公共スポーツの歴史について(まとめ)

「総合型地域スポーツクラブ」「体育協会」「スポーツ推進委員」「スポーツ少年団」。身近にあるスポーツ組織ではあるものの、それぞれがどういった役割を担っていて、どういう課題があるのか、いまいち理解できていませんでした。

そういった背景から、私自身の理解も含め、それぞれ「そもそも何なの?
」という視点で記事にまとめてきました(個別記事はこの記事の一番最後からリンクしています)。

今回はそれらの総括となります。日本のスポーツがどうやって起こり、現状どうなっているのか、歴史を紐解く形で記載しました。

あくまで私の目線や見解となりますが、日本の公共スポーツ理解の一助となれば幸いです。


現代日本スポーツの根源

2021年現在からさかのぼること110年。

1911(明治44)年に「大日本体育協会」(のちの体育協会→スポーツ協会)が設立されました。これによって、日本にスポーツにあたる概念が生まれはじめ、主に教育のなかで体育振興が図られることとなりました。創立目的は主に2つ。

①オリンピックに日本も参加する体制を整える
②国民の精神の充実度のために体育の振興を図る

この直後、1912年に開催されたストックホルムオリンピックに日本は初めて参加しました。つまり、日本スポーツの根源はオリンピックにあると言え、アマチュアリズム的思想もここが根源と言えそうです。

1946年には「国民体育大会」が大日本体育協会、文部科学省、実施都道府県との共催で開催されます。第二次世界大戦で敗戦した国民生活に活力を与え、日本のスポーツ界を再建するために企画されたものでした。

そして1948年、大日本体育協会は「日本体育協会」に名称が変更されます。

戦後オリンピックと体育指導員、スポーツ少年団

1964年に東京オリンピックが開催されましたが、もともとは1954年に立候補し、1960年夏季大会開催を狙っていました(この際はローマに敗れました)。オリンピック開催地に立候補をし始めた1950年代から、日本のスポーツ界は少しずつ新たな動きが出始めます。

まず、1957年に文部省からの職務命令として「体育指導委員制度」(現在のスポーツ推進委員制度)が発足されます。体育指導員は非常勤の公務員として地域でスポーツの指導にあたる制度で、それまでボランティアだったスポーツ指導に明確な立場を確立し、責任をもってスポーツ振興にあたってもらうという意図がありました。

一方1962年には、日本体育協会創立50周年記念事業として「スポーツ少年団」が創設されました。地域を基盤としたスポーツの場を提供することによって、青少年の健全育成を目指すものとなります。

政府、体育協会双方で、オリンピックを契機に日本のスポーツ環境を整えていこうという流れのなかで、1961年には「スポーツ振興法」が成立します。
この法律のなかでは、「心身ともに健康」「レクリエーション振興」などがうたわれ、徐々に今に通ずる「生涯スポーツ」が見えてくることになります。

生涯スポーツと「人々を繋ぐ」役割

1989(平成元)年に「日本オリンピック委員会」が体育協会から独立します(1980年のモスクワオリンピック日本選手団不参加問題が要因)。これによって体育協会は、創立当初の柱がなくなったこととなります。

一方、行政側は「生涯スポーツ社会の実現を目指して」1995年から総合型地域スポーツクラブの推進に取り組みはじめます。2000年には文部科学省が「スポーツ振興基本計画」を発表し、2010年までに全国の市区町村に最低1つは総合型地域スポーツクラブを創るという目標を掲げました。

そして、2011年には50年ぶりに「スポーツ振興法」が「スポーツ基本法」に改訂されます。これと同時に、1957年に発足された「体育指導員」は「スポーツ推進委員」へ名称が変更され、新たに「連絡調整」等の職務が加わりました。

この流れに体育協会も乗る形となり、2009年には総合型地域スポーツクラブ全国協議会を設立。2018年には「日本スポーツ協会」に改称し、現在に至ります。また、「スポーツ少年団将来像」にも「スポーツで人々をつなぎ、地域づくりに貢献する」という理念が加わっており、スポーツの振興が単なる指導だけではなく人々を繋ぐ役割があるということを明確化しました。

まとめ

オリンピック参加のために日本でスポーツ振興が盛んになり、東京オリンピック開催に向けて現在に繋がるスポーツ制度が整い始めました。歴史的背景をみると日本スポーツはオリンピックが根源であり、アマチュアリズム的思想もここからきているのはないかと考えられます。

そのため、体育(教育)的な考え方が長年強かった日本スポーツですが、平成の時代となり「生涯スポーツ」的な考え方が強くなっており、運動指導だけではなく人々を繋ぐ役割も重視されるようになりました。

推進組織としては行政軸とスポーツ協会軸の大きく2つがあり、連携しながらスポーツ振興を担っていますが、現場(市町村)レベルでは連携や推進がうまく機能していないことも多いようです(詳細は個別記事をご覧いただければと思います)。

新型コロナウイルスで1年延期となりましたが、今年は東京オリンピックが開催される予定です。歴史的にみると、オリンピック関連の前には制度が整いますが、その後は長く発展しない時期が続いているように思います。平成の時代から徐々に意義が変わってきた日本スポーツが、オリンピック後も良い流れを継続し、人々の充実した生活を繋ぐ役割になっていったらいいなと思います。

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