スポーツ少年団ってそもそも何なの?

2021年に音声配信コンテンツでお話した内容をまとめた記事となります。配信の際には、総合型地域スポーツクラブで活躍されている上杉さんにご協力いただきました。
▶note:https://note.com/kenta_manager


歴史

日本スポーツ少年団は、1962年に日本体育協会創立 50 周年の記念事業として創設されました。記念事業としてスポーツ少年団が採択された理由は以下2点です。

時代的背景
当時は産業の機械化・近代化が急激に進み、物質的には豊かな生活が送れるようになった反面、人々のこころやからだに大きな問題が起きてきました。
こうした中で、地域を基盤としたスポーツの場を提供することによって、青少年の健全育成を目指しました。

組織的背景
スポーツ少年団を統括する「体育協会」の設立目的のひとつに日本がオリンピックに出場することがあり、体育協会とオリンピックは強い結びつきがありました。そして、スポーツ少年団が設立された2年後の1964年には東京オリンピック競技大会が開催されることになっていました。
体育協会がオリンピックから受けた影響として次のようなものがあります。「人間形成にはスポーツによる教育が有効である」「スポーツ指導は無統制・無企画なものに陥りがちであり、思想や体験や教育的情熱の豊かな教育者が居なければならない」
これを体現する場がスポーツ少年団となります。

時代は流れ、2009年には「スポーツ少年団の将来像」が策定されました。ここには「スポーツで人々をつなぎ、地域づくりに貢献する」という理念が加わっています。

<2019年時点での登録状況>
・登録団数:約3万1,000団
・登録団員数:約65万人
・登録指導者数:約19万人

▼オリンピックと体育協会(スポーツ協会)の関係性についてはこちらをご参照ください。


理念、役割

現在のスポーツ少年団の理念は以下3点です。

・一人でも多くの青少年にスポーツの歓びを提供する
・スポーツを通して青少年のこころとからだを育てる
・スポーツで人々をつなぎ、地域づくりに貢献する

前述の通り、役割のメインは「スポーツを通して青少年のこころとからだを育てる」ことですが、そのためには地域社会との連動が不可欠であるため、3つ目の理念が追加されたとも言えます。

スポーツ少年団は、活動拠点を学校ではなく地域社会に置きます。そこでスポーツを通して、住民の居場所づくりや、地域と家庭の支えあいの関係をつくっています。つまり、スポーツ少年団が担っている役割の一つは、地域振興でもあります。


組織・指導者

<指導者>
2020年に「日本スポーツ少年団指導者・リーダー規程」が制定され、「指導者」は日本スポーツ協会(JSPO)公認指導者資格の保有が必須となりました(段階的な移行)。これまでのスポーツ少年団内のみで通用する資格ではなく、広く通用するJSPO公認資格を保有することで、指導の安全・安心性を担保する狙いがあります。

<組織>
スポーツ少年団は、単位スポーツ少年団、市区町村スポーツ少年団、都道府県スポーツ少年団、日本スポーツ少年団の4つの段階で構成・運営されています。

<登録>
単位スポーツ少年団は、年度ごとに団員・指導者・役員・スタッフを市区町村スポーツ少年団に登録する必要があります。その後、都道府県スポーツ少年団を通じて日本スポーツ少年団へ登録されます。また、条件のひとつに「スポーツ少年団の理念を学んだ指導者が2名以上登録されていること」があります。

育成母集団
育成母集団という名称は日本スポーツ少年団が独自に使用している名称で、単位団活動を支える「母体となる集団」という意味です。育成母集団は、子どもたちを財政面・労力面・精神面で支援するという従来の役割だけでなく、大人自身もスポーツや文化活動を楽しむことができる集団であることが理想とされています。
この育成母集団という考え方が、「スポーツ推進委員」や「総合型地域スポーツクラブ」にはないスポーツ少年団ならではの考え方ですね。


まとめ

1962年に体育協会50周年事業として「スポーツによる青少年の健全育成」を目的に創立されたのがスポーツ少年団であり、オリンピックの理念に強く影響されています。

また、「スポーツを通して青少年のこころとからだを育てる」ためには地域社会との連動が不可欠であり、1995年には理念に「人々を繋ぎ、地域づくりに貢献する」が追加されました。そのために「育成母集団」という考え方が生まれています。

つまり、「青少年の育成」と「スポーツ」を軸に地域社会を形成していく、スポーツ協会主体の事業がスポーツ少年団であると言えます。

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