、用紙にあらかじめ印刷されている候補者の欄を「突き刺して」穴を開け、選んだという意思を示すのです。

投票所の各ブースには釘が置いてあり、その釘で用紙に穴を開けていきます。字を書けない人でも、これなら難なく意志を示すことができるのです。

私はインドネシア国籍ではないので、公的な投票では参政権がありませんが、家族と所属するカトリック教会のリーダーを決める選挙などには参加したことがあります。投票箱、外から見えないように囲いがされたブース、候補者の顔写真と名前入りの投票用紙などが用意されていて、本格的でした。順番を待ってブースに入ると、小さな机に釘が用意されていて、おお、これが噂に聞くチョブロスか!とやけに感動してしまったのを覚えています。

全てのチョブロスが済んだら投票箱にそれぞれの用紙を入れ、終わりです。投票所を去る前に、もう投票をしたという印として指をインクに浸します。他人の代理などとして同じ人が2度投票をすることが出来ないようになっているのです。この指にインクは選挙の象徴となっています。インクのついた指を写真に撮り、SNSに上げて選挙に行ったことを示したり、またこの日だけ特別に指にインクのある人にディスカウントサービスを行う店などもあったりするようです。選挙は国を挙げての一大イベントであり、ときにイデオロギーを巡って対立が起こりながらも、多くの人が今後よりよい生活が訪れることを願って未来を見据える日となっています。

この選挙に先立ち、大統領選に立候補した候補者たちが生放送で討論を行う番組が放送されます。各大統領候補、副大統領候補たちがどのような論旨を展開させるのか、有権者たちが注目するこの討論会ですが、私は、今年は別の部分にも注目していました。討論会の司会進行を行うモデレーターに、ウォノソボ出身のジャーナリストが採用されていたためです。というわけで、今回と次回でこの討論会とモデレーターの紹介とともに、主にTV業界で活躍しているウォノソボ出身者たちを見ていきたいと思います。


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